特集「プロゲーマーになる方法と、そのセカンドキャリアについて」(Vol.3)
FPSで日本のチームが世界一になるための“目的意識”ーーREJECTチーム運営部長・YamatoNと考える「プロゲーマーのセカンドキャリア」
チームの「文化」を創り上げていくという使命
――『Overwatch』部門での選手活動終了をもって競技シーンから離れ、ストリーマーとして活動していくことになったYamatoNさんですが、その当時の心境を振り返っていただけますか?
YamatoN:プロゲーマーを引退することについては、とくにこれといった感慨は浮かばなかったです。
……というのも、僕の目標はメジャーなゲームタイトル、とくにFPSタイトルで日本のチームが世界一の座に着くことなんです。そしてその目標を達成するにあたっては、自分自身が競技者ではなくてもいいとも当時から考えていました。
――日本が世界の頂点に立つことを至上の目標と考えるようになった、その原点にあるのはどのような想いだったのでしょうか?
YamatoN:やはり、僕自身が『CrossFire』の現役選手時代に、あと一歩のところで世界一に手が届かなかったという経験をしていることが大きいと思います。
自分が本気で世界一を目指していたからこそ、現在進行形でがんばっているプレイヤーたちのために、力になりたい。
そして、日本のチームが世界一になることによって、eスポーツが日本国内でもっと大きな産業になるとも考えています。
――プロゲーマーにおけるセカンドキャリア構想という観点から見ても、YamatoNさんほど現役選手時代から大局を見据えて行動されてきた方はほかにいないと感じます。こうした視座はどのようにして得られたものなのでしょうか?
YamatoN:僕は、本気で世界一を目指そうと考えたときに、世界一を目指せるだけの(練習)環境づくりや、そのためのスポンサー探しなどを独力でやり続けてきました。
そうしたなかで、さまざまな分野の方とお話しする機会を得られたことが、このような考え方を持つきっかけになったのでは、と思います。
おかげさまで、自分の最大の目標は何か、という部分をはじめ、その目標を達成していくにあたり、自分自身が選手ではなくてもモチベーションが保てる、ということにも気が付くことができました。
――現在の“REJECT”チーム運営部 部長というお仕事は、ある意味、ご自身のこれまでの経験の集大成的な内容と言えるのでしょうか。
YamatoN:はい、基本的には、これまでやってきたことを変わらずやり続けている、という感覚です。
“REJECT”というチームには優秀な社員が多く、とくに組織外部に働きかけていく能力は非常に長けています。しかし反面、内側の基盤については、まだまだこれからという部分もあります。
だからこそ、eスポーツシーンに長く携わってきた僕のような人間の知識が必要とされたわけです。現在は、チーム運営に限らず“eスポーツ”というワードに関係するすべての業務に携わっているような状況です。
――それだけ、業務内容は多岐にわたると。
YamatoN:はい。たとえば、チームスポンサーである、ゲーミングデバイスメーカーさんとの打ち合わせに出席すると、そこでよく「選手にどういう風に紹介してもらったら伝わりやすいか」という話題が挙がるんですね。
そこに選手経験のある僕のような人間がいれば、「選手としては短期間しか使えていないデバイスを紹介するのは難しいだろうな」、「それなら選手たちにデバイスを触ってもらう機会を作り、それ自体をイベントにしてしまえばいいのでは?」といった発想が出てくるわけです。
あとは、最近だとゲーム大会の公式ミラーリング配信が話題になっていますが、そうした手法をさらに発展させて、チームを応援するミラーリング配信を行って、それをきっかけにeスポーツ観戦の楽しみかたを知ってもらい、広めていく……といった取り組みも行っています。
日本のプロゲーミングチームは、自分のチームを応援する姿勢を見せていく部分がまだまだ足りていないと感じているんです。
“REJECT”としても、eスポーツの魅力を広めていく活動や、eスポーツ競技シーンの観戦の楽しさを伝えていく活動には十分取り組めているとは言えません。ですので、現在はそうした取り組みに注力しているチームであると認識してもらえるよう、さまざまなアプローチを積み重ねている最中です。
さきほどお話した応援配信に関しても、各ゲームタイトルに紐付いたゲストを弊社の “REJECT GAMING BASE”にお招きするなどし、人と人とを繋げていきながら配信の場そのものをコミュニティとして昇華させていきたい。そうしたコミュニティを持つことが、ゆくゆくは“REJECT”ならではの“文化”と呼べるものになると思っています。
――つまり、“REJECT”のチームカラーとしての「文化」を創り上げていくことが、現在のYamatoNさんの使命なんですね。
YamatoN:「“REJECT”は、常にこういうことをやっているよね」という核になるものを打ち出していきたいんです。
「“REJECT”はeスポーツ観戦配信を自社のゲーミングベースで行っている」、「“REJECT”は大会後に、選手たちが試合の振り返り配信を行っている」、「“REJECT”は応援しているファンに対してきちんと情報を発信してくれる」……そんな風に言ってもらえるようになることが、ひとまずのスタートかなと思っています。