『The VOCALOID Collection』特集

野田クリスタル × syudouが語り合う 「爆笑」とお笑い&音楽をめぐる二人の創作論

ポップスとお笑いの共通点。シンクロする二人の“創作論”

――4分間の芸術として、ありとあらゆるキャッチーなフレーズを盛り込み、そのなかにハイコンテクストなものも織り交ぜ、聴く人・見る人がそれぞれに自分のこととして解釈するという意味では、ポップスとお笑いは似ていると言えるのかもしれません。

野田:尺が似ている、というのは大きいかもしれませんね。あと、ネタの作り方や芸人のやり方と似てるなと思うのは……「いいこと」ってお笑いになりづらいんですよ。日常で嫌なことがあったときが一番ペンが進んだりする。それは音楽もお笑いも同じなのかな、と思いました。日常であった「いいこと」なんてトークにもネタにもなりようがなくて。だからこそ、芸人をやっていると日常に嫌なことがあっても、逆に心が休まったり、それが出せるという意味で、この仕事の強みがあるなと考えていたんですが、作り手の方によっては音楽もそれに近いんだなと、いま話していて思いました。

syudou:いろんな音楽の作り方があるとは思うんですけど、僕は割と自分が経験したことや、体重が乗ってることじゃないと響いていかないと考えていて。カッコつけて作ってる時期もあったんですけど、全然誰も聴いてくれなくて、どこかで覚悟を決めて「恥ずかしくてもダサくてもいいから自分の体重が乗ったことをやろう」と決めてから軌道に乗り始めたんです。だから、「うっせぇわ」以降の世間からの注目に関しても、もちろん辛くもあるんですが、どこかで「美味しい」と思っている部分もありました。

 ただ、音楽は「面白さ」「感動」「高揚」など、どこに出口を置くかを決められると思うんですけど、お笑いは絶対に「笑い」を出口にしなければいけない難しさがあるのかなと。なのにあれだけ緻密に作り込んでそれを表に出さないし、なんなら緻密さの欠片もないように振る舞っているのに、その4分には人生が掛かっている。それが本当に痺れるんですよ。

野田:見方が格好いい。そうやって見てくれて出来た曲を聴いて痺れた人が、また別の音楽なり表現を思いついて、連鎖していくのかもしれませんね。

――「嫌なことのほうがペンが走る」「恥ずかしくてもダサくてもいいから体重が乗るものを」というお二人のスタンスはどこか近いものを感じますね。

syudou:ラジオ好きであることも影響しているかもしれませんが、お笑いのラジオって、不幸話がどうしたって面白いんですよ。報われない愚痴みたいなのが本当に面白くて、そういうのへの憧れもあるのかもしれませんし、立川談志さんのいう「業の肯定」をやってきた文化というのが背景にあるからこそだと思うんです。野田さんはパーソナリティとして「こういうラジオが好き」というものはあるんですか?

野田:元々ラジオをそこまで聴いてこなかったので、自分たちの番組が始まることについては、結構な怖さがあったんです。芸人としてのスタイルも基本的に隙間産業というか、やってないことをやるというスタイルを取ってきたんですが、ラジオについてはなにも知らないから、なにが「隙間」なのかわからなくて。最終的に開き直って、いまはなにも作戦を立てないナチュラルな状態でやってます。

 でも、ラジオはマイクが近くて嬉しいですね。声質的にあまり通らないタイプなので、大きい舞台になると喋らないことがあるんですよ。だから吐き出せてないことが多かったんですけど、それがラジオで届くな、とは思いました。

syudou:人によっては毎週エピソードトークを作ることに大変さを覚えている人もいると思うんですが。

野田:僕は基本的に、村上がどういうリアクションになるかを考えて話すだけですね。こっちだけで突っ走ってしまうと、1パターンになるし苦しいと思うので。毎回「今週は失敗してもいいか」とか「もしかしたらなにも喋らないかもな」とか「盛り上がらずに終わるかもな」と思いながらニッポン放送に入ってますよ。でも、現場では意外にそっちの時の方が良かったりとかするし、やってることは基本“遅延行為”なんですよ。オープニングの一個の話題を広げまくって、ゴリゴリにフリートークを削ったりする。最初に作家さんが用意してくれるニュースを広げに広げて最後まで行ったりするわけですから。

syudou:そこがラジオの面白いところでもありますよね。『すべらない話』みたいに短くエピソードを固めて、というのも面白いと思うんですが、自分がラジオの楽しさを感じるのは本線から逸れていく瞬間なので。アルピー(アルコ&ピース)さんはそれが絶品で、聴き終わったときに「結局、内容なにもないじゃん(笑)」となるけど、めちゃくちゃ面白くて次も聴いちゃう、みたいな。

