YouTubeを制する鍵は脚本か? 急上昇ランキングを賑わせるあめんぼぷらすのコメディ動画から考えてみた
寮生活を送る、とある大学野球部のルーティン動画で人気のあめんぼぷらすがYouTubeの急上昇に頻出している。YouTubeの中でも珍しい、ストーリー性のあるエンタメコンテンツで勝負するあめんぼぷらすの凄さに迫ってみたい。
あめんぼぷらすは、しょーたとおまつによる大阪出身の幼馴染コンビYouTuber。大学の野球部「あめぷら部」を舞台にしたコメディ動画が現役の野球部やOBから支持を得ており、YouTubeの急上昇に頻繁にランクインしている。11月1日に投稿した「【天才】試合で活躍するサボり部員のモーニングルーティン。【野球部 寮生活】」と5日に投稿した「【勝てばオフ】本気を出すサボり部員のモーニングルーティン。【野球部 寮生活】」は、同チャンネル初の2本連続急上昇ランキング1位を獲得。12月16日にはおまつ原作の単行本漫画「だるい野球部はサボりたい 背番号よりオフをくれ!」第1巻が発売を控えており、いま特にアツい動画クリエイターだ。
5日に公開された動画は、他大学の野球部との練習試合をテーマに、しょーたを含むサボり部員3人が繰り広げるちょっぴり胸熱なストーリーだ。監督の来季のボーナスと翌日のオフがかかった大事な試合のあめぷら野球部の先発は、高校時代に今回の試合相手の先発投手にバカにされ続けてきたという1年生。直前の試合ではベンチ入りできなかったしょーたたち3人の活躍もあり、同試合ではあめぷら部が順調に点数を重ねていく。しかし、先発ピッチャーの1年生は思うように結果が出せず、自ら監督に途中交代を申し入れたところ、しょーたたちが後輩を勝たせるために実力を発揮するという流れだ。
オチを言ってしまうと、結果はあめぷら大学が53点に対して対戦相手が147点というボロ負け。オチ以外は王道の学園ドラマだが、あめんぼぷらすのコンテンツはこのオチがほかのコメディ動画のものとは一線を画す。今回の動画も普通に考えれば、主人公たちが後輩のために頑張った結果、試合に勝利し、後輩が先輩たちに感謝、すすり泣く……といった「THE青春ストーリー」の展開を予想するが、実際はまったくその逆を突くもの。この信じられないような点差での負け方に思わず笑ってしまう視聴者が続出し、動画は大好評だったのだ。
あめんぼぷらすのコンテンツは、この感動させると思いきや笑いにもっていく、視聴者の予想を裏切るストーリー展開が大きな特徴として挙げられる。それに加え、誰もが1度は経験したことがあるであろう大人(監督)の理不尽さや、吹き出しで表示される「だる(だるい)」などのキャラクターたちの心情が共感を得ていることが人気の理由だ。
あめんぼぷらすチャンネルでは、普段から動画の脚本をおまつが担当し、編集をしょーたが担っている。プロの脚本家に外注しているものではないにも関わらず、どの動画も伏線がしっかりと張られたハイレベルな構成で作られている点には目を見張るものがある。吹き出しやインパクトのある音で表現される心情も動画の完成度を高めるいいスパイスになっており、非の打ちどころがない。
チャンネル開設から今年10月で4年を迎えたあめんぼぷらすは、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で一時は思うようなコンテンツ作りができず苦しい思いもした。そういったなかで人気を獲得するために毎日動画を投稿するYouTuberが多いなか、ふたりはほかのYouTuberには真似できない脚本で支持を集めていったことは間違いない。今回の動画は、YouTubeで唯一無二の人気を獲得するには脚本の力がいかに大切かを示していると同時に、今後動画クリエイターたちがYouTubeで生き残るためには脚本が大きな鍵となることを予感させるものだった。
参考:
https://twitter.com/syotadayo_n/status/1589191046143279106
https://twitter.com/omatsuyade_n/status/1587737878934990848