西川貴教が語る「ライブ配信」の可能性 ~アーティスト、経営者の目線から紐解く新しいエンタメの形~

アーティスト・経営者として西川貴教がライブ配信に期待すること

──西川さんはアーティストとしての視点と同時に、経営者としての視点も持っている稀有な方です。そんな方から見た、「17LIVE」に期待する点はどういったところでしょう?

西川:ギフティングに関して本当に可能性として言うと、「17LIVE」の配信だけで生活できる人が出てくるようになると面白いんじゃないかなと。例えば、個人の配信にCMを打つことで収入を得られるようになるとか。

──ああ、なるほど。

西川:僕は早い段階から「広告って付けられないんですか?」と相談していたくらいで、極端な話アナログなやり方ですけどタブレットで広告を出してもいいんじゃないかと(笑)。あとは、「今日の配信で、このブロックはこのスポンサー、このブロックではこのスポンサー」と番組をブロック分けしても面白いし、それこそ携帯ひとつで配信するんだったら、自動車メーカーのショールームから配信するとか、なんなら車1台借りて、車をどこかに置いてそこをスタジオ代わりに配信するとか、ご迷惑にならなければ、「今日はここのお店から配信しています」ということも可能なのかなとか。

 実際YouTubeを観ていても、このターゲットにこの商品を訴求させたいんだなということがあるじゃないですか。急にフィットネスをやっている人たちがお茶のCMを始めて、「ああ、ダイエットに効くという成分をアピールしているのね」みたいな(笑)。それだったら、「今日の飲みものは、これに決めます」とお送りするのもいい気がするんですよね。それを個々で受けていくのか、「17LIVE」が窓口になっていくのかによっても変わるとは思いますが、そういった収益の上げ方もどんどん認めてあげるといいんじゃないかな。それこそ僕なんかもそうですけど、そのタイミングに広告を出している商品が、ウインドウの端にちょっとだけ見えているとか(笑)。そこは少額でもいただけたら番組のクオリティが上がることにもつながるし、一般の方にもインフルエンスできるぐらいのフォロワー数をお持ちの方はそれなりの対価がもらえたりすることもあるんじゃないかなと思うんですよね。

──では、アーティスト視点ではどういった可能性があると感じますか?

西川:「17LIVE」内でもいろんな方がオーディションをやられていたりしますけど、僕の場合だと主催しているフェスがありますから、そこへの出演を賭けたオーディションを「17LIVE」内で行ったりみたら面白いのかな。コロナ禍前なら応募が増えてきたら会場を決めて、関東大会みたいな形でオーディションをやっていたことも、「17LIVE」の中だけで完結するのもアリなのかなと。あとは、実開催と同時に「17LIVE」内でもフェスを同時進行させて、実在にはステージは3つしかないんですけど、「17LIVE」内にもうひとつバーチャルなステージが存在するというアプローチも今後できたりするんじゃないかな。そういったことができると楽しみの幅も広がり、実催の会場にいるのに「17LIVE」を観るみたいなこともできて面白いですよね。会場からの中継を「17LIVE」でお送りすることはすでに事例がありますし、あえてうちが追随することではないなと。そういう意味ではその次のステップ、新たなゾーンを狙いに行くことが僕らにとっては一番意味があるのかなと思います。

──そう考えると、まだまだいろんな可能性を秘めたプラットフォームですね。

西川:そうですね。と同時に、やっぱり生だからこそコンプライアンスも問題もあるでしょうし、同時にこちら側のことを考えるとガバナンスの問題もあると思うし、責任がどこで、誰に帰属するのかは明確にしていかなくちゃいけないと思うんです。ここまでスマートフォンが普及した社会において、そこはもっと自覚していかなくちゃいけないところですし、自分が残しているログにはIDも付いていて、全部自分にぶら下がっていると思っていないと、それがいつどんなことで引っかかって、自分の人生に影響を与えるかわからない。これから、そこがもっとはっきりしてくる気がしますよね。

 もっと言うと、いまは若年層中心の「17LIVE」ですが、これを中高齢者の皆さんがどうお使いになるのかでまた存在も変わってくるんじゃないかな。若年層と比べるとデジタルリテラシーが低い方も少なくないですし、そういった倫理観をすっ飛ばしてしまいがちなので、配信する側もいま一度気をつけていかないといけないなと感じます。それがちゃんとできれば、これまであり得なかったような人とのコミュニケーションが取れるチャンスにもなると思うので。

 なんでもそうですけど、良く使う人もいれば、悪意を持って使う人たちも一定数いるわけで。後者の人たちがきちんと淘汰される世の中であってほしいし、そうでないとおかしいので、そういった意味でも有益で、みんなが少しでも楽しんでもらえるものを残していきたいし、僕らにはそういう責任が課せられているのだと思います。

■『西川貴教のニシナナLIVE』
日時:毎週木曜夜
配信アカウント:西川貴教_official https://17.live/profile/r/14729903

関連記事