「創作の原点に戻れる“遊び性”がある」 森山直太朗に聞く、TikTokを重用する理由

森山直太朗がTikTokを始めた理由

配信の魅力は「ライブよりも身近に感じてもらえるところ」

ーー4月30日には、「TikTok Spring LIVE」に出演。普段のライブと比べて、手ごたえはいかがでした?

@naotaro76

先日のTikTok LIVEご覧いただきありがとうございました! #最悪な春 #春の歌うま #森山直太朗

♬ オリジナル楽曲 - 森山直太朗 official - 森山直太朗 official

森山:“普段のライブ”からこんなに遠ざかったことはなかったし、久しぶりすぎて比較ができないんですよ。しかも会場がホールだったから、当日は「ライブだ!」と思って歌ってました(笑)。無観客のライブではあったんですけど、スタッフの方が何人か客席に座ってくれていたんです。チケットが売れなくて、お客さんがちょっとしかいないライブみたいな状況だったんですが(笑)、ライブに飢えていたから、目の前に人がいるのがすごく嬉しくて。今までどれだけ恵まれた環境で歌わせてもらっていたかを実感したし、近くにいる人に向けて音楽を届けられることのありがたさを感じられる機会になりました。

ーー直太朗さんとしては、あくまでの目の前にいる人に向かって歌っていた?

森山:そのリアリティが大事だったし、それは画面を通して伝わるはずだと思ったんですよね。TikTokで観ている人は「この人、どうしてこんなに自分の世界に没頭して歌ってるんだろう?」と思ったかもしれないけど、それでいいんじゃないかなって。観ている人を意識してないというと語弊があるけど、“目の前の人に向けて歌う”というモチベーションや行為は、スマホで観ている人にも必ず届くはずなので。あと、すごく音が良かったのもうれしかったです。

ーー確かにめちゃくちゃ生々しい音だったと思います。直太朗さんの歌や息づかいもリアルに感じられて。

森山:会場で聴いてもらえるのがベストだとは思うけど、配信のメリットは、ライブよりも身近に感じてもらえるところにあるのかなと。配信の技術も高くなってるし、ライブの生々しさを上質な音で聴いてもらえるのは、配信の利点だと思います。僕も去年から配信ライブを続けてきて、「生の良さを感じてもらえるプラットフォームだな」と実感してますね。

ーーカメラワークもすごく臨場感がありました。

森山:延べ4台くらいのカメラで撮っていただいたんですが、手持ちのカメラでフリーで動く方には、「記録して収めるのではなくて、あなたが撮りたいもの、観たいものを撮ってほしい」と伝えていたんです。「撮影に没頭しすぎて、他のカメラに写り込んでしまっても、僕は否定しないよ」とも言いました。僕と観る人の間には音を届ける人、映像を届ける人がいるわけだけど、この二つのセクションは生命線だと思うんですよ。その人たちが冒険してくれないと配信ライブ自体が凡庸になってしまうし、皆さんもともと、クリエイティティを持っている方々なので、それをぜひ発揮してほしいなと。実際、映像も音も美術も素晴らしかったし、それぞれが創造力を活かしてくれて、総合芸術と言えるようなライブになったと思いますね。

ーー素晴らしい。TikTok LIVE 配信中の視聴者からのコメントもチェックされました?

森山:届いたものには目を通しました。基本的にポジティブなものが多いと思うんですよ、こういうときのコメントって(笑)。そのなかには芯を食った感想をくれる人もいるし、感情に任せて書いてくれる人もいて。当然いろんな意見があるんだけど、僕はそれを魚群の群れのサーモグラフィーみたいな感じで捉えているんです。ウワーッとウネるようなエネルギーを感じられたのはよかったですね。

ーー直太朗さんがアンバサダーになった「#春の歌うま」のコーナーでは、ユーザーから投稿された「夏の終わり」「どこもかしこも駐車場」「さくら」のカバーにコメント、さらに直太朗さんのライブも行われました。直太朗さんのカバーに対する批評、めちゃくちゃ力入ってましたね。

森山:ああいうときってスイッチ入っちゃうんですよね(笑)。紹介した人たちは“その人でしかない”という歌を歌っていたし、すごく面白かったです。それ以外にもいろんな人の歌を聴いたし、過去の“歌うま”の映像も観させてもらったんだけど、歌が上手い人、ホントに多いよね。「プロだろ!」と思うようなレベルの人もいたし、プロとアマチュアの境がどんどんなくなってるんだなって。TikTokに歌を投稿してる人を観てると、知ってるお笑い芸人の方がいたり、海外のセレブが混じってたり。ひとつのプラットフォームのなかに、職種や国籍も関係なく、いろんな人が共存しているのも面白いんですよね。

ーーTikTokの弾き語り投稿できっかけを掴む人も多いですからね。

森山:そうですよね。「#春の歌うま」に関して言えば、Boseさん(スチャダラパー)のことにも触れておきたくて。蛙のパペットと一緒にしゃべる演出だったんですけど、声をBoseさんにやってもらったんです。彼は僕の作品の良き理解者だし、収録に参加してくれたことで、やれることがさらに増えて。僕はただ歌うことだけに専念すればよかったんですよね。

ーーすごく軽妙なトークですよね(笑)。蛙のパペットと話している絵もちょっと懐かしい感じで。

森山:昔懐かしいテレビ的な(笑)。ああいう演出はライブにも取り入れていたし、もともと好きなんですよ。それを理解してくれたTikTokのスタッフにも感謝ですね。僕らは「いちばんよく歌が伝わる演出って何だろう?」から逆算してパペットに辿り着いたんだけど(笑)、スタッフの皆さんがしっかり耳を傾けてくれて。ライブ自体もそうだし、番組を制作するまでのプロセスもすごく良かったですね。TikTokは個人的なプラットフォームだと思うけど、みんなで作ってる感がありました。

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