『TEPPEN』やTikTokでも話題に。五条院凌が“おファンのみなさま”にだけ見せる「弱い自分」とは

五条院凌が“おファン”にだけ見せる一面

 まるで『ベルばら』や宝塚の世界から飛び出てきたような麗しき女性ピアニストが、超絶テクニックでK-POPからボカロ曲まで自在に弾きこなす。YouTubeやTikTokで大きな話題となり、最近はテレビ番組にも頻繁に出演しお茶の間での人気も獲得した五条院凌が、きたる11月3日に品川インターシティホールにて単独公演『おゴージャスなお音色で彩るおウィンターおコンサート2022~お冬のお陣~』を開催する。

 クラシックをベースとしながら様々な音楽的スタイルを取り入れた、彼女のユニークな音楽性を網羅できる絶好の機会となるのは間違いないだろう。ピアノの腕前やゴージャスな立ち振る舞いはもちろん、独特な言葉遣いやチャーミングな人柄により着実にファンベースを広げてきた五条院。昨年Bitfanにて立ち上げた「五条院凌おファン倶楽部」では、どのような活動を行なっているのだろうか。(黒田隆憲)

『ベルサイユのばら』や宝塚、そしてバレエ。五条院凌の麗しき“おルーツ”たち

──まずは、五条院さんが音楽に目覚めたきっかけを教えてもらえますか?

五条院:それは五条院がまだこの地に舞い降りる前のお話になります。わたくしは幼少期、すなわち「0.3条院」の頃からずっとおクラシックピアノを学んでおりまして、そこからずっと学生時代までコンクール三昧の生活を送っておりました。ピアノがない生活は考えられないといいますか、わたくしとピアノは「イコール」で結ばれている状態でしたね。

 音大生になってからは、おクラシックピアノの演奏だけでなく別名義で自分のオリジナル曲を作るようになりました。当時はおクラブミュージックを聴くのが好きなのもあって、シンセサイザーを使ってDTMでトラックを作っていたのです。でも、世間にはそれがあまり浸透しなかったのですよね。おYouTubeに音源をアップしてもなかなか再生回数が伸びず、他にも色々と迷いが生じていた時期でした。

──どんな迷いが生じていたのでしょうか。

五条院:おクラシック演奏家というのは、何百年も前に活躍された作曲家さまの意思を、ピアノを通してお伝えするものだと思っております。あくまでも自分自身は作曲家さまの「通訳者」「伝達者」であり、演奏に自分の意思など反映させてはならない。そのくらい崇高なるものなのです。

 わたくしはそういったおクラシック音楽や、歴史上の作曲家さまたちへのおリスペクトがものすごく強くありました。ただ、自分自身がピアノを弾くとき、心からの喜びや幸せを感じることがこれまではほとんどなかったのです。もちろん、ただ「楽しい」と思うことならたくさんあったのですが、その一方で自分の魂から生み出された喜怒哀楽をわたくしなりの音で表現したいという気持ちがとても強くて。そういう意味でおクラシック音楽と自分との間に葛藤があったのです。

──なるほど。

五条院:当時、わたくしが師事していた音大の教授からは「そんなに自分の気持ちを音楽にぶつけたいのだったら、自分で曲を作って披露するのはどうですか?」みたいなことを、冗談まじりに言われたことがありました。それまでおクラシック以外の音楽は、自分の中で「やる」という発想がなかったのですよね。おポップスもおロックも好きでしたが。

 音大を卒業し、自分の人生について深く考えることが増えたときに、先ほどの教授のお言葉を思い出しました。「これからは自分にしかできないような音楽を作ってみよう」「自分自身が心から幸せを感じるようなパフォーマンスをやっていこう」と。それと同時に私の内側から「五条院」という別人格が現れました。「舞い降りた」というよりは「覚醒した」という感じでしょうか。そこから現在のスタイル、おクラシックをベースとしたおゴージャスな演奏にたどり着き、おアニソンやおボカロ曲などのおカバーをアップしていくようになったのです。

──「五条院凌」としての活動を開始して、すぐに反応はありました?

五条院:2021年4月におTikTokという表現舞台に舞い降り、同時におYouTubeにも動画をアップするようになりました。そこでAdoさまのお「うっせぇわ」を弾かせて頂いたところ、3投稿目くらいで結構なおバズが起こりまして。

@gojoinryo お母様からの教えで、お上品におうっせぇわを弾かせていただきました。#gojoinryo #ピアノ #うっせぇわ #弾いてみた ♬ オリジナル楽曲 - 五条院凌

──どう思いました?

