「いまのテレビ局はネットを見過ぎ」 『ABEMA Prime』郭晃彰と考える“報道とニュースのあり方”

『ABEMA Prime』郭晃彰と考える“報道とニュース”

“普通”を知っているからこそ「外す」ことが可能になる

ーー番組づくりにおいては賛否を巻き起こしたり、ストーリーの起伏を作ったりするのは大事ですよね。ただ、刺激的すぎてもよくないと思っていて、その辺りはどのようにバランスを取っているんですか。

郭:“普通”を知っていることが大事だと考えています。どんな業界でも既定路線があるわけで、新人のときは現場で活躍するための基礎や土台を叩き込まれると思います。私自身、10年弱くらい地上波で仕事をしていたのでテレビの“普通”が何かわかるんですよ。ニュースによって、テレビや新聞の報じ方が何となく想像できるんですね。それを知った上で「どう外すか」を心がけています。そういう点では番組ではなく、全体のバランスを取るのが大事だと感じています。いまの地上波は、ひとつの番組の中だけでバランスを取ろうとしてしまい、あれもこれも報じる百貨店のようになっているため、番組の色がなくなっていると思うんです。

 他方でABEMAの場合は、1日ごとの生放送だけではなく、番組としてトータルでバランスを取ることを意識しています。たとえば、すごい右寄りの世論が形成されていれば左寄りの視点に立つことを意識するなど、“普通”とは違う側に立った番組を作るようにしています。よく「『ABEMA Prime』は右か左かわからないね」と言われますが、それは褒め言葉だと思っていて、世に出てない視点からものを見るように意識しています。

ーーネットの発達によって情報化社会が進み、最近ではフィルターバブル問題も取り沙汰されています。世論や人の思想に与えるネットの影響力が大きくなっているなか、報道やニュースのあり方はどうあるべきだと思いますか。

郭:個人としては在日コリアンという生い立ちだったり、大学で薬害エイズ事件やLGBTQなどマイノリティについて学んできたこともあってリベラル寄りの思想なのですが、あえて取りたくない情報も取得していかないと、バランスが悪くなってしまうなと思って、自分の考えと反対側にあるような本を読んだり、意見に触れています。コメンテーターもそれぞれ価値観や意見も違いますし、右派や左派の両側の意見を聞くようなスタンスを持たないと、どちらかに偏ってしまう。そういう観点では、テレビ番組こそ、ネット特有のフィルターバブルにハマらない唯一の機会だと思っていて、可能な限り多様な意見を社会に提示していくのが大事なのではと感じています。ひとつのトピックについて、そこに関わる肯定派の意見だけではなく、反対意見を持つ当事者の声や理屈も知りたいし、リスペクトを持った上で議論を前に進めたいと思っていますね。

ーーなるほど。すごく共感できます。特集の構成や答えを出さずに終わることが多いことも含め、ABEMAニュースの特性は“対話すること”や“一緒に悩むこと”にあるのかなと思いました。

郭:まさにその通りです。制作陣もMCもコメンテーターも、みんな“対話すること”を大事にしていて、それぞれどこが違うのか?どこが同じなのか?は顔を突き合わせてやりたいと思っています。

ーーちなみにテレビの座組みは今後どう変化していくと思いますか。

郭:基本的にいまのテレビ局はネットを見過ぎだと思っていて、もっと制作側がやりたいことをやればいいのに、と考えています。『ABEMA Prime』はネット番組だけどネットを見過ぎないようにしています。というのも話題になっていたり視聴率を取れたりするものをやるのではなく、「企画をやりたいかどうか」で判断したいからです。ネットかテレビか新聞かというのは関係なく、コンテンツの作り手が「自分たちが本当にやりたいこと、作りたいことは何か?」を考える方向に立ち返っていかないと、似たり寄ったりで画一的になってしまう。ネットの情報を一度遮断するくらいの気概を持つのもいいかもしれません。

ーーまもなく迎える2022年ですが、最後に今後実現していきたいことについて教えてください。

郭:2021年4月から「変わる報道番組」として打ち出してきたことで、チャレンジがしやすくなりました。去年は女性のMCは一人もいませんでしたが、常に変化することを念頭に置いたことで、いまではだいぶ布陣が揃ってきました。来年は新しく何かを作るというよりも、これまでに方向性を定めたところに『ABEMA Prime』を進化させていきたいと考えています。ジャーナリズム、報道ということもあって、番組のスタッフもかっちりした内容を好む人が多いがゆえ、固くするのは簡単です。でも、固くなり過ぎず、面白くて楽しめるようなエンタメ性や遊び心を大事にしていきながら、番組づくりに励んでいきたいですね。

 たとえば、ABEMAの恋愛番組のようにもっとニュース番組もエンターテインメントとして表現できたら、面白いものができると思います。色々な考えや価値観を持つ人がいるからこそ社会が成り立っているし、彩りに満ちた世の中のリアルをもっと伝えられたら、社会の捉え方も変わっていくのかもしれません。今後もさまざまな創意工夫を試みながら、面白い番組を生み出していけるように取り組んでいきたいです。

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