ゲームで名門大学に入学できる? 米国のeスポーツ奨学金制度から考える“夢中になれるキャリア”の重要性
「ゲームばかりやってないで勉強しなさい」
そのように言われる時代が終わるかもしれない。eスポーツの市場規模は2019年に1200億円となり、2027年まで年平均成長率24%で増加していくという予想が出ている。しかし、いくら市場規模が大きくなったからといえど「ゲームでどこまでキャリアを形成できるのか?」という不安を持っている方も多いだろう。こちらの記事では、米国におけるeスポーツ大学奨学金の現状や事例を紹介したい。
ゲームに夢中になる子たちの親が抱える不安とは裏腹に、多くの大学がeスポーツ奨学金制度を導入している。NBCニュースの取材に応じたジェレミー氏の父親も、息子がフランシス・ハウウェル高校のeスポーツチームに加入したときに、同じような不安を持っていたという。「ちゃんと勉強と宿題をやるのか? 大学に入れるのか?」と不安を感じていたもの、ジェレミー氏のチームメイトのうちの6人が4000万円ほどの大学奨学金を獲得してから、考えが変わったという。
「今では息子のプレイスキルが落ちないように、ちゃんと数時間は練習させるんだ。どうやら私は典型的なスポーツお父さんだったようだ」
(NBCニュース/ジェレミー氏の父親へのインタビューより)
2018年度には、全米で200もの大学が総額18億円ほどの奨学金をeスポーツ選手にオファーしており、2015年度の奨学金に比べて3倍になっている。6万5000人ほどのプレイヤーがeスポーツで大学に入学しているというデータも記載されている。
このように新しいトレンドについていくために、多くの高校が新しくeスポーツチームを立ち上げている。ジェレミー氏が通うフランシス・ハウウェル高校は6人もの奨学生を輩出しているが、それは実はeスポーツチームができてから、わずか1年のことであった。高校のカウンセラーであるKris氏が2018年にコロンビア・カレッジ・ミズーリ州に訪問した際に、ゲーム棟を案内されたそうだ。そのことがきっかけで、彼はミズーリ州の複数の大学がeスポーツのプレイヤーを探しているということを知った。そのときに彼は「大学がeスポーツの人材を探しているのであれば、我が校も人材を育成できる環境を作るべきだ」と感じ、eスポーツチームを発足したところ、一週間で20人もの入部があったと明かしている。
さらに彼は大学から声がかかるのを待つだけではなく、大学のeスポーツコーチを学校に招待し、ゲーム『Overwatch』の大会を見てもらったことにより、チーム発足からわずかな期間で奨学生を複数輩出することに成功した。学生たちにとっても、このように新しい競技に理解がある大人が学校にいたからこそ、進路を見つけることできたと言えるだろう。今ではチームの親も奨学金を狙う子どもたちをサポートしているようだ。
このようにeスポーツの奨学金が一般化するなかで、カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)は初の州立/公立大学としてeスポーツ奨学金を発足させた。東海岸のアイビーリーグと並び、高い水準の教育を提供するパブリック・アイビーリーグとして知られるカリフォルニア大学であるが、このような名門大学にゲームで入学できるような世の中になっているのだ。
さらに、UCIのeスポーツチームを見ると、韓国や中国出身の学生も多く、海外からも優秀なプレイヤーをリクルートする方針も見ることができる。UCIのeスポーツチームを見ると、社会学、心理学、ビジネス、コンピューター・サイエンスなど、幅広い専攻のチームとなっており、ゲーム以外のスキルを学ぶために入学した学生も多いことがわかるだろう。日本からもUCIなどの名門大学にゲームで入学するという選択肢も一般的になる可能性もある。他のスポーツチームと同じように、コーチだけではなく、カウンセラーやマネージャーなどもチームに在籍しており、いかに「チームスポーツ」として結果を残すために設備投資をしているかがわかる。