ホラーでミステリアスなVTuber にじさんじ・ましろが放つ「異色の存在感」
配信頻度はもともと乱れがち、ソロ配信が多いというと、彼を慮ればもっと積極的な活動をしてほしい!多くの配信者と触れ合ってほしい!と言う声があがるだろう。
先にも述べたようにここ1年ほどで以前に比べるとユーザーと向き合う時間が増えてきたわけだが、むしろこういった『他人と間の空いた距離感』は彼の孤高さを印象付ける演出のように機能していることに注目したい。
2021年7月10日には3Dお披露目配信を行なったが、通例1時間ほどの配信となるはずが30分ほどで終了し、自身と仲の良いタレントをゲストとして呼ぶこともなかったこの配信はまさに異例かつ異端、他のにじさんじメンバーの3Dお披露目配信とは一線を画す内容として視聴者を引き込むことになった。
悪夢にうなされてガバっと起きるシーンから始まり、ひと一人が入っていそうな大きい袋を引きずりながら、森へ、駅へ、薄暗い場所を歩き続け、スコップで掘った穴にズタ袋を埋めようとすると...…というホラーな内容だったのだ。BGMにはクラシックが流れ、寂しさを引き立てるものになっている。
しかもこの配信は収録したものではなく生配信で1人で演技していたといい、あくまで一つのストーリーラインをうまく伝えきるために、他のライバーも呼ぶこともなく、リスナーとのコミュニケーションも最小限に留め、自身の世界観を広げることに成功した配信となったのだ。
生配信時には歌を披露しており、現在アップされているアーカイブ動画では当該部分がカットされているが、むしろカットされているほうが動画として完成度がより良いと思える。ほかのにじさんじメンバーらとは大きく趣きを異にする活動ペースとその内容は、ミステリアス・孤独・恐怖といった感情や心象を呼び起こし、バーチャルタレント・ましろにこびりついているのだ。
そんな彼がうたってきた数少ない歌ってみた動画やカバー動画は、切羽詰まった心象を色濃く描いた楽曲をチョイスしている。中性的な声がクリーンな質感からザラついた質感へと自然と変わっていく独特な声で、息がつまりそうなほどのヒリヒリした緊張感や切迫感を伝えてくる。
来栖夏芽、奈羅花、ましろの3人は、2021年からお互いが多忙になったことやそれぞれの配信内容やスタイルなどが固まってきたことも影響し、3人でのコラボ配信はほとんど無くなってしまっている。そこに一抹の寂しさを感じるファンも少なくないだろう。
だが、ライトノベル作家としてデビューを果たした文芸家、FPSを通じて様々なストリーマーやVTuberらと共にドラマを見せてきたゲーマー、にじさんじのなかでもホラー&オカルトを好むミステリアスな存在。キャラクターがまったく違いながら「バラバラでありながらも繋がっている」という距離感は、にじさんじらしさを強く感じさせてくれる3人組なのだ。