【意外とわかっていないテクノロジー用語解説】
動画やゲームの世界で耳にする『ストリーミング』とは?
・動画ストリーミング
最初にストリーミングメディアとして定着したのは動画配信だ。ストリーミング配信の嚆矢となったのは、1995年に登場した米リアルネットワークス社の「RealAudio Player」だ。当初は音声だけだったが、36Kbps前後の低速なモデム環境でも十分聞き取れるレベルの音声をストリーミング再生できるものとして人気を集め、同時に「リアルタイム配信」というサービスが誕生した。
やがて音声に加えて動画(RealVideo)を扱えるようになり、回線の高速化に合わせて動画の品質も向上していく。競合する規格であるQuickTimeやWindows Mediaもストリーミングに対応し、アップルなどがイベントをリアルタイムで動画配信するようになったことで、こうした配信を支える高速バックボーンを提供する米AkamaiなどのCDN(Contents Delivery Network)が注目されるようになるのも、この頃からだ。
初期の動画配信サービスはサービスごとに採用する方式が異なり、それぞれの再生用プラグインをインストールしてブラウザで見るというスタイルが中心だった。これがAdobe Flashを使ったものになるのは、2005年に登場したYouTubeの影響が大きい。動画共有サービスというスタイルは著作権問題も引き起こしたが、圧倒的な利用者数、そして登場後まもなくGoogle傘下になることで企業的体力も付き、世界的な人気サービスとして定着した。
現在はAdobe Flashの代わりにHTML5プレーヤーが使われるようになり、対応ブラウザさえあればプラグインを使わずに試聴できるようになった。さらにスマートフォンや携帯ゲーム機、スマートテレビなども再生可能になり、重要なインフラとして機能するようになっている。
・音楽ストリーミング
最近多いのが、Apple MusicやAmazon Unlimited Musicのような、音楽の聴き放題サービスを「ストリーミング」と呼ぶ例だ。こうしたサービスは音楽をストリーミング形式で配信し、ローカルにファイルを残させないことで、違法コピーなどの著作権侵害を起こさないようにしている(ただしサービスによっては著作権保護機能付きのファイルをローカルに保存できる場合もある)。
音楽ストリーミングの利点は聴き放題という料金面での安さだが、実際には通信時にパケットを消費しており、モバイル回線では使いすぎに注意したい。もっとも、携帯電話キャリアによっては特定の音楽ストリーミング通信を無料にしているが、これは音楽ストリーミングが比較的低い(256kbps前後)通信容量しか必要としていないことも大きい。もし必要な容量が数倍になるハイレゾ対応ストリーミング配信が主流になってきた場合、現在のように使い放題のままでいられるかは微妙なところだろう。
・ゲームストリーミング
ストリーミング分野において最も新しいのが、ゲームストリーミングだ。ゲームは非常に高いハードウェアスペックを要求する分野なので、低スペックの端末では遊ぶことが難しい。しかし現在、ローエンドなハードウェアでも、動画ならスムーズに再生できる程度の性能は持っている。そこで、ゲーム自体はサーバー側で実行し、その結果を動画としてプレイヤー側のコンピュータに表示するという仕組みだ。これなら、高速な回線と動画をスムーズに再生できる性能があれば、低スペックなコンピュータでも、ハイエンドゲームを快適に楽しむことができる。
ゲームストリーミングではNVIDIAの「GeForce Now」などがサービスとしてスタートしており、スマートフォンやタブレットでもハイエンドなグラフィックを楽しめる。GeForce Nowの場合、ゲーム自体は自分で購入するなどしておき、サービス側にインストールするかたちとなるが、サービスによっては用意されたタイトルが遊び放題な場合や、リストから選んで購入する(そのサービス専用となる)場合もある。
ゲームストリーミングでは特に遅延の少ない通信方式を採用しているが、とはいえどうしても遅延は免れ得ない。このためFPSなど、フレーム単位での遅延が命取りになるゲームには向いていない。比較的リアルタイム性が低いゲームが中心になるが、そうするとそこまで高い性能が求められることも少ない。この辺りのバランスがゲームストリーミングの難しいところだが、同時にこの問題を解消できるタイトルが登場すれば、サービスの普及につながるだろう。