ソニーがVR・VTuber業界の"ゲームチェンジャー"に? 小型モバイルモーションキャプチャー『mocopi』に感じた可能性

『mocopi』発表会レポート

 11月29日に発表されたソニーのモバイルモーションキャプチャー『mocopi』。小型かつ軽量なセンサーとスマートフォンを組み合わせて全身の動きをモーションデータとして保存、あるいは対応アプリと連携してリアルタイムで3Dアバターに反映することが可能なデバイスだ。大掛かりな設備を必要としない簡易さが強みで、メタバースやVTuberといった3Dモデルを利用するシーンでの活躍が期待される。

 発売は2023年1月下旬を予定しており、価格は49,500円(税込)。ソニーのインターネット直販サイト「ソニーストア」で購入・予約可能になるとのことだ。予約販売の受付は12月中旬を予定。

 ここでは、発売に先駆けて行われた発表会の様子をレポートする。幸運にも先行して体験する機会にも恵まれたので、その感想もお伝えしていこう。

業界全体の後押しをすべく動き出したソニー 独占するのではなく、普及に注力

 発表会の冒頭、登壇したモーション事業推進室室長・相見猛氏より開発に至った背景が語られた。今やメインストリームのカルチャーとなりつつあるVTuberや、様々な企業が注視するメタバース領域。ソニー自らも「VEE」などバーチャルタレントの育成、マネジメントに力を入れており、そのサポートをしていきたいというのが動機だという。

 また3Dアバターを利用して身体の動きを表現する際、従来は大掛かりなトラッキング用のスーツを用意したり、専用のスタジオを利用したりする必要があり、ハードルの高さが多くのユーザーやクリエイターにとってネックとなっていた。

 『mocopi』によってモーショントラッキングを気軽に行えるようにすることで、コンテンツの体験価値を高めたり、クリエイターの制作ハードルを下げたり、あるいは「これならやってみたい」という層の需要を創造するのが狙いだ。

 また本商品は既に『VRChat』『Unity』『MotionBuilder』『Virtual Motion Capture』の4つのアプリ・サービスで動作確認済みとのことで、今後は様々なアプリ、サービスを『mocopi』と連携できるようSDK(ソフトウェア開発キット)も提供するという。あくまでも広く普及させ、業界全体の後押しをしていくという姿勢が強く現れているのが印象的だ。

 特に『Virtual Motion Capture』に関してはリサーチを重ねてユーザーの多さや、VTuber界隈におけるシェアを鑑みて動作確認を行ったソフトとのこと。広報担当者も「ソニーも仲間に入れてもらう、という気持ちで事業を進めている」と語っており、同社のVTuber・メタバース領域へのリスペクトをひしひしと感じる。

実際に体験してみると思った以上に手軽で高精度 軽すぎて着けているのを忘れてしまうほど

 本製品を利用するにあたって必要な準備は6つのセンサーを専用のバンドで頭・腰・両手首・両足首の6箇所に装備するだけ。しかも、各センサーの重量はわずか8グラムほどと軽く、大きさも500円玉程度のサイズと小型なので動きを阻害する心配はない。

 アクターによるデモも披露されたが、思った以上にしっかりと動きをトラッキングしており、センサーが6つとは思えない精度だった。ちなみに加速度センサーと角速度センサーを使用しているため、ゆっくりとした動きよりも素早い動きが得意とのことだ。

 注意点があるとすれば、キャリブレーション頻度と一部の動作には制限があることだろうか。トラッキングの基準点を再設定するキャリブレーションは、簡易キャリブレーションとフルキャリブレーションの2種類があり、担当者によれば「15分に1度は簡易キャリブレーション、30分に1度はフルキャリブレーションを推奨」とのこと。もちろん、キャリブレーションが必要かどうかは使用中にどういった動きをしたかにもよるので絶対しなければいけないということではない。

 また、寝転がったり逆立ちをしたりといった動きは不得意だ。アプリケーションのアルゴリズムの特性上、両足が地面についていることを前提として動いているとのことだ。とはいえ、短時間であれば両足が地面から離れていても大丈夫なようで、ジャンプなどはかなり自然な動きで行える。

 実際に筆者も『mocopi』を体験させてもらったが、センサーの軽さはもちろん、装着の簡単さや精度に驚かされた。とてもセンサーが6つだけとは思えないほど、しっかりと動きをトラッキングしてくれる。

 ちなみに、腰のセンサーはベルトやズボンのウエストにクリップで固定するのだが、小型・軽量過ぎるがゆえに装着しているのを忘れ、外し忘れてしまう人が多いのだとか。実際、筆者も体験を終えて返却する際に外し忘れてしまい「腰のセンサー、やっぱり外し忘れましたね」と苦笑されたほどだ……(笑)。

 手頃な価格帯ながら、これまでに無い手軽さと必要十分なレベルのトラッキング精度を合わせ持ったモーションキャプチャーデバイスということで、界隈において“ゲームチェンジャー”となりそうな本製品。ソニーの姿勢も市場の育成やクリエイターの後押しといった前向きな考えで、今後の展開が非常に楽しみだ。

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