新MacBook Airの登場などで注目 『WWDC2022』の発表は何がすごかったのか
6月7日(現地時間)、米Apple社は開発者会議『Worldwide Developer Conference(WWDC) 22』を開催し、基調講演が行われた。ここでは基調講演で発表されたMacの新機種2モデル、および各OSの新機能について紹介しよう。
WWDCはその名の通り、世界中のAppleプラットフォーム開発者向けの情報発信を行うために開催される、5日間にわたる会議(カンファレンス)だ。今後1年間、またはその先に登場するOSが搭載する新機能が公開され、その機能を利用するための技術情報が開示される。
その開幕を務める基調講演は、新OSのお披露目だけでなく、しばしば新ハードウェアの発表の場ともなるため、世界中から注目されている。過去にWWDCで発表されたハードウェアというと、ボンダイブルーの初代iMac、Intel Macへの移行、iPhone 3G、Mac Pro、Appleシリコンへの移行など、重要な製品も多い。昨年(2021年)はハードウェアの発表がなかっただけに、今年はハードウェア製品への期待が大きかった。
そんなWWDC22の基調講演で発表されたハードウェアが、新型MacBook AirとMacBook Pro 13のアップデート版だった。初代から数えて4回目のフルモデルチェンジとなったMacBook Airは、MacBook Pro 14インチ/16インチモデルと同様に、フルフラットなデザインを採用した。丸く処理された角など、全体的なデザインはiPhoneやiPadとも共通する点が多い。
本体サイズは旧モデルと比べて奥行きが0.26mm増えただけで、フットプリントはほとんど変わらないが、重さは50g軽くなっている。本体ケースの素材はこれまでと同様に100%リサイクルアルミを採用しており、ボディカラーはシルバー、スペースグレイに加えて、新色の「ミッドナイト」(ほぼブラック)と「スターライト」(ほぼプラチナゴールド)の4色展開となる。
ディスプレイは狭額タイプ(Liquid Retinaディスプレイ)となっており、サイズは13.3インチから13.6インチに拡大している。解像度も縦方向の解像度が64ドット増えているが、狭額タイプになったため、FaceTimeカメラがノッチ型で実装されており、それに合わせてメニューバーに食い込む形となっている。FaceTimeカメラ自体も720Pから1080Pへと強化されている。なお、ディスプレイのリフレッシュレートは60Hzで、ProMotionディスプレイ(120Hz)ではない。
前モデルでも好評だったサウンド面はさらに強化され、スピーカーは2ツイーター・2ウーファーの4スピーカー構成となり、空間オーディオを含むDolby Atmos対応となっている。本体は空冷ファンを搭載しないファンレス構成になっているため、音楽を楽しんでいる間にファンの音に悩まされることもない。
インターフェース周りでは、拡張ポート(Thunderbolt/USB4)が2つなのは変わらないが、独立した電源ポートとしてMagSafeが復活している。このため、充電中も周辺機器などを2つ接続することができる。
充電器は30WのUSB-C、または上位モデルに35WのデュアルUSB-Cポート搭載コンパクトアダプタが付属する。さらに67WのUSB-Cアダプタを接続した場合は30分で50%まで充電できる高速充電モードが利用できるという。デュアルUSB-C電源アダプタは新型で、コンパクトタイプと従来型の2種類が選べるようだ。値段は変わらないようなので、好みの方を選べばいいだろう。一般にコンパクトタイプが人気を集めそうだが、使用時の発熱が高いケースもあるので注意したい。
ちなみに拡張ポートのThunderboltは3止まりで、MacBook Proと違ってThunderbolt 4には対応していないので注意が必要だ。実際のところ、USB4はThunderbolt 3を内包した規格なので、USB4ポートx2と表現してもよかっただろうが、互換性があることを表す意味も含めてThunderbolt表記にしているのだろう。
さて、最大の注目ポイントである「M2」プロセッサだが、これはM1プロセッサの正統進化版といった趣だ。製造プロセスは改良が進められた5nm(おそらくTSMCのN5Pプロセス)で、CPUコアの性能は18%向上。内蔵GPUはMacBook Airの場合、7〜8コアから8〜10コアへと拡張され、トータルの性能は35%向上しているという。メモリバンド幅も1.5倍(66.7GB/s→100GB/s)拡張され、メモリ搭載量は最大24GBとなっている。さらにNeural EngineやM.264/HVECビデオデコーダー、ProResビデオエンコーダなどを搭載しており、機械学習やメディア関連のタスクで大幅なパフォーマンス向上が望める。
メモリ搭載量が24GB止まりということで落胆する声も聞かれたが、これはM2を搭載するMacがそこまで重い処理をするためのものではないという割り切りもあるだろう。大抵の処理では24GBもあれば十分だ。それでは足りないという人は、M2でもM1と同様にPro、Max、ULTRAといったバリエーションが登場すると予測される。そうすればメモリはそれぞれ48GB、96GB、192GBまで搭載できるようになるはずなので、そちらを待てばいいだろう。
新MacBook Airはあらゆる面で従来モデルを上回っており、これまで通り高い人気に答えるだけのパフォーマンスを持ったモデルといえるだろう。M1版MacBook Airの下位モデルも13.5万円で併売されるが、3万円の価格差を覆せるだけの魅力は持っている。
もう1つのM2搭載機であるMacBook Pro 13インチモデルについては、搭載プロセッサがM2に変わり、最大メモリ容量が24GB(バンド幅100GB/s)になったこと、拡張ポートがUSB4対応したこと以外には、ほとんど変更がない(MagSafeにも対応していない)。価格を含め、ほとんどの面で新MacBook Airを上回らないのだが、空冷ファンを内蔵しており、高負荷処理時にはファンが回る分、MacBook Airよりも重い処理を長時間行える点は長所だと言えるだろうか。
MacBook Proシリーズはすでに14インチ・16インチという、上位プロセッサを搭載し、デザインも一新された新型モデルが登場している。13インチモデルはプロセッサだけ最新版になったものの、その場しのぎ感は否めない。おそらくこれが最後の更新となるのではないかと予想される。どうしてもMacBook Proでなければならない理由がないのであれば、素直に新MacBook Airを購入したほうがいいだろう。