終わり、始まり、あるいはウソーー怒涛の勢いで駆け抜けていった“バーチャル”界隈における年度の節目

“バーチャル”界隈における年度の節目

 怒涛の一週間だった。年度末と年度始め、そしてエイプリルフールにより、バーチャルな界隈にはとてつもない数の出来事が吹き荒れた。そして、ピックアップするにもなかなかに骨が折れるほど、インパクトの大きなイベントであふれていた。

 まずはVTuber関連の動きを(ある程度厳選して)列記していこう。

・声優の石黒千尋がVTuberデビュー
・ホロライブの新人スタッフ・春先のどかが登場
・Re:AcTより新人3人がデビュー。うち一人は別グループからの転籍
・「ぱかチューブっ!」にスマートファルコンが出演し、譜久村聖(モーニング娘。'22)と共演
・バーチャル美少女ねむ、NHK「阿佐ヶ谷アパートメント」出演決定
・ホロライブ・星街すいせいとTAKU INOUEの新プロジェクト「Midnight Grand Orchestra」発表
・宗谷いちかが「有閑喫茶あにまーれ」を卒業し、774 inc.直属に
・いろどり芸能郵便社が終了し、所属VTuberはブシロードクリエイティブ所属に
・にじさんじ・童田明治が活動終了を発表

 新展開もあれば、年度末に一区切りつける動きも見られた。特に、にじさんじの童田明治は、ユニバーサルミュージック所属アーティスト「Rain Drops」としても活動してきた一人であり、その活動終了は大きなインパクトだ。一方、宗谷いちかの件は「同じ運営会社内での所属転換」というレアケースになる。アーティストとしても、尖った企画屋としても才覚がある彼女が、ソロで活動を継続するという選択を取ったのは、業界全体で見てもユニークと言えるだろう。

【VTuberデビュー】石黒千尋、動きます!新背景もお披露目!【#新人VTuber】

 VOICEROID「結月ゆかり」の音声ライブラリ提供者である、声優の石黒千尋のVTuber(Voice YouTuber)デビューは話題になった。もともとイラスト付きで配信をしていたので自然な流れではあるが、バーチャルキャラクターの声をあてた人が自らバーチャルな身体を得て活動を始める流れはとても興味深い。

【4月1日】新卒で入った事務所の闇がヤバすぎる……【#ホロ入社式】

 春先のどかは、ホロライブの名物スタッフ・友人A、ホロスターズマネージャー・大道シノヴに続く、バーチャルな肉体と名義を持つバックスタッフとなる。スタッフにある種のキャラクター化を施し、親近感を持たせる施策も、いまや各所で見られるようになった。こうした動きがさらに広まるかどうか、注目したいところだ。

 そして、メタバースをめぐる展開もかなり多く見られた。これも列記してみよう。

・「ガンダムメタバースプロジェクト」が発表
・NTTドコモがメタバースプラットフォーム「XR World」をオープン
・「電音部」がメタバース空間「バーチャル秋葉原」を期間限定オープン
・VRChatに「【JP】Virtual Dotonbori in OSAKA」「メタバースWith代官山 蔦屋書店」がオープン
・バーチャル即売会「メタフェス」開催発表

 「ガンダムメタバースプロジェクト」は一大IPを題材としたメタバース企画であり、「XR World」はNTTドコモという大手企業が手掛けるメタバースプラットフォームだ。これほどの規模の企業やIPも参入するほどに、「メタバース」という概念が注目されているのが2022年と言えるだろう。ただし、「XR World」は「空のハコ」がプレオープンしたところ、と言うのが正確なところだ。

 一方、大企業主導のメタバースに対し、ユーザー主導のメタバース筆頭である「VRChat」では、大阪の道頓堀と、東京の代官山にある蔦屋書店が建った。

 「【JP】Virtual Dotonbori in OSAKA」は、大手組織がローンチした「バーチャル道頓堀」ではなく、VRChatの有志ユーザーたちが作った「バーチャル道頓堀」だ。ユーザー制作とはいえ、そのクオリティは企業が作ったものと並び立つレベルだ。「違反切符の切られた自転車」など、細かな大阪の要素まで再現された空間は、むしろユーザー主導だからこそ生み出せる賜物だろうか。

 また、「メタバースWith代官山 蔦屋書店」は、バーチャル美少女ねむ『メタバース進化論』の出版記念イベントを開催するべく、現実の代官山 蔦屋書店とのコラボレーションで生み出されたワールドだ。本家を模した「おしゃれな本屋」には、実際にページをめくって読める本が置いてある。立ち読みしている感覚は、実際の本屋に近いものだった。

 現在のメタバースに関するトピックは、企業主導の取り組みも、ユーザー主導の取り組みも、渾然一体となって飛び交っている。そしてそのルーツも、ソーシャルVR、Web3.0、あるいは既存のWebプラットフォームの延長など、様々だ。坩堝じみたそのあり方は、2018年のVTuber黎明期を、個人的に思い起こさせる。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる