「フィットネスゲーム」ブームはまだ続く? 世界でコロナ禍以降も定着し続ける背景とは

「フィットネスゲーム」ブームはまだ続く?

 昨今、ゲーム市場において目覚ましい発展を遂げた「フィットネスゲーム」。全世界で約1400万本を販売した『リングフィット アドベンチャー』(任天堂)やボクササイズが手軽に楽しめる『Fit Boxing』(イマジニア)をはじめ、コンシューマー・VRゲーム・スマートフォンアプリ等々、様々なプラットフォームで身体トレーニングを目的としたゲーム作品が次々に誕生している。

リングフィット アドベンチャー 紹介映像

 今年8月4日にはユーザー自身でワークアウトメニューをカスタマイズできる『Let’s Get Fit』(Koch Media)の発売も予定されており、常に一定以上の話題性を保っているフィットネスゲーム。本稿では同ジャンルの人気タイトルを例に取り上げつつ、ヒットの要因を読み解いていく。

35年以上の歴史を持つ体感ゲーム。「身体を動かすゲーム」が当たり前になった現代

 プレイヤーが身体を直接動かして遊ぶ”体感ゲーム”の歴史は、実に35年以上も前に遡る。家庭用ゲームにおけるその代表例が、ファミリーコンピュータ向けに展開された「ファミリートレーナー」シリーズだ。同作はマット型の専用コントローラーを使い、足踏みでゲーム内のキャラクターを操作する仕組みを採用していた。

「ファミリートレーナー」CM Nintendo Switch

 近年になると「Wii」や「Kinect」などの体感ゲームに特化したゲームハード及びデバイスも登場し、体感ゲームの認知度が大きく向上。いまや身体を動かしてゲームをプレイするのは当たり前になったと言っても過言ではないだろう。本稿で取り上げるフィットネスゲームの数々もこの体感ゲームに該当する。

 フィットネスゲームがブームを巻き起こしたのはここ2〜3年の話ではない。”家族で健康”というキャッチコピーを掲げた『Wii Fit』(任天堂)は2007年12月の発売以降、わずか1年ほどで売上300万本を達成。爆発的にヒットしたあと、じわじわと記録を伸ばして約2200万本のソフト売上を叩き出した(任天堂 株主・投資家向け情報)。同作に付属していた「バランスWiiボード」を指してギネスワールドレコーズが”世界一売れた体重計”という認定を与えたことからも、『Wii Fit』がもたらしたフィットネスゲームの隆盛が凄まじかったことがうかがえる。

 一方、ここ数年におけるフィットネスゲームの流行はやや事情が異なる。と言うのも、2020年初頭から現在も続く”コロナ禍”と密接な関わりがあるからだ。

フィットネスゲーム隆盛のトリガーは”巣ごもり需要”

 新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中へ広がり、我々の日常生活は類を見ないほどの激変を迎えた。感染を抑えるための外出自粛が求められ、ロックダウン(都市閉鎖)の末に街から活気が消えることも珍しくなくなった。そうしたパンデミックの最中、自粛生活に伴う”巣ごもり需要”の増加がトリガーとなり、ゲームソフト産業は全体的に売上が増加。とりわけ顕著だったのが2020年3月発売の『あつまれ どうぶつの森』で、人々のコミュニケーションが希薄になったパンデミック下においてマルチプレイの価値が好評を博し、全世界でソフト売上3864万本という驚異的な成果を見せた(任天堂 株主・投資家向け情報)。

 こうした動向はフィットネスゲームの事例にも大きく当てはまる。国内外を問わず、2020年度は外出自粛の要請にともなって自宅で余暇を過ごす人々が大きく増えた。ゆえに自宅で安全に楽しめる娯楽手段として、動画配信サービス等と同じようにビデオゲームの注目度が一気に高まった。そして「自宅で身体を動かしたい」「自粛生活に伴う運動不足を解消したい」という人々の欲求が徐々に目立ち、楽しく遊びながら身体を動かせるフィットネスゲームに注目が集まったのだ。

リングフィット アドベンチャー CM おうち時間篇

 その筆頭たる『リングフィット アドベンチャー』は2019年10月発売だが、興味深いことに、コロナ禍が本格化してからソフト売上に際立った変化が生じている。2018年発売の『Fit Boxing』も同タイミングでソフト売上を伸ばしており、2020年12月には続編である『Fit Boxing 2』を発売。『Wii Fit』の発売時と異なるブームの様相を現在進行系で見せている。

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