現実世界を"一時停止”できる? マルチタスクを可能にする「Asynchronous Reality(非同期現実)」とは

「Asynchronous Reality(非同期現実)」とは

 私たちは忙しい。デスクで集中して仕事に取り掛かりたいのに、あれやこれやと邪魔が入って思うように進まない。そんな時、「時間の流れを止めることのできるミュートボタンがあったら」なんて考えたことはないだろうか?ハリウッド映画の夢物語のような話だが、この技術が近いうちに実用化されるかもしれない。

 スイスのチューリッヒ工科大学コンピューターサイエンス学部のAndreas Rene FenderとChristian Holzが開発した新しいテクノロジー「Asynchronous Reality(非同期現実)」は、現実世界を一旦ミュートすることを可能にする。もちろんその間にも現実世界で時は流れているのだが、現実世界の中断中に周囲で起こった出来事は、後からVRで再生可能。ホログラムのボイスメールみたいなもの、と考えてほしい。

Full scenario: a work day with an Asynchronous Reality

 FenderとHolzは、JoeとAnnaという2人の人物を用いたシミュレーションでアイデアを実証した。1人がVRでゲーム用の3Dオブジェクトを操作し、もう1人はアクションフィギュアを作るため3Dプリンターを使わないといけないという設定だ。

 Joeはディスカッションのために仮想ツールでAnnaに連絡を入れる。しかし、期限までにゲームを完了するために、Joeは「フォーカスモード」をオン。現実世界をミュートし、現実世界の要素に煩わされることなくVRでタスクに集中できるようになる。

 途中、AnnaがJoeのオフィスに入って3Dプリントされたオブジェクトを彼の机の上に置いていくが、Joeは仮想ワークスペースに没頭して気づく様子もない。Annaも、Joeの作業を中断せず、代わりにホログラムボイスメールを残す。Joeはタスクが完了してから、その間に起こっていたことを確認する。非同期リアリティによって、一人称視点でその瞬間を追体験ができるというわけだ。

 現代社会において、人々はマルチタスクを常に求められ、その結果、一つのことに集中するための方法を模索している。現実の世界を「ミュート」し、自分の裁量で過去のやりとりを追体験できるとしたら、それは現代の労働生産性に革命をもたらす可能性がある。

 「Asynchronous Realityの場合、従来のボイスメールと異なり、3Dと空間で、実際に起こったこととほぼ同じように起こったことを追体験することができる」とHolz氏は説明する。電子メール、ボイスメール、チャットなどのすべてのタイプの非同期型のメッセージを、没入型の視覚化されたエクスペリエンスに結合することで、過去に発生したイベントでも、現在ここで発生しているという錯覚をユーザーに与えるのだ。

 HolzとFenderはまた、複合現実技術と、複数台の3Dデプスカメラを利用し3D形状とテクスチャを観察。時空間モデルに基づき、オブジェクト、人、テーブル、テーブル上のオブジェクトなどを動的にセグメント化し、行動と動きをリアルタイムで追跡できるため、ユーザーはすべてをライブで体験することも可能だ。

(source)
https://vrscout.com/news/hologram-voicemails-are-here-thanks-to-asynchronous-reality/
https://www.youtube.com/watch?v=maEDwbLtTBY

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