“指パッチン”ひとつでTikTokからお茶の間へ 指男が語る「アーティストとしての意気込み」

――指パッチンのアーティストとしてアルバムやオリジナルソングを出したいという夢をお持ちでしたが、それはいまでも健在ですか?

指男:もちろんです。僕は指パッチンをパーカッションだと思っています。だから、指パッチンをはじめてからはベースやドラムの音にすごく注目するようになっていて。ドラムのパターンをいかに指パッチンにアレンジできるかは、いつも考えています。

――初期のころは、音楽に指パッチンを合わせることが多かったようですが、あのリズムはアドリブなのでしょうか?

指男:アドリブです。特に楽譜もないので、その場その場の撮影が命でした。納得いかなかったら何回も撮り直し、逆に納得いくものがあったら1回の撮影で終わることも。聞きなおしてから考えることもあります。1、2、3回目と撮って、この中では3回目が良かったかな、という感じで。

――現在は専業でSNSをやられているのですか?

指男:一応、SNSでご飯を食べさせてもらっていますね。TikTok、YouTubeやインスタでの収益がメインです。実は一瞬だけサラリーマンをやっていたことがあるのですが、クビになってしまって。業績が悪いからという理由で、新卒にも関わらず首を切られてしまいました。そうなったときに、ようやく自分と真剣に向き合って転職するかSNSを全力でやるかを考え、SNSを選びました。

――すごい! 夢のような話ですね。

指男:どうなんでしょう(笑)。憧れの人と同じ動画の中に映れて、憧れの人と話ができると考えたら本当に夢のような状況ではありますね。おそらく僕が普通に楽器をやっていたら、こんな風にはなれなかったと思います。誰もやらなかったことを、長い期間コツコツやってきたからこそ、いまがあるのだと感じています。「努力は裏切らない」という言葉は、僕は嫌いなんですが、やっぱり努力をしないと報われないのだとは思います。

――プロとしてソーシャルメディアを活用されていると、数値や反響に目が向きがちになりませんか?

指男:本当にそれは僕も反省していて。ついそこに気持ちが向いてしまうんですよね。でも、数値のことばかり気にしていると本当に心の底から楽しめなくなるんです。心が磨耗していくというか。なので、なんとかその気持ちを抑えているという感じです。ただやっぱり、数ヶ月に1回くらいは「あのTikTokerすごい伸びていたなとか、あのYouTuberすごい伸びているな。それに比べて、俺は全然伸びていないな」みたいに思ってしまうことはあります。

――投稿を作る中で工夫していることがあれば教えてください。

指男: TikTokerやYouTuberの全員がやっていることだと思うのですが、最初の1秒は絶対に力を入れるってことですかね。最初の1秒がつまらなかったら、後の15秒が面白くても、みんなスワイプして離脱してしまう。そこが大事かなと思っています。あとタイトルも工夫していますね。いまのYouTubeとかTikTokって、ネタバレしていることが多いんですよ。あらすじを最初から最後まで全部タイトルに書いて、「この展開はいつ起きるんだろう」と思わせる。いかに引きのあるあらすじを盛り込めるかが重要ですね。

――心ない言葉に傷つくことはありますか?

指男:3年前くらいまではそういうものに耐性がなくて、打ちのめされるときもありました。でもそのときに考えたのが、顔の見えないよくわからない相手の中傷よりも、僕が信頼してすごいと思っている人に「面白い」と言ってもらった事実の方が大切だなということ。僕は幸いそういう方々に恵まれて、たくさんの温かい言葉をかけてもらえているので、それに勝るものはないと思っています。血の通っていない言葉を気にするよりも、自分が心の底からすごいなって思う人たちに「すごいよ」って言ってもらえた方が自信になるし、間違いないなと思えます。僕が心から尊敬しているサカナクションの山口さんからも、「いやお前はすげえよ、人とは違う道でここまで登りつめたんだから。ある意味すげえ尊敬してるよ」と言ってもらえたことで、辛辣なコメントも気にならなくなりました。

――現段階での夢があれば教えていただけますか。

指男:プロのミュージシャンの方のパーカッションとしてレコーディングに参加したいです。あとは僕の指パッチンを音源の中で使わせてもらうとか、ミュージックビデオに出させて頂くとか。音楽との関わりをもっと広げられればなと思います。今はいろいろなジャンルを動画で表現させてもらっていますが、ゆくゆくは自分のオリジナル曲を出したりして、ライブやワンマンツアーをしたいんです。欲を言えば対バンゲストにサカナクションを呼びたい。現実的には難しいと思いますが、でもそのくらいのレベルまでは頑張りたいですよね。音楽が好きなので、最終的には音楽に注力していきたい気持ちは今もずっと変わっていません。

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