『Call of Duty』『Battlefield』『Halo』……それぞれの最新作からわかる、FPSシーンの現在地とは
2021年はここ数年で間違いなくFPSのビッグイヤーである。『Apex Legends』や『VALORANT』といった新世代のタイトルが国内でも大きな人気を獲得している状況の中で、ホリデーシーズンに向けて長年にわたってFPSシーンを支えてきたビッグタイトルである『Call of Duty』、『Battlefield』、『Halo』の新作が揃ってリリースされるのだから。
もしかしたら、新世代のタイトルをきっかけにFPSの魅力を知ったプレイヤーの中には、今回初めてこれらのビッグタイトルを手に取ってみようと考えている人もいるかもしれない。いずれも紆余曲折を経ながら約20年近くにわたってビデオゲームの第一線を走り続けてきた歴史あるシリーズであるため、おそらくどの作品を手に取ったとしてもある程度楽しむことができることだろう。とはいえ、一見すると共通の「FPS」という括りでありながら、そのシリーズが持つ面白さや醍醐味には大きな違いが存在している。そこで、本稿では各シリーズの持つ、それぞれの異なる魅力をまとめていきたいと思う。
また、執筆にあたって、筆者は過去作品や各新作のオープンベータテストをプレイした上で本稿に取り組んでいるが、あくまでこのテキストはカジュアルにマルチプレイヤーを楽しむFPSプレイヤーに向けた内容となっていることは注意しておきたい。あくまで各シリーズへの入り口として、本稿が一つのガイドとなれば幸いだ。
『Call of Duty: Vanguard』(2021年11月5日発売)
緊張感と快楽に満ちたハイペースなゲームプレイの魅力は今作でも健在
『Call of Duty』のゲームプレイは、現在存在するFPSシリーズの中でもとくに本能的なものだと言えるだろう。主流となるモードは約6~8名程度で構成されるチームで挑むチームデスマッチ(純粋にキル数を競い合う)やドミネーション(マップ内に設けられた拠点をどれだけ守れるかを競い合う)といったスタンダードなもので、マップは狭く入り組んだ地形が多い。もっとも特徴的なのはそのキルタイムの短さで、『VALORANT』に近い、少なくとも『Apex Legends』とは比較にならないほどの速さで決着がつく。リスポーンも自動かつ高速であるがゆえに、きわめてハイペースに試合が進んでいく。このため、先に相手を見つけた側が非常に有利であり、いつ敵と出会うか分からない緊張感の中で入り組んだマップを移動し、敵と対峙した瞬間、己の反射神経をフルに活かして銃弾を放つのだ。トリガーと同時に着弾するクイックな操作性やキレのある銃声も相まって、キルを決めた時の爽快感は格別である。
また、本シリーズの特徴としては「キルストリーク」の存在が挙げられる。死なずに連続キルを重ねることでポイントが加算されていき、相手の位置を探知できるUAVや救援物資を呼ぶことができるシステムだ。10回以上キルを重ねれば、ガンシップなどの超強力なアイテムを使い、敵チームをまとめて蹂躙することも可能である。前述の緊張感に満ちた高速なゲーム展開と、キルを重ねるほどに「死ねない」というプレッシャーが増していくキルストリークの存在によって、『CoD』における一回のキルがもたらす快楽性は極めて高く、プレイヤーは言わば「キル中毒」のような状態に陥るといっても良いだろう。この抗えない魅力が本シリーズの長年にわたる圧倒的な人気を支えてきたと言えるのではないだろうか。時には「前作からの変化がない」と批判の対象になることも多い本シリーズだが、それはこのシステムがいかに強力かの裏返しでもある。最新作となる『Call of Duty: Vanguard』でもこの軸は変わっておらず、本作で初めて『CoD』に触れるというプレイヤーであっても、その魅力はすぐに分かることだろう。
『Battlefield 2042』(2021年11月12日先行アクセス開始、19日正式発売予定)
64人VS 64人の超大規模戦が遂に実現
狭く入り組んだマップを舞台に、少人数のチーム同士で戦い、己のスキルがダイレクトに試合結果に影響する『Call of Duty』シリーズに対して、『Battlefield』シリーズはある意味では正反対のアプローチを取っていると言えるかもしれない。『BF』の最大の特徴はその規模の大きさにあり、数十人で構成される2チームが、AAA級のアドベンチャーゲーム並に広大なマップを奪い合うという大規模戦闘がシリーズの看板となっているのだ。最新作となる『Battlefield 2042』では、64人VS64人という合計128人での戦闘が実現しており、従来よりも更に巨大となったマップで盛大にぶつかり合うことになる(PlayStation5、Xbox Series X、Xbox Series S、PC版のみ。旧世代機は32人VS32人の合計64人)。その分、キルタイムは『CoD』よりも長く、一回あたりのリスポーンにかかる時間も長めに設定されており、一回あたりの試合時間も約30分~40分程度と、かなりスローペースに試合が進んでいく。だが、プレイヤーは常に変化していく戦況を把握しながら次の行動を見定め、ときには大胆に行動を起こす必要があるため、常にほどよい緊張感が続いていく。とくに激戦区では一箇所に数十人が集まったド派手な攻防戦が繰り広げられ、そこから一歩引いてじっくりと攻めても良いし、自ら激戦の中に身を投じるのも自由だ。
