eスポーツのパブリックビューイングに行こう! 『PUBG』のイベントで感じた熱量とコミュニティの姿
今回は、来場した方々に本大会やPVの感想、こういった『PUBG』のコミュニティイベントなどに関してコメントをいただいた。さまざまな立場から応援する人たちの言葉を、ぜひ聞いてほしい(※対象者は敬称略)。
CiNVe
元PUBGプロプレイヤー。SunSister Suicider's、Rascal Jesterに所属し、PUBG Nations CUP 2019など国際大会にも数多く出場。現在はPUBGの大会解説やストリーマーとして活動、選手視点の鋭い解説や関西出身ならではのユーモアで人気を博している。
──PVなどコミュニティイベントに関して
CiNVe:コロナ禍でオフラインイベントが激減しましたが、こうやってPVやオフライン大会ができるようになり良かったと思います。海外ではPVこそありますが、ファンミーティング的なものはあまり見られません。距離的な問題や、そもそもそういった文化が少ないのが理由に挙げられます。伝え聞いた話ですが、国によってはプロ選手はアイドル的な存在であり、気軽に会える対象ではないんです。それに比べて日本は選手とファンの交流もあり距離感が近く、イベントがあれば気軽に会えるという珍しい環境だと言えます。
──観戦勢など視聴者について
CiNVe:かつてのPJS(PUBG JAPAN SERIES)の時代からだと思いますが、おそらく視聴者の8割くらいは、ほとんど『PUBG』をプレイしていない人ではないでしょうか。どのゲームでも大会視聴者は「少しプレイしたが自分には合わない、でも観戦は好きだ」というカジュアルレベルの人がほとんどだと思います。『PUBG』はそのなかでもルールや勝敗が分かりやすく、何が起こっているか見て理解しやすいので、観戦に向いたゲームです。
──本大会に関して
CiNVe:MOGの存在は大きいでしょう。かつて世界大会に出場していた選手たちが今の現役の選手たちと戦うというのは、エンターテインメントとして素晴らしいと思います。彼らが勝とうが負けようが試合は面白くなり、昔見ていた人が「出るんだったら見てみようか」という動機になるはずです。
ここ1年くらいはUSGが1強だったので、本大会では周りのチームが「意外と喰らいついているな」と思っています。1強の状態が続くと選手と視聴者、両者にとって面白いとは言えない状態になります。選手からすれば、1位が飛び抜けてしまうと、2位狙いに切り替えざるを得ません。それはファンから見ても必ずしも面白いとは言えず、今の状態は結構いい感じかなと思います。
もちろん選手たちは優勝を目指していますし、突出した結果を残すことが悪いわけではありません。そうさせない切磋琢磨が必要であり、それが視聴者を熱くさせるということです。
──『PUBG』の魅力とは
CiNVe:『PUBG』にしかないハラハラ、ドキドキ感があることです。マッチの最終盤で1チームvs1チームになったとき、自分が推しているチームに頑張ってほしいという気持ち、その瞬間の熱量だけで言えば『PUBG』が一番だと思います。『PUBG』は本当に何があるか分からず、格下が格上に勝つことも起こりえるゲームです。観る人には、そういった感情を大事にしてほしいと思います。
ノンナ
学生のころにゲーム配信者がプレイしていたことをきっかけに『PUBG』を知り、そこからプロシーンにたどり着くと、PJS Season5から本格的に観戦を始めた。2021年の夏頃から、noteにてPUBGの記事を不定期で執筆中の、PSJ_Focus共同編集者。国内外を問わず多くの試合を観戦し、情報を集めて記事を公開している。
──本大会とPVの感想
ノンナ:今大会は近年でも1、2を争う盛り上がりになったと思います。最終戦まで複数のチームに優勝のチャンスがあり、一挙一動から目が離せない展開にハラハラドキドキしました。PV会場は、そんな一挙一動を同じ観戦勢と共有出来る貴重な場だったので、1人で見るより何倍も楽しかったです。
また、協賛者様のコーナーや抽選会などの私たちを飽きさせない工夫が、よりイベント感を演出しており時間があっという間に過ぎていきました。
──『PUBG』のコミュニティについて
ノンナ:いまの日本のPUBGの良さは”お互いの距離感の近さ”じゃないでしょうか。ファンと選手・チーム、ファンと運営、そしてファン同士。いいことばかりというわけではありませんが、同じ熱量を感じることができたり、気軽にコミュニティに参加できたりするような”近さ”が、今のPUBG Esportsを形成していると私は思います。
CiNVeとノンナのコメントで奇しくも共通していたのが、「距離感の近さ」。これは日本のeスポーツコミュニティの傾向であり、特に『PUBG』のコミュニティではその傾向が強いということだろう。それに競技観戦の分かりやすさも加わって、これまでのPUBG Esportsの盛り上がりがあったにちがいない。さらに幅を広げて考えれば、会いに行ける選手やアイドル、サイン会や握手会、ファンミーティングといったイベントは日本という国の文化や国民性がなせる業とも言えるだろう。