五条院:この地球にはこんなに人類が存在していたのか、と驚きましたね(笑)。それまでは、せいぜい「いいね」が30くらいだったのが、1000の単位を表す「K」というアルファベットがアクセスカウンターに表示されたときのことは、いまでも覚えています。

 それからは自分自身の悲しみや苦しみ、葛藤よりも、心から「楽しい!」と思える音楽を演奏するようになり、それがいろんな方々に伝わったことで、ようやく自分がやってきたことを「間違っていないのかもしれない」と思ってあげられるようになりました。そこからは1日1投稿を目指し、気づけばものすごい数の皆様に聴いていただけるようになりました。それまでは「自分だけの音楽世界」だったものが、おTikTokやおYouTubeを通してさらに壮大なものへと進化していっていることを日々実感しています。

──ファンの方たちから毎日沢山のコメントやメッセージをもらうと思うのですが、そうした中で演奏に対する意識も変わっていきましたか?

五条院:五条院がこの地にお降臨したのは、「この地球に麗しい音色をお届けする」「世界中の老若男女すべての方々のお心を癒す」というお天命があるからです。それを実践していくなか、先ほども言ったように「自分のためだけにピアノを弾くのではなく、みなさまのお心をお守りするために演奏する」という意識が強まっていきました。

──そういう心境へと変わっていったのは、2020年から始まったパンデミックの影響もありますか?

五条院:そうでございますね、それもあると思います。なぜならおコロナ禍の時期に、私にとって初めての「悲劇」の連続が訪れたので。もともと五条院は、「悲しみ」や「苦しみ」の中から現れたもの。当時のわたくしが抱えていた「行き場のない感情」を、まるごと受け止めてくれた唯一の存在がピアノだった。だからこそ、わたくしのような苦しみを抱えている方、葛藤や悲しみの中にいる方を救いたいという思いがとても強いのです。

──五条院さんの現在のスタイルは、『ベルサイユのばら』や宝塚などの影響が強いと伺いました。

五条院:そういったものも、もとを辿ればおクラシックバレエからの影響が大きいかなと思っています。バレエって、衣装がキャラクターによって違うのですよ。例えば村娘の役は、ストーンとした衣装を身につける。そして回ったときにふわっと広がるようなデザインになっているのです。一方、お姫様の役は常に裾が広がっているおチュチュを身につけるなど、キャラクターによってコスチュームが変わったり、その衣装を着ることでキャラクターに自分がなりきったりすることが楽しかったのですよね。自分でなにかを表現するというよりは、曲やキャラの世界観に憑依していくような、そういう感覚が子供のころから好きなのだと思います。

 ピアノの練習はとても辛く、その逃げ場としてバレエがあったといいますか。わたくしにとってバレエは、ずっとその世界に浸っていたいと思わせる現実お逃避、いわばおファンタジーの場だった。それがいま、「五条院凌」として出てきているのではないかと思いますね。そんな五条院の世界がみなさまの現実お逃避の場でもあったらとても嬉しいです。

──クラシックバレエの「空間」の使い方にも影響を受けているそうですね。

五条院:そうなのですよ。バレエってお風のように常に動いているのです。それがいまのパフォーマンス、演奏スタイルにすごく影響を与えている。例えば音を奏でるときのわたくしは、空間の「お風」を感じながら、お風の動きとともに旋律を鳴らしている感覚なのです。そういうことを意識すると、客席にいるみなさまにもおバイブスを感じていただけるというか。お客さまと私が一つになる、一心お同体になって幸せな気持ちになれるのです。

 それに、演奏するときに気をつけていることの一つが姿勢で、常に凛としていたいという意識もバレエからきていますね。具体的には自分の目が鎖骨のあたりにあるようなイメージといいますか。演奏だから声は出ないけど、自分の声帯からピアノの音を発するようなイメージで立つと、姿勢が猫背にはならないのです。よく「五条院さんは姿勢がいいですね」と言っていただくのですが、そういう心構えが常にあるからだと思っていますね。

──映像の作り込みにもこだわっているとお見受けします。照明やアングルなど、最初からかなりコンセプトを固めていたのですか?

五条院:お「うっせぇわ」の時は、とにかく自分がやりたいことをやりたいようにやろうと思いました。バレエのエッセンスや、おクラシックのパッセージをまぶした、華麗なるおゴージャスな世界観を表現するコンセプトがお「うっせぇわ」の曲調と非常におマッチして。そこはあまり計画的ではなくて、本当に、自分の中からポン!と出てきたものだったのです。以降は「これをベースにもっと飾りをつけていけばいいのかな」と思って少しずつ改良を重ねながら現在に至る感じです。自分で撮影して、自分で編集しているため、自分の姿を客観的にみているうちに、コンプレックスもどんどん自信に変わっていっているのを感じます。

──五条院凌の世界観をよりよくするため、他に普段から心がけていることはありますか?

五条院:おストレッチは日課にしています。演奏も体が大事ですから、体が硬かったらお美しい音が出ない。バレエをやっていたのもあって、そのルーティンがしみついちゃっているのもあるのですけれど、気がついた時……少なくても朝昼晩と3回は全身のおストレッチを行っていますね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる