『Apex Legends Mobile』は、成功例の少ない“モバイル化”のモデルケースとなれるか

 4月8日、『Apex Legends Mobile』iOS版の事前登録がスタートした。

 2019年のリリース以来、3年以上にわたり、人気タイトルの地位にとどまり続けている『Apex Legends』。本稿では、モバイル版の発表・事前登録開始を入り口に、CS/PCゲームのモバイル化について考えていく。

 インターフェースの違いから、バランス調整が難航してきた対人ゲームのマルチプラットフォーム化。『Apex Legends Mobile』は、そのモデルケースとなれるだろうか。

『Apex Legends』モバイル版が3年越しのリリースへ秒読み段階

Apex Legends Mobile: Pre-Registration Trailer

 『Apex Legends Mobile』は、人気FPSバトルロイヤル『Apex Legends』のモバイル版だ。2019年、発売元であるElectronic Artsが同年の決算報告書にて存在を明らかにして以降、多くのプレイヤーたちから注目が集まっていた。開発とリリースが正式に発表された2021年4月には、Android端末を対象にしたクローズドβテストがインドとフィリピンでスタート。その後は、インドネシアやペルー、コロンビア、エジプト、レバノンまでテストの対象地域を拡大するなど、着々とローンチへのステップを踏んできた。今年3月には、Androidを対象にした事前登録が始まるとともに、世界10か国(オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、メキシコ、ペルー、アルゼンチン、コロンビア)で待望のローンチを迎えている。

 Electronic Artsによると、『Apex Legends Mobile』には、CS/PC版にないマップやプレイモード、コンテンツが実装されるという。UI・UXもモバイル端末向けに最適化されているとのこと。本家とはまた別のゲーム体験が可能となりそうだ。

『Apex Legends Mobile』は、モバイル化のモデルケースとなれるか

 これまでPlayStation4、Xbox One、Origin、Steam、Nintendo Switchと、さまざまなゲーム機やプラットフォームで展開されてきた『Apex Legends』。3月30日には、PlayStation5、Xbox Series X/Sでもリリースされており、今回のモバイル版が正式ローンチに至れば、普及する現行のプラットフォームすべてに対応することになる。

 『Apex Legends』においては、対応ハードの拡大によってプレイヤーの裾野が広がるたびに、それぞれの仕様差などに起因する有利・不利の議論が頻繁に巻き起こってきた。昨年9月以降の「タップストレイフ」削除を巡る一連の動きは、同タイトルのプレイヤーなら誰もが知るところだろう。近づく『Apex Legends Mobile』のリリースを前に気になるのは、やはりこうした動向についてだ。調整によるプラットフォーム格差の均衡化と、各プレイヤーの利害は相反する要素である。たったひとつの正解が存在しない議論の落としどころをどこに見出すか。運営にとっては大変に悩ましい問題であるはずだ。

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 実は『Apex Legends Mobile』は、CS/PC版とは別のシステムを持つ作品になると発表されている。そのため、他プラットフォームとのクロスプレイには対応せず、モバイル版のプレイヤーのみで社会が構成されていくようだ。つまり、同タイトルは、『Apex Legends』から派生した作品ではあるものの、両者の間に深い関係性はなく、世界観や大枠のゲーム性のみをともにした新規タイトルであると言える。シーンの盛り上がり、混迷を極めるプラットフォーム間のバランス調整などに対し、運営の出した結論がこうした形だったのだろう。

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