「他人から認められたい」が原動力に 令和の白ギャル・ゆうちゃみが大切にする価値観とSNSの存在意義

早稲田大学の学園祭「早稲田祭」で例年注目を集めるトークイベントを企画・運営する早稲田大学広告研究会(以下、広告研究会)。
今年は2025年11月1日、2日の2日間にわたって、それぞれバックグラウンドの異なる3名のゲストを招いて行われた。今回は2日目に開催された「ゆうちゃみ的モチベUPシアター」に参加し、イベントの模様やゆうちゃみさんへのインタビューを通じて、Z世代のモチベーションの拠り所やSNSとの向き合い方を考察していく。
「承認欲求は私の武器」。ゆうちゃみが語るモチベーションの源泉
「やるべきことはあるが、モチベーションが上がらず一歩を踏み出せない」
このような学生ならではの悩みに寄り添い、その解決策を探ることを目的に企画されたのが「ゆうちゃみ的モチベUPシアター」である。
大阪府出身のゆうちゃみさんは、幼少期にEXILEのバックダンサーを務めた経験を持ち、現在では“令和の白ギャル”としてモデルやタレント、歌手など多岐にわたって活動している。
イベントでは、彼女のポジティブな価値観を通じて、学生たちが新たな一歩を踏み出すためのヒントを提供する4つの企画が展開された。
最初の企画では、多方面で活躍するゆうちゃみさんの1日のスケジュールを追いながら、その仕事ぶりとモチベーションの源泉に迫った。

朝は情報番組への生出演である。政治や経済といった硬派なテーマを扱う番組に初めて出演が決まった際は「私でいいの?ギャルやけど?」と戸惑いを感じたという。しかし、元総理と対談するなどプレッシャーのかかる現場も「いろんな知識を得られる」と前向きな姿勢を見せた。
続いては、モデルとしての雑誌撮影。朝6時からの早朝ロケなどハードな現場もあるが、「モデルの仕事は全部楽しい」とゆうちゃみさんは語った。
昼には歌手活動のためのボイストレーニングを行う。2024年に歌手デビューを果たしたことについて、「芸能の仕事をやっている人なら一度は憧れる」と夢が叶ったことに触れ、自身の曲がカラオケに入った時の感動は忘れられないと嬉しそうに話した。
夕方からはタレントとしてテレビ番組の収録に参加。昨年1年間で281本もの番組に出演するなど、多忙を極めるスケジュールの中でも頑張れる理由について、ゆうちゃみさんは「共演者の方が面白いですし、優しい。みんなで番組を作っているというのがすごいモチベになる」とし、チームで一つのものを作り上げる喜びが原動力になっていることを明かした。
一日の締めくくりは、YouTube撮影。
このような多忙な毎日を送るゆうちゃみさんだが、「楽しくてやってるから、あんまり大変だなと思うことはない」と笑顔で話すも、睡眠時間や好きなお酒を飲む時間が削られるなど、体調管理には苦労していることも告白した。ストイックな一面と、何事も楽しむポジティブな姿勢こそ、彼女のマルチな活動を支えている要因になっていると言えるだろう。
続いての企画は、独自の診断ツールを用いてゆうちゃみさんの内面を深掘りする「ギャルタイプ診断」だ。オーディエンスも手元のQRコードから診断に参加し、会場全体で盛り上がった。
診断は「カリスマギャル」「クリエイティブギャル」「ロマンスギャル」「アクティブギャル」の4つのタイプに分類される。
ゆうちゃみさんの診断結果は「カリスマギャルタイプ」。
このタイプの特徴は「承認欲求の強さ」であり、他人から認められたいという気持ちが自分の原動力になるという。
この結果に対し、ゆうちゃみさんは「本当に承認欲求が高いので、すごい当てはまっている」と即座に納得した。加えて、「承認欲求が高いと何事も上手くいく感じがして、私自身はポジティブに捉えている」と話し、「他人から認められたい」「褒められたい」という気持ちが、仕事や挑戦への強力な原動力になっていると説明した。
事前に観客へ行ったアンケートでは、「承認欲求はネガティブなもの」と考えている人が多かったものの、ゆうちゃみさんは「他人に認められたい」という気持ちを自身のモチベーションに変換するポジティブな承認欲求を持っているからこそ、それが彼女の強みになっているのかもしれない。
就活の悩みも、まずは動くことが大事
次は、オーディエンスがゆうちゃみさんのリアルな悩みを解決するという「観客参加型の企画」へと移った。
ゆうちゃみさんの悩みは、「妹とのYouTube企画が思いつかない」「出会いがなくて好きな人ができない」「新しいことに挑戦したいが決まらない」という3つ。
オーディエンスは自身のギャルタイプの強みを活かし、ゆうちゃみさんの承認欲求を満たし、悩みを解決するアイデアをフォームから投稿。
会場から集まった多数のユニークな回答の中から選ばれたのは「ギャル VS AI」、「止まらないボケでひな壇の特訓」、「タッグでM-1」という個性豊かなアイデアだ。この名から、ゆうちゃみさんがグランプリに選出したのは「ギャル VS AI」。
決め手は「AIとギャルが戦ったら面白そうで、本当に新しいなと思った」からだという。

