Adobe Expressのアップデートが初心者クリエイターに起こす変化
誰でも簡単にリッチなクリエイティブコンテンツを制作できるモバイル/WEBツール『Adobe Express』。昨年末の発表時から数度のアップデートを経て、最新のアップデートではさらにパワフルなツールになった。万人が便利に使えるツールだが、特に初心者クリエイターにとって『Adobe Express』は心強い武器になるだろう。本稿ではAdobe Expressの魅力と、その活用方法について解説しよう。
Adobeのソフトウェアはあらゆるクリエイティブを網羅しており、プロの制作の現場における事実上の標準ソフトとして活用されている。特にPhotoshop・Illustratorはいずれも画像編集における必須ソフトだといっていいだろう。
しかし、数十年に渡るアップデートの結果、PhotoshopもIllustratorも膨大な機能を内包した巨大なアプリケーションになっており、初めて使う人にはそれなりの学習ハードルがあるのも事実だ。2つのソフトの使い分け方すらわからなかった、という人もいるのではないだろうか。Adobe Expressはこうした、「画像編集経験のないユーザ」にこそ強くオススメしたいソフトウェアである。
Adobe Expressを起動して最初に目に入ってくるのは、ハイクオリティなテンプレートの数々だ。Adobe Expressはテンプレートをベースにして制作を行うインターフェイスなので、初心者も完成のイメージを持ちやすい。幾つものテンプレートを眺めながら制作物のイメージを膨らませることができるのは大きな利点だし、普段こうした制作と縁のない人にも「ちょっと作ってみようかな」と思わせる魅力がある。
また、2万2000以上のフォントを活用できる「Adobe Font」と、3億1千万点を超える素材写真やテンプレートの集う「Adobe Stock」のサービスがソフトとシームレスに連携しているのも心強い部分だ。選んだテンプレートの中にあるフォントや画像を置き換えて、さまざまな組み合わせを試してみるのも簡単だ。またこれらの素材を検索する際には「Adobe Sensei」によるレコメンドが行われるため、目的の素材にたどり着くことも簡単だ。デザインやクリエイティブに精通しているユーザにとっても、素材の検索性の高さを活かしてビューワーとして使うなど、活用方法は幅広い。
格好いいテンプレートに素材を組み込んだり、フォントとテキストを調整すれば、短い時間でクリエイティブが完結する。実際に試してみると「誰もが使える」という謳い文句が決して間違いではないことがわかるだろう。また、画像の切り抜きやレイヤーにも対応するので、複雑な制作にも想像以上に活用できる。こうしたクリエイティブはAdobe Expressの中からSNSへ投稿することも可能、予約投稿にも対応している。
ほかにも先日の『Adobe MAX 2022』で発表された機能として、Adobe Expressで制作したクリエイティブの編集を、ほかのAdobe Creative Cloudソフトウェアへと引き継ぐ機能が追加された。たとえば外出先においても、手元のスマートフォンのAdobe Expressでラフスケッチを作り、家に帰ってからPhotoshopで本編集を行うなど、場所やツールにとらわれない柔軟な制作が可能になっている。反対にPhotoshopで制作したクリエイティブの予約投稿をAdobe Expressで設定するなど、クリエイティブの出力用ソフトとしても役立てられる。クラウドベースのホームページ制作ツール『Wix』との提携も発表された。Wixを使うユーザはWEBページに掲載する画像にアニメーションやエフェクトを簡単に追加できるようになる。現在では日本のK-12(幼稚園および初等中等教育)学生230万人がAdobe Expressを利用しているとのことで、この数字はより大きくなっていくだろう。
近日中のアップデートにより「動画の編集機能」「メディアミックス制作機能「画像生成AI機能」などが実装される予定で、ますますパワフルなソフトウェアになりそうだ。こうしたアップデートが継続的に行われているところにも、AdobeがAdobe Expressを注視していることがうかがい知れる。
プロのクリエイターに支持される数々のソフトウェアを作るAdobeが、こうしたモバイルデバイスにおけるクリエイティブを促進しているのは意義深い。多くの人が自分の手元で自分の求める制作物を簡単に作れること、それはすなわちAdobeが目標に掲げている「誰もがクリエイティビティを発揮できる社会」の実現に近づくための最適なアプローチのひとつだろう。みなさんも「身の回りのちょっとしたクリエイティブ」に思いを馳せながら、Adobe Expressを使ってみてほしい。
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