『ゼルダの伝説 時のオカリナ』、なぜ“ビデオゲームの殿堂入り”に? ゲーム業界の歴史を変えた「革新性」とは

 2022年5月、アメリカ・ニューヨークのストロング国立演劇博物館は、同館が定める「世界のビデオゲームの殿堂」に『ゼルダの伝説 時のオカリナ』(以下、時のオカリナ)が登録されたことを発表した。

 2015年に始動した世界のビデオゲームの殿堂には『スーパーマリオブラザーズ』をはじめ、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』に『マインクラフト』等々、ゲーム業界や大衆社会に多大な影響をもたらしたマスターピースたちが名を連ねている。

 では、今回殿堂入りを果たした『ゼルダの伝説 時のオカリナ』は、一体どのような部分が世界的に評価されたのか。本稿では改めて同作に着目し、その革新性や魅力について体験談を交えながら振り返る。

ゼルダの伝説 時のオカリナ プレイ映像

アクションゲームの歴史を変えた「Z注目」システム

 1998年11月21日にNINTENDO64用ソフトとして発売され、全世界で760万本ものセールスを達成した『ゼルダの伝説 時のオカリナ』。同作は、いまなお展開が続く「ゼルダの伝説」シリーズはもとより、半世紀近いビデオゲームの歴史に残る傑作だ。その証左と言わんばかりに、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』は発売間もない頃からゲームユーザー並びに批評家たちを唸らせ、文化庁メディア芸術祭や日本ゲーム大賞など、数々の祭典で名誉ある賞を獲得してきた。

 なかでもゲーム業界全体にインパクトを与えたのが、作中における特殊な(いまでは普遍的だが)ロックオンシステム。いわゆる「Z注目」と呼ばれ、コントローラーのZボタンを押すことで「即座に視点をキャラクターの背後へ戻せる」ほか、「フィールド内の対象物(オブジェクト)にワンボタンで視点を合わせる」ことができる。

 Z注目を使えばプレイヤー側で視点を細かく調整せずとも、ゲーム側で対象物を素早くロックオンしてくれる。この仕組みは常にカメラ視点の問題(コントロールの難しさ)を抱える3Dアクションゲームにおいて、まさしく画期的な大発明といえる。フィールド内の看板を読む・町の住人から情報収集を試みる・襲いかかってくるモンスターを返り討ちにする……などなど、Z注目はシチュエーションやプレイヤーのゲーム習熟度に関わらず、一定の効果を発揮する優れものだった。

 当時の制作事情について、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の開発者は「ボタン一つで正面の敵を捉える仕組みが欲しかった」とコメント。そして最終的には京都の太秦映画村に赴いて取材を行い、”時代劇の殺陣”を見学してZ注目の発案にまで至ったそうだ(「社長が訊く『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』」より )。

 この言及通り、作中の戦闘時にZ注目を使うと、敵キャラクターが複数体いたとしても、1体ずつおびき寄せて戦うことができる(例外を除く)。

 それまでのシリーズ作品と異なり、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』では時代劇のチャンバラのごとく、リンクが激しい剣戟に身を投じる姿が生き生きと描かれ、「ゼルダ」の戦闘シーンを形成するうえで礎となっていった。やや大仰な言い方になるが、Z注目はシステムとビジュアルの両面でゲームチェンジャーになったのだ。

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