最後の企画では、ゆうちゃみさんがオーディエンスの悩みに直接答える時間が設けられた。事前に寄せられた悩みの中で最も多かったのは「就職活動」に関するもので、「有名企業に入りたいとか、この会社かっこいいから入りたいとか、入るきっかけなんて別に何でもいい。まず動くことがすごく大事」と就活に悩む学生たちの背中を押した。
その後、ゆうちゃみさんは自ら客席に降りて、「就活で何がしたいかわからない」「テレビ業界への夢があるが自信がない」といったリアルな悩みに、彼女は目線を合わせて耳を傾け、自身の経験を交えながら力強いエールを送った。
最後に、ゆうちゃみさんは「今日のイベントが、『何か頑張ろうかな』と思うきっかけに繋がれば嬉しい」とメッセージを送り、イベントを締めくくった。
ゆうちゃみさんの飾らない人柄、何事にも前向きに取り組むエネルギーは、参加者一人ひとりの心に響き、明日からの一歩を踏み出すための確かなモチベーションとなったに違いない。
SNSは自由に発言できて、色々な一面を見せられる場所

イベント後に実施したゆうちゃみさんへの個別インタビューでは、SNSとの向き合い方やZ世代ならではのコミュニケーションの極意について話を伺った。
まず最初にイベントを終えた感想を聞くと、開口一番「ほんまに楽しかった」と笑みを見せた。特に印象的だったのは、会場に足を踏み入れた瞬間の光景だったと話してくれた。
「本当に人が入りすぎていて、『え?』と声に出してしまうくらい、満員の客席に圧倒されました。学生たちの熱量もすごく高くて、私自身も元気をもらえましたし、なんか勇気づけられたというかパワーをもらった感じでした。また、運営に携わった学生たちも私より大人みたいで、“優秀”だなと素直に思いました」(ゆうちゃみさん)
そもそも、なぜ今回のような大学の学祭イベントへの出演を決めたのか。
その背景について、ゆうちゃみさんは「同世代と近い距離で交流するのが好き」という気持ちに加え、「学祭への憧れ」があったと話す。
高校時代から仕事で東京と大阪を行き来する多忙な日々を送り、多くの同世代が経験するような「青春」を十分に謳歌できなかったからこそ、「逆に青春をもらっている感じ」と話し、今回のイベントを通じて自分自身も刺激を受ける良い機会になったそうだ。
そんななか、ゆうちゃみさんにとって、現代の若者文化と切っても切り離せないSNSはどのような存在だと思っているか尋ねると、「色々な一面を見せられる場所」と述べた。
「中学・高校生の頃からSNSを使っていて、私にとってはファンとの繋がりを継続的に保つための大切なコミュニケーションツールです。物理的な距離があっても、オンラインのプラットフォームを通して双方向のやり取りができるSNSは、自分の活動に不可欠な存在になっています。
また、テレビではタレントとしての役割を意識した自分を見せることが多いのに対して、SNSでは“可愛いゆうちゃみ”や“インスタ映えしているゆうちゃみ”など、NGがなくて自由に発言できる場所だと思っていますね」
一方で、SNSは炎上や誹謗中傷といったネガティブな側面も問題視されている。そうしたリスクに対し、ゆうちゃみさんはどのような意識を向けているのだろうか。
「アンチコメントに対しては基本的にブロックやミュートをしますが、たまに『見てるぞ』というのを認知させるために、『いいね』を押したりしていますね」
炎上についても、「一般常識なことができていたらそうならないし、逆に炎上する理由が私にはちょっと理解ができない」と持論を展開。SNSを特別なものではなく、実社会と同じ倫理観や常識を持って使っていれば、大きな問題には発展しないというスタンスを示した。

今回のイベントでは、広告研究会が113年の歴史で初めて本格的なSNS活用に挑戦し、情報発信やイベントの魅力を伝えていたことに対し、ゆうちゃみさんはZ世代のインフルエンサーとして具体的なアドバイスを送った。
まずは「顔出しの重要性」だ。文章だけの情報発信では伝わらない人間味や安心感を、顔を出すことで伝えられるとゆうちゃみさんは語った。
「ゆうちゃみができるなら、自分もできる」と思って挑戦すること
また「フォロワーへの問いかけ」も、双方向のコミュニケーションを創出するうえで、大事になるとのこと。要は一方的な情報発信ではなく、フォロワーに質問を投げかけることでコメントを促し、対話を生み出すわけだ。ゆうちゃみさんは「問いかけた方がみんなも返しやすい」と、双方向性を意識したコミュニケーションの重要性を強調した。
そして、ゆうちゃみさんは各SNSの特性を理解し、明確に使い分けているという。
「X(旧Twitter)はみんなと喋る用、Instagramはインスタ映え用、TikTokはバズらせる用と、各SNSで投稿内容を使い分けています。特に拡散を狙いたいなら、今はTikTokが一番強いかなと思いますね。
ただ、SNSの投稿も文字だらけだったり、頑張りすぎて色合いがおかしくなっていたりすると、“ダサい”と感じてしまいます。過剰な作り込みよりも、自然体で親しみやすい表現が好まれるでしょう」
最後に、これから社会に出ていくZ世代の若者たちに向けたメッセージを語ってもらった。
「私はギャルで、別に頭も良いわけではありませんが、『ゆうちゃみができるなら、自分もできる』とハードルを下げてもらって、いろんなことに挑戦して欲しいなと思います。勉強ができなくても、最近は環境問題を気にするようになったんですよ。それを見て、『ゆうちゃみも気にするなら、私も気にしなきゃ』と思ってもらえたら嬉しいです」
現代の若者文化やSNS文化を知るうえで、ゆうちゃみさんが率直な言葉で語った内容は、今の時代を生きる全ての世代にとって、何かヒントを与えてくれたのではないだろうか。
























