声とテクノロジーで変革する“メディアの未来”
脱サラして月売上100万円超えの配信者も輩出 音声配信サービス『Radiotalk』が目指す“話すエンターテイナー”が活躍する未来
あえて「取り締まる」とは言わない“心得”というガイドライン
――Radiotalkは「音声」が中心なので、喋っている内容が一目でわかるわけではないと思います。その中で、安心や治安を維持していく工夫があれば教えてください。
井上:これは、Radiotalkだけでなく、SNS含めてインターネットの課題でもあるのですが、まだまだ人間がSNSに適応できていないという問題があると思っています。例えば100人の人が、好き、楽しかった、面白かったと言ってくれたとしても、たった1人が酷評すると対象者はその1人の声の方をずっと引きずってしまい、100人側の方をおざなりにしてしまう。私自身もこれは体感しているので、ここはRadiotalkのプラットフォームに限らず、受け取り側と発信側のそれぞれがリテラシーを上げていくための啓蒙活動が必要だと思っています。
その上でRadiotalk内では、ガイドラインというものを設けています。これは「心得」みたいな形で制定していて。正直これが広義の意味で正しいルールなのかというと、当然、他のプラットフォームとは違う軸になっていると思います。ですがRadiotalkの場合、話すことで楽しませる“職業ラジオトーカー”が生まれるために一番大事なのは、話すことで楽しませることに興味を持つ側の母数を増やすことだと思っています。だから前提は、「取り締まるよ」というメッセージではなくて、コミュニティガイドラインに「All Talks are Good」と書いてある通り、どんなトークにも価値があるものだということを伝えています。
どんなに自分がつまらないと思うものでも、どんなに中身がないと思われたり言われたりするものでも、基本的に全て価値があるものだと肯定するスタンスにしているんです。その上で、話したい気持ちに対して悪意を持って阻害しに行くようなことは許されないということを説いていて、傷つけたり法に背いたりするものは対処されるということを言語化しています。
――すべてを良い、悪いでジャッジするのではなく、心得としてシェアしているのは面白いですね。ガイドラインにひっかかる配信を「見つける」というところではどう工夫しているのでしょうか?
井上:基本は通報です。ですが、なるべく未然に防げるようにこうした啓蒙活動は必要だと思っていて、ガイドラインを常にアプリの上部に固定するなど工夫はしています。さらに月に1回、通報された投稿に対して何件対処したかを必ずユーザー側に報告するようにしています。ここでは対処の対象になった個人が特定されないようにはしていますが、なるべく透明性を持っていたいと思っていますね。
――最後にこれから音声コンテンツ業界全体にこうなっていってほしいという希望があれば教えてください。
井上:「人の話で成り立つコンテンツ」をとてもおもしろいものだと思っているのですが、価値があるものにはお金が回る仕組みがない限り衰退してしまいます。だからこそ、「話すこと」という価値あるエンタメにお金がついてくる仕組みを複数の軸で作っていけたらと思っています。
Radiotalkはそれでいうと配信者が報われる仕組みというところで、ギフティングだったり、先ほどのようにグッズを作って売ることだったり、さらにはRadiotalkの運営を通しての依頼で案件を請け負っている配信者もいます。これ以外にも音声コンテンツ業界には、プログラマティックオーディオアドと言われるような、自動広告みたいな物もありますよね。我々はそういうところへの参入は、いまのところ考えてはいませんが、音声版ではすでにSpotifyがそれを実現しているかと思います。そういうことをやっていく企業が存在することや、競合になっていくこと自体は、市場全体を成長させる意味でとても有意義なのではないでしょうか。もっと収益化の仕組みが各サービス内で広がっていくと、音声配信に対しての市場性がついてくるためのチャレンジがしやすくなるのではと考えています。