――たしかにマヂラブさんの『ANN0』は、リスナーさんからのメールで縦軸が構成されていくことが多いですね。

野田:僕も村上も芸能の話題に疎いので、ニュースを見ても知らない人がよくわからないことをやってるなーと諦めるときもあるんですけど、お互い脱線する前提で話し出したりしますからね。それこそ「うっせぇわ」じゃないですけど、あの曲のテンションみたいになるときがあるんですよ。芸人内では「スベリーズハイ」って呼んでますけど、滑りすぎて「知らねえよもう!」となる。

――どうにでもなれ、と(笑)。ラジオでは黎明期のニコニコ楽曲・ボカロ楽曲もよくチョイスしていますが、最近の楽曲にも興味はあるのでしょうか。

野田:2021年は本当になにもできていなくて、インプットがゼロの1年間だったんですけど、最近は合間を見つけて聴いたりしています。本当はもっといろんな曲を流したいんですけど、流せないんですよ。この前も「春だし卒業シーズンだから、haluyosyさんの『桜ノ雨』」って言ったんですけど、5分前に「すいません。『桜ノ雨』の販売元がわからなくて駄目です」と言われて。「え、じゃ、じゃあ『もってけ!セーラーふく』で」と咄嗟に出た曲を流してもらったんです。たまにメジャーなアニソンが流れたら、「ああ、直前で駄目って言われたのかな」と思ってください。

――新しい聴き方ができるようになりました。

syudou:やっぱり許可取りが大変なんですね……。作ってる人たちは流して欲しい人が圧倒的に多いと思うので、ちょっとむず痒いですね。

野田:逆に、初期のボカロ曲は流せることが多いんですよ。「みくみくにしてあげる♪」や「メルト」とかはまさにそうでした。もしかしたら粗品(霜降り明星/『霜降り明星のオールナイトニッポン』を担当)も同じ目にあってるかもな……。これまではボカロ曲というかネット文化の流れで曲を選んできた芸人なんてあまりいなかったと思うから、まだシステムが追いついてないような気がします。でも、いまの若い子たちやアイドルと話してると、マジで「ニコニコ動画をめっちゃ観てました」と言われることも増えてきたので、テレビもラジオもそのあたりは準備しておいたほうがいいのかもしれない。

syudou:昔に比べたら分かりやすくはなったとは思うんですけど、それでもまだ大変なんですね……。

【後編:『うっせぇわ』のヒットと『M-1』優勝で「社会人になった」 野田クリスタル × syudouが明かす、“ブレイク後の壁”へ続く】

■イベント概要
『The VOCALOID Collection ~2022 Spring~ Supported by 東武トップツアーズ』
開催日時:2022年4月22日(木)~25日(月)※22日は前夜祭
開催場所:ニコニコTOPページなどのネットプラットフォームほか
公式Twitter
公式サイト
協賛:東武トップツアーズ株式会社、白夜極光
※VOCALOID(ボーカロイド)」ならびに「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。

『ニコニコ超会議2022 Supported by NTT』
日時:2022年4月23日(土)~30日(土)
   ┗ネット:4月23日(土)~30日(土)
   ┗リアル:4月29日(金)10時~18時、4月30日(土)10時~17時
主催:ニコニコ超会議実行委員会
会場:リアル開催:幕張メッセ / ネット開催:ニコニコ公式サイト・総合TOP
ニコニコ超会議 公式サイト
Twitter公式アカウント
テーマソング:「しろくろましろ」
作詩・作曲:松岡充/歌:「シロクマ」小林幸子×松岡充

■ライブ情報
syudou Online Live 2022「狼煙」
配信日:2022年5月3日(火・祝)19:00予定
アーカイブ配信:2022年5月6日(金)23:59まで
配信プラットフォーム:PIA LIVE STREAM
チケット料金:¥3,500(税込)
チケット販売日程:2022年2月25日(金)~5月6日(金)20:00

■リリース情報
syudou
最新配信シングル「たりねぇ」

■関連リンク
野田クリスタル 公式Twitter
野田クリスタル YouTubeチャンネル【野田ゲー】
syudou Official Site
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