この大規模戦をさらに盛り上げるのが「ビークル」の存在である。プレイヤーは試合中に戦車や戦闘機といった乗り物を呼び出すことが可能となっており、輸送や襲撃に活用することができる。相手の拠点に集団で乗り込んだり、上空からミサイルを投下するといった、一人の兵士だけではできない、広いマップを活かした派手な戦術を実現することができるのだ。このビークルについて、最新作では『CoD』の「キルストリーク」とは異なりキル数に関わらずいつでも呼び出すことができるため(チーム内で呼び出せる台数には限りがある)、初心者でも気軽に活用することが可能である。そのため、前述のような激戦区ではただでさえ激しい撃ち合いに加えてビークルによる襲撃も加わり、更にはマップごとに用意された巨大竜巻などの自然災害まで襲いかかってくるため、他のタイトルでは考えられないほどの壮絶な光景が広がることになる。この「戦争サンドボックス」とでも呼ぶべきカオスさが『Battlefield』シリーズの魅力であり、過去最大規模の戦闘を実現した最新作はまさにその方向へと振り切った意欲作となっているのだ。
『Halo Infinite』(2021年12月8日発売予定) - 撃ち合いの魅力を凝縮したアリーナシューターの帰還
『Halo』シリーズは『CoD』や『BF』と比較すると、日本国内での知名度はどうしても劣っているため、これらの作品と並べて本作が語られることに違和感を抱く人もいるだろう。とはいえ、2002年にXboxで発売された『Halo : Combat Evolved』から始まった『Halo』シリーズは家庭用ゲーム機によるFPS、そしてオンライン・マルチプレイヤー対戦を初めて普及させ、定着させた存在として語り継がれており、その影響力はいまなお非常に大きい。現在でこそ毎年リリースされる『CoD』の存在感が圧倒的ではあるものの、以前はこの3シリーズが競争相手としてしのぎを削る時代があったのだ。そして、2021年、約6年ぶりの新作となる『Halo Infinite』によって、再びこの戦いが始まろうとしているのである。
そんな『Halo』シリーズの大きな魅力は、ストイックな撃ち合いにあると言えるだろう。主流のモードとなるチームデスマッチでは、4人編成のチーム同士で、おおむね『CoD』よりも狭く、シンプルで立体的な構造を持つアリーナを舞台にキル数を競い合うことになる。キルタイムはFPS全般でも長い部類にあり、さらにシールドが自動回復式となっているため、一度襲撃を受けたとしても、しばらく遮蔽物に隠れることで戦況を取り戻すことができる。そのため、決着はかなりプレイヤー側の立ち回りや武器の取り回しに左右され、仮に先手を取られたり、あるいは複数人から襲撃を受けたとしても容易に逆転が起こりうる。また、武器についても、ゲーム開始時点ではプレイヤー全員が共通のものを持ち、マップに配置されているほかの武器やアイテムを拾って切り替える方式となっているため、戦況を捉えながら、手元の武器でいかに対応するかがシビアに要求されることになる。フェアな条件のもとで、ストイックに競い合うというFPSの面白さのコアだけを凝縮したような体験が詰まっているのが『Halo』の魅力ではないだろうか。
とはいえ、そんなストイックさだけが『Halo』の魅力というわけではない。もう一つの主流のモードとなるビッグチームバトルでは12人VS12人の合計24人で広いフィールドを舞台としたサンドボックス的な戦いを楽しむことが可能であり、マップ上に配置された地上車両や戦車、あるいはブースター&プラズマキャノンを搭載したSF感満載の乗り物であるゴーストを使って縦横無尽に戦場を荒らすことができる。さすがに『Battlefield』ほどではないが、ここでもやはり密集地帯では見事なカオスが展開されるため、ストイックな撃ち合いを楽しむアリーナと、ダイナミックなカオスを楽しむビッグチームバトルをムードによって切り替えながら楽しむことができるというわけである。
また、『CoD』や『BF』が全てのモードを一つのパッケージで販売しているのに対して、『Halo Infinite』のマルチプレイヤーモードは基本プレイ無料で提供される。今作はXboxだけではなくPCでも同時にリリースされるため、他の作品と比べてもプレイ自体の障壁は非常に低い。ぜひ、これを機に手にとってみてはいかがだろうか。