音楽は“聴く”から“感じる”時代へーー落合陽一らによる『耳で聴かない音楽会』を機に考察

音楽は“聴く”から“感じる”時代へ

 

世界初? 『耳で聴かない音楽会』

 4月22日、日本フィルハーモニー交響楽団主催のオーケストラ演奏会が開催される。その名も『耳で聴かない音楽会』。かなり虚を突かれるネーミングだが、これは聴覚障害の有無に関わらず音楽を楽しむことを目的に企画された音楽会であり、名前の通り耳で聴く以外の方法で音を楽しむ会である。

 音楽やリズムを楽しみたいという欲求は、誰にでも平等にあるはず。このイベントはそんな願望をテクノロジーを利用することで解決しようという試みだ。

聴こえなくても感じ取れる、着る音楽

 『耳で聴かない音楽会』を実現するのは、メディアアーティストとして活躍する落合陽一氏と博報堂の宇佐美雅俊氏。彼らは“耳で聴く”音楽体験自体のアップデートを目的とし、個人でイヤホンをつけて音楽を楽しむ文化と大勢で音楽を楽しむ、いわゆるフェス文化の中間という位置付けで「着る音楽」を開発した。

 そうして作られた「LIVE JACKET」は、ジャケット内部に小型のスピーカーを20台設置しており、身体全体で音楽を体感することができる。しかも一つ一つのスピーカーに各楽器ごとの音源が割り振られているので、それぞれのパートを振動とともに味わうことができる仕様になっている。今回、『耳で聴かない音楽会』ではこのLIVE JACKETをオーケストラ用に生音をリアルタイムで聴けるようチューニングした「ORCHESTRA JACKET」を使用。これによって聴覚に障害があっても身体中に伝わる振動を通して、音を楽しむことができるようになった。

 さらに、同イベントでは”「SOUND HUG」と呼ばれるバルーン型のデバイスを用意。これもORCHESTRA JACKETと同じようにスピーカーが仕込まれたアイテムで、バルーンをハグすることでリズムや音の速さを感じることができるのはもちろん、音に同期して光る機能を備えているので、曲の盛り上がりや静けさなど、音楽が持つ“表情”を視覚的に捉えることができる。テクノロジーがギャップを埋めるだけではなく、音楽体験にプラスαの価値も与えてくれている一つの例と言えるだろう。

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