西添 和寿
事業としてルネサンス高校eスポーツコースの運営とプロゲーミングチーム「CYCLOPS athlete gaming(CAG)」の運営に携わっている。以前から『PUBG』が好きでPC版をプレイしつつ大会も視聴している。最近はPJCにCAGも出場しているため、視聴対象は競技シーンがメイン。
──本大会とPVの感想
西添:本大会は選手の移籍状況を新たに知りつつ、最後の最後まで接戦でどのチームが優勝するかわからない状態で楽しめました。PV開催をTwitterで知り、これは見に行くしかないと思い申し込みました。大勢の方と一緒に試合を応援し、歓喜するのはeスポーツの醍醐味のひとつなので、参加して良かったと思っています。
PV会場のガラポン抽選で「金」が出て、狙っていた小さいプレベアのぬいぐるみが当たってるといいなと思っていたら、大きいプレベア隊長と分かりかなり驚きました。どこに置けばいいかと悩ましいですが、届いてから考えようと思っています。
会場内にはスポンサーブース・くじ引き・じゃんけん大会など、PVならではのイベントもありました。参加を悩んでる人は、ぜひ一度は参加して、eスポーツの楽しみ方をひろげてほしいです。
──『PUBG』のコミュニティについて
西添:プレイヤーの増加、プレイのモチベーション向上、そしてゲーム仲間を作って一緒に盛り上がるなどの面から、ゲームにとって一番必要なのはコミュニティだと感じています。
イベントや『PUBG』パートナーの存在、ストリーマーの配信などは、最近は少なく感じます。イベントのしやすさや配信者の増加などでコミュニティは活性化すると思うので、パブリッシャーの支援などがあれば、『PUBG』ユーザーは嬉しいはずです。コミュニティの延長線上に競技シーンも存在するので、コミュニティと競技が密接することで、いま以上の活性化につながると思います。
また、チームの解散や選手の離脱も見受けられますので、選手がPUBGに専念できるような支援があることも望ましいです。コミュニティによりプレイヤー人口が増え、そして、競技シーンをめざす人も増える、というような好循環ができれば、『PUBG』はより盛り上がるのではないでしょうか。
西倉 新久
漫画家。最新作「ピリピリとビリビリ」(文春コミック)単行本発売中。2017年のアーリーアクセスのころから『PUBG』に興味がわき、2018年のPJS Season1から競技シーンを追い続ける。同人誌でプロゲーマー・バトルロワイヤル漫画「オリオン明滅す」を発行し、PV会場でも頒布していた。
──本大会とPVの感想
西倉:国内PUBGシーンを支えてきた古豪プロチームとアマチュアから勝ち上がってきた新進気鋭のチームがバランス良く配置され、試合自体も非常に拮抗し、最後まで勝者がわからない、まれに見る大接戦でした。15試合の中にPUBGの醍醐味とも言える展開が数多く詰まっており、はじめてバトロワの大会を観るという方にも、最近PUBGの大会を観ていないなという方にも、自信をもってすすめられる大会だと断言します。
PVイベントは会場内も広くて快適に視聴でき、全体的にアットホームな雰囲気も感じられました。よりも「大人数で一緒に試合を観戦する」という経験自体が初めてでしたので、とても心に残るイベントになりました。プレゼント抽選等で盛り上げてくださった運営様にも感謝しています。RED° TOKYO TOWERという施設自体にも興味が湧いたので、後日また遊びに行ってみたいと思いました。
──『PUBG』のコミュニティについて
西倉:今回のPVに参加して印象的だったのは、『PUBG』自体が緊張感にあふれるゲーム性なのとは対照的に、ファンコミュニティはゆるくて穏やかな雰囲気だということでした。少し語弊があるかもしれませんが、いまこのようなイベントに足を運ぶような人は、本当に心から『PUBG』が好きなんだと思います。
そしてみんな、きっとどこかで「もっと国内の『PUBG』シーンが盛り上がってほしい」と思っているはずです。実際にカスタム大会などを開いてアクションを起こしている人もいれば、私のようにこっそりと見守り続けている人も多いと思います。形はどうあれ、PUBGの面白さを共有できる人と出会える機会が少しずつでも増えてくれれば、いちファンとしては嬉しいです。私も表現者の端くれとして、「ゲームを観ることで得られる感動」を多くの人に伝えることができればと思っております。
西添と西倉も、それぞれの立場からPUBGの競技シーンやコミュニティの盛り上がりを願いつつ、PVの楽しさを語ってくれた。全員に共通していたのは、大会への評価が高かったことだ。『PUBG』やeスポーツを支えているのは、運営やコミュニティに間違いない。しかし前述したように、それも選手たちの活躍や観客を魅了するプレイがあってこそ。その点でも、やはり本大会やPVは素晴らしいものだったと言えよう。