M-1チャンピオン・ウエストランドは”悪口漫才”ではなく”自爆漫才” 根っからの「悪」ではない彼らの魅力

 そして、自ら火だるまになっている井口の横でニヤニヤする男・河本太。彼の恐ろしさはある意味井口の比ではない。河本を見ていると、この世で一番恐ろしいのは「無」だということを痛感する。一部ではM-1グランプリ後の河本に対する井口の態度を見て「当たりが強すぎて不快」「相方を見下している」という声があるらしいが、その言葉は後に間違いだったこと、河本太という人間がいかにお笑い芸人として「異質」な存在であるかは、これから遅かれ早かれ気づくことになるだろう。

「M-1決勝進出後に仕事が減った!?」奇跡の芸人・ウエストランド河本太の謎に包まれたキャラクターに吉田豪が迫る生配信番組

 2022年10月に配信されたインタビュアー・吉田豪の番組に河本が一人で出演しているのだが、これをぜひ観てもらいたい。河本太という人間の奇妙さと魅力がこれでもかというほど詰まっている。ベロベロに酔っ払って、タイタンの社長であり、爆笑問題太田光の妻でもある太田光代を抱こうとする、ボロボロのホテルに泊まった際に除霊をするためにデリヘルを呼ぶ、にも関わらず愛妻家。そんな自分を指して「自分の思い描く『芸人像』をやってる自分は真面目だ」と強弁するのが河本太なのだ。そのくせ、収録ではいっさい喋らずに帰りに楽屋の弁当だけを持って帰る、先輩に怒られ「坊主にしろ」と言われた翌日にオシャレなパーマをかける。どうだろうか。これでもまだ井口の河本に対する態度は間違いだと言うのだろうか。

 コンビの関係性で言えば、ウエストランドは「さらば青春の光」に近いのかもしれない。東ブクロがどんなスキャンダルを起こそうが、どれだけ森田だけの稼働が多かろうが、森田は絶対に東ブクロを見捨てない。それは東ブクロの前時代的な芸人イズムにどこか憧れのようなものを抱いている。実際、Abemaで放送中の『有田哲平の引退TV』で「こっちに一切気を遣わせない。俺らが何してても笑っていいんだという気分にさせてくれるのが東ブクロ。ずっとサンドバッグ」と森田は発言している。

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 井口の河本に対する気持ちも同じなのかもしれない。M-1グランプリでは井口が全方向に悪口を言ったことで優勝したが、井口の悪口が最もキレを増す相手が紛れもない「河本太」なのだ。番組中に一切喋らなくても、ネタ番組で台本を飛ばしてもふてぶてしく、堂々としたあの立ち姿。河本の圧倒的「無」こそが井口の「有」を生み出しているのだ。

と、思っているのだが、絶対にそんなことはないし、井口にこれを読まれたら確実に「皆目見当違い」と言われるのかもしれない。

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