“指パッチン”ひとつでTikTokからお茶の間へ 指男が語る「アーティストとしての意気込み」

指男、アーティストとしての意気込み

 TikTokやYouTubeで人気を集めるPPP STUDIO所属の「指パッチン奏者」であり動画クリエイターの指男。SNSの枠を越え、テレビ出演や有名アーティストとのコラボにより「指パッチン」の新境地を切り開く。最近は「無垢の巨人」ネタがブレイクすることで、さらに幅広い層から注目されることに。

 今回、そんな指男にインタビューを実施し、今後の目標からアーティストとしての意気込みを語ってもらった。

――なぜ指パッチンをはじめたのかを教えてください。

指男:きっかけはサカナクションの「アイデンティティ」という曲でした。僕はそのころ、音楽の魅力に気づいていなかったのですが、この楽曲のサウンドの作り方がこれまで聴いてきた音楽とは全然違うと感じて。自分の感性を揺さぶられたような衝撃を受けました。それから音楽や楽器に挑戦したいと思うようになったものの、手先が不器用なので楽器はできないだろうと諦めていました。そこで楽器よりもっと簡単にできるものはないかと考えた結果、指パッチンを高速でやったら楽器みたいになるんじゃないかと思い付いたのです。塾には母親が送ってくれていたので、送迎の車の後部座席ですぐに母から指パッチンのやり方を教わって、そこからずっと独学で続けてきました。

――もともと指パッチンが得意だったわけではないんですね。

指男:当時は指パッチンのやり方もいまいちわかっていませんでしたし、1回もできませんでした。サカナクションがいなかったら、いまの僕はなかったと思います。

――TikTokやYouTubeなどの動画で公開しようと思ったきっかけは?

指男:最初はTwitterからでした。この指パッチンがきっかけでテレビに出る機会があり、思いのほか好評だったので発信してみようと思ったんです。それまでは指パッチンで誰かから褒められることなどありませんでしたし、うるさくて迷惑だと言われていたので、まるで自信はありませんでした。あるとき、指パッチンのことで僕がテレビの企画に応募したら拾ってくださって。それが後日、話題になったことで、意外と喜んでもらえるんだと知りました。みんなも注目してくれているし、これを逃したら一生何もないままの人生になりそうだと思ったので、発信し始めました。

――Twitterを始めてから、TikTokに行ったのですか?

指男:そうです。Twitterを始めた半年後ぐらいにTikTokを始めましたが、実はその理由も結構めずらしくて。僕の場合は自発的に始めたわけじゃないんです。当時のTikTokの運営の方が「この動画はTikTok向きだ」とメッセージをくださり、スカウトのような形でTikTokをはじめました。その当時はTikTokを知らなかったので、興味本位でスタートしたんです。

――SNSでの活動歴が長いので、やりたいことや勝算があってはじめたのかと思っていました。

指男:勝算は全くありませんでした。運が良かったなと思っています。

――ギネス世界記録にも挑戦され「片手で1分間に296回」の記録(2016年当時)をお持ちですが、そういうことをやろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

指男:記録に挑戦することに関しては、さきほどのテレビが関係しています。実はテレビ局の方が「こういう記録がありますよ」と見つけてきてくれたんですよ。その点はわりと環境に恵まれていたかなと思っています。僕は記録を作ろうなんて1ミリも思わず、知らずにずっと指パッチンだけをやっていました。そこは本当にもう巡り合わせというか、運が良かったですね。

――バズりたい人が世界中にいる中で、指パッチンをしていたらみんなが見つけてくれるなんて、本当にSNSドリームだなと感じました。反響を聞いて嬉しかったことや、売れてやるぞという意気込みは?

指男:バズってから芽生えました。バズる前は自分に自信がなくて、自分の芸がテレビで取り上げられたとはいえ、そんなに優しい世界ではないだろうと思っていましたので。ネットの世界って、良くも悪くも残酷なところがある。だから始めたとしても最初の1年くらいはうまくいかないだろうなと思っていました。でも、やってみたら一発目からドカンと伸びて、すごくびっくりしたんです。当時はTikTokも現在ほど知名度がなく、ユーザーも少なかったこともあり、早くスタートしたことで有利になりましたね。僕もその波に上手く乗れて、フォロワーさんに見てもらえるようになっていきました。

――指パッチンを極めていく中で、ご自身に起きた変化を教えてください。

指男:これをはじめたおかげで本当にいろいろな人と仕事ができるようになりました。僕の好きな音楽の分野で、ミュージシャンの方とコラボする機会も増えましたし。ナオト・インティライミさんやDREAMS COME TRUEの中村正人さんともコラボさせていただきました。一番大好きなサカナクションの山口一郎さんともTikTokでコラボすることができたりと、夢のような人と一緒に仕事をすることができている。たかが指パッチンだけなのに……。どんなことでも極めることがすごく重要で、継続ほど難しいことはないんだなと改めて感じています。なんだかんだ僕は指パッチンを10年以上やっているのですが、たまたま長く続けていたらいい出来事がたくさん起きましたね。

――最近では「無垢の巨人シリーズ」も人気を博していますね。

指男:もともと『進撃の巨人』が大好きで、アニメのオープニング曲が変わるごとに指パッチンで演奏していました。いまの楽曲「僕の戦争」でも指パッチンをしたいなと思っていたのですが、正直はじめはどんな風にアレンジしたらいいのかわからなくて。そのときに、この不穏なイントロは自分で歌わないと成立しないと思い、歌うことにしたんです。はじめの動画がこんなにバズるとは思ってもみなかったのでびっくりしています。

――なにがバズるか、わからない世界ですよね。

指男:SNSは全てそうだと思います。なにが当たるかわからないというのは、全ての人に平等にチャンスがあるということでもある。でもそれは諸刃の剣で、一歩間違えればすごい凶器にもなる。だからこそ正しく使わなきゃいけないんです。

――アーティストとして指パッチンの音楽性を見てもらおうとしている時に「無垢の巨人の人」というイメージがつくことに葛藤を感じることは?

指男:そもそも人様の楽曲を使用させていただいておりますので、葛藤というものはありませんが、責任は感じています。神聖かまってちゃんからの公認ももらえましたし、ポニーキャニオンさんからも「自由にやっていいよ」と言っていただいているので、ちゃんとやり遂げようという気持ちでやっています。僕がなによりも恐れているのは無関心です。だからアーティストでなく「面白い人」と思われたとしても、僕のことを認知してもらえているだけでありがたい。注目してもらうなかで、アーティストさんとのコラボ動画などから僕の指パッチンを見てもらえたら嬉しいですね。

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