にじさんじの“ママ”、ドーラが行った「改革」とは
そんな彼女らしいエピソードとして外すことができないのは、2018年11月から2020年3月までのあいだ、Minecraftのにじさんじメンバー共有サーバー(通称「にじさんじサーバー」)を準備・管理していたという点であろう。
「自前で建てたサーバーだとすぐに落ちちゃって満足に遊べなかったというのもあるけども、にじさんじのメンバー同士で楽しんでコラボ配信している姿が見たかった。いちばん視聴者目線です、たぶんワシは」
「それまでコラボ配信というと『PUBG』を使ったコラボ配信だったと思うんだけども、必死にゲームをプレイしてて、雑談もして、コメントも見て、というとワシは頭がパンクする」
「SEEDsのなかでいちど『Minecraft』が流行ってSEEDs内でコラボができるようになった。当時はコラボ規制が敷かれていたけども、徐々に緩和されていてお話ができるようになっていた」
当時は『にじさんじ1期生・2期生』『ゲーマーズ』『SEEDs組』の3グループに分けられ、ドーラが語るように「コラボ規制」が言い渡されていた節があった。そんな状況にあって、ピュアに言えば「みんなと楽しく遊びたい」という理由から彼女自身でサーバーを借りて運用しはじめたのだ。
すると、絡みの少ない者同士が突発的にコラボしあえる場所としてにじさんじサーバーの『Minecraft』は機能していくことになった。一緒にサーバーに入っているならば、いつ何時どのような会話と絡みが起こっても不思議ではない。リスナー・タレントはそのことを肝に銘じて楽しむようになり、意外性のある組み合わせと絡みが見れるという期待感が渦巻くこととなった。
2020年3月ににじさんじの運営スタッフに管理関係が譲渡されて以降も、その魅力・根幹はいっさいブレることなく、時にはアクシデント性の強い刺激となって配信を彩るワンシーンを生み出してくことになった。
【マインクラフトにじさんじサーバーについてのお知らせ】
にじさんじサーバーの管理が、ドーラから運営さんに変わります!!!
詳細をどこまで話していいかは今相談中ですのでとりあえず今はこの事実だけ告知させてくださいませ・・・!
拡散頼んだーー!!!!!!! pic.twitter.com/dOHkCRSgIQ— ドーラ🔥 (@___Dola) March 16, 2020
またドーラがいうように、「FPS・サバイバルゲームを必死にプレイしていると、リスナーとのふれあいが取りづらくなる」という点は、のちにデビューした共通の悩みを持った後輩らの助けにもなったはずだ。
にじさんじの誰しもが『Minecraft』をプレイしやすい環境へと仕上げたこと、これは彼女の残した功績として、多くの後輩・リスナーに影響を与えたといえる。
さて、当時の彼女がアクションしたもので現在でも強い影響を残したものといえば、ド葛本社のブレイクとその在り方であろう。
葛葉・本間ひまわりのにじさんじゲーマーズと、社築・ドーラのにじさんじSEEDs1期生、2018年11月7日に初コラボして以降、4人によるド葛本社はにじさんじのなかでもトップレベルに人気を集めるコラボグループとして人気を博している。
いまから見れば異を唱えるようなことはないだろうが、先ほどの「コラボ規制」の話を思い出せば、かなり勇気のある組み合わせでコラボ配信がスタートしたことが伝わるだろう。結果から見れば、葛葉・ひまわりのわんぱくな振る舞いと社・ドーラの落ち着いた振る舞いというギャップなどがリスナーを魅了し、おおきく人気を集めていくことになった。
ド葛本社がJK組などの人気コラボグループの仲間入りを果たした2019年頃といえば、にじさんじ内で積極的にコラボ配信が組まれたり、後日にコラボ名を掲げて仲良く配信する流れが加速していくことになる。
その影響は、2019年のとある時期から「同期でデビューした2人・3人はグループ名を冠する」という流れへと形を変えていくことになる。2019年にデビューしたにじさんじライバーは計43名、同期グループだけでも15個あり、1期生・2期生・ゲーマーズ・SEEDs組が統合後に一気にコラボ配信を加速するのだ、その在り様はまさにカオス・混沌といって良い。
そんな中にあっても、「同じにじさんじのメンバーとしてフラットに楽しみ合いたい」というドーラが持ち合わせていたマインドは多くのリスナーと同僚らの心に留まり、現在にも続く一種の精神性となった。
当たり前のようでいて、とても大切なことを、人見知りで常識人な彼女が根付かせたともいえる。
現在のにじさんじには歌を得意とするメンバーが数多く揃っているが、ドーラも活動開始当初からいまに至るまで、その歌唱力でファンを魅了してきたメンバーの1人である。
丸みを帯びた声色と低めの音域、伸びやかに声を響かせるボーカルスタイルと、非凡なセンスをそこに感じるだろう。
多くの歌配信などを届けてきた彼女であるが、同僚である緑仙のような積極的なソロ活動とは違い、あくまで歌が好きな一人のVTuberとしてのスケール感に留まっているように見えた。
そんななか、2022年4月29日には中国のゲーム開発会社PeroPeroGamesが開発する音楽ゲーム『Muse Dash』にてオリジナル歌唱楽曲「夔 - Apo11o program ft.ドーラ (にじさんじ)」が突如として追加され、音ゲーとしてプレイできるようになったのだ。
2022年4月30日には自身の配信内でゲームをプレイしながら収録時の感想などを語っており、8月19日にはフルMVが公開された。
歌が上手で人見知りな常識人。一言でまとめれば彼女はそういったキャラクターをもった人物であり、深く重みある足跡を残してきた。普段どおりの穏やかな姿勢のまま、時としてハメを外して騒いでみる彼女の姿は、今後のにじさんじに無くてはならない存在感を放っているのだ。