次世代の技術を先取りできる"Sneaks(こっそり)"とは? 『Adobe MAX』におけるもうひとつの楽しみ方に迫る

「Sneaks」で発表された新技術10種

・Magnetic Type

 グラフィックデザインの現場においては、文字に装飾を象ったり、イラストと文字を組み合わせたりするような事例が多々あり、こうした編集には多くの手間がかかる。せっかくデザインを決めたのに、書体を変更したり、文章を追加したりといった追加修正が必要になると、直すのも面倒だ。文字の再レイアウト、装飾の配置、形の変更など、極端な話「1文字追加の修正指示が出るだけではじめからやり直し」になってしまうようなケースもあるだろう。Magnetic Typeはこうした作業を簡略化する画期的な機能だ。

 プレゼンテーションでは"KNIGHT(騎士)"という単語に剣の意匠を組み合わせる事例が紹介された。"I"の文字に剣の意匠を組み合わせているが、ここで「頭に"THE"をつけて」という修正指示が来ると画像二枚目のような状態になってしまう。こうした修正はデザイン業界の"あるある"だろう。

 Magnetic Typeの機能を使えば、"KNIGHT"の頭に"THE"を追加しても、剣の意匠は"I"についたまま保持されて移動する。この、「意匠を保持したままテキストデータを扱える」ということはIllustratorユーザにとっては画期的な機能だろう。

 別の例では改行も行われた。また、ドラゴンの尻尾の意匠を"D"や"A"に付け替えるデモンストレーションも行われた。

さらに、「字体にイラストや意匠の雰囲気を反映する」という機能も紹介された。この意匠を保ったまま書体を変更する事もできる。"ICE"の書体を変更しても氷の意匠が保たれていることがわかるだろう。

・Vector Edge

 デザイナーがTシャツやコーヒーカップなどに載せるイラストレーションを制作する際に、その最終的な見栄えをイメージしながら制作するのは難しい。たとえば平面上で描かれているデザインが円柱にプリントされるものであった場合、画面で見ているモノと実際の製品から受ける印象が大きく変わってしまうかも知れない。Vecter Edgeはこうした「実空間におけるイラストレーションの見栄え」を簡単に再現できる機能だ。AIとベクターグラフィックスの投影技術を利用して、2Dのデザインを3D空間で原寸大表示できる。Illustrator上で動作するため、2Dのデザインと3D空間上での配置・確認を一つのアプリケーションの中で完結できる点でも革新的な機能だ。

 2Dのデザインアセットを3D空間にある箱に貼り付ける様子。ワンクリックでアセットが箱状に貼り付けられ、さらにドラッグするだけで箱のカドにも追従する。

 クリームの容器など、イラストが丸みのある物体に転写されることも想定して制作できるのはうれしい。特に商業デザインのワークフローがぐっと簡潔になるだろう。

・Motion Mix

 人が立っている1枚の静止画から、短いダンス動画を制作できるというプレゼンテーション。立っている人の画像を"踊らせる"、という発表自体に大きなインパクトがあり、会場も沸いていた。

 部屋で立つ男性の画像を選択し、続いて踊りのモーションを選択すると、いきなりモーション通りに男性が踊りだす姿はどこかユーモアで笑いも起きていた。背景も補完され、本当にその場で踊っているかのよう。AIによるモーション生成とヒューマンレンダリング技術が用いられているということだ。

 背景を変更したり、異なる人物を配置して同じモーションで踊らせることも可能だ。写真の状況も相まってシュールな映像が生まれており、会場で笑いを誘っていた。

・Project Blink

 高度なAI技術により実現した動画編集ツールのプレゼンテーションだ。動画をインポートすると「Project Blink」は会話や動画に映る人物や動物の姿を補足し、文字情報で検索可能になる。たとえば「2時間の動画の中に3回映るネコのシーン」を見つけるのは大変だが、「Project Blink」にインポートしてしまえばこの作業は一瞬で終わるだろう。また、「動画の中でキーパーソンがooと発言したシーン」などもテキスト検索で見つけることができる。インタビュー動画の中にある無音の時間や「えっと……」といったワードも、抽出〜選択して削除すればその編集は映像にも反映される。つまり「Project Blink」は、「文字を編集するように映像を編集できるツール」なのだ。

 Adobeのプレゼンテーション動画を用いたデモンストレーションが行われた。画面右側にあるテキスト列は、発言者の発言をAIが自動認識したもの。テキストを選択して操作すれば、動画の特定部分を抜き出したクリップも作成できる。「Project Blink」は現在ベータ版が提供されており、自身の環境で機能を試すことが可能だ。もし興味のある方はアクセスしてみるとよいだろう。

https://labs.adobe.com/projects/blink/

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