帰ってきた「春」のパオパオチャンネル 連続投稿された動画がゆるく、愛おしく、輝かしい

3日目に見せた衰えない才能

 そうした「ゆるさ」とは一転、一気にチャンネルの雰囲気を引き締めたのが、3日目に投稿された「踊ってみた」である。YOASOBIの「三原色」に合わせ、全身白色·スニーカーのみグリーンの爽やかなコーディネートでオリジナルダンスを披露した。

【踊ってみた】三原色 / YOASOBI (オリジナル振付)

 時間を経ても衰えない二人のダンススキルや、ぶんけいが代表を務める制作会社「ハクシ」によってクオリティが上がっている映像。魅力的なコンテンツの中で、特にファンを惹きつけたのは二人の状況と見事に重なる歌詞、そして想像を掻き立てるオリジナル振り付けだ。

 「どこかで途切れた」パオパオチャンネルという「物語」が、「もう一度その先へ」向かうために新しく始まっている様子を視聴者たちは見守っている。「それじゃまたね」と活動を休止し、@小豆は個人チャンネルでの活動、ぶんけいはハクシでの活動という「それぞれの暮らし」をした休止期間を経てやってきた「あの日の続き 再会の日」がこの春投稿なのである。

 この部分以外にも、まるで二人のために書かれたかのような歌詞がところどころに見られる「三原色」。振り付けには、これまでの思い出を振り返るように、過去の「踊ってみた」の振り付けが散りばめられている。中でも印象的なのは、終盤の「共に過ごした青い日々」の部分に差し込まれているサイダーを飲む振り付け。二人の人気を決定づけた「ロケットサイダー」の振り付けである。

 多くのファンが、この歌詞に、振り付けに、そして楽しそうに踊る二人が目を合わせる瞬間や手を繋ぐ瞬間に歓喜していた。

帰ってきたパオパオチャンネル

 「いつも通りのパオチャンが戻ってきた」と感じさせ、また二人のファンへの愛と信頼を再確認したゆるゆるでやりたい放題の動画。その1,2本目とは大きくギャップのある「踊ってみた」で再び見せた才能。

 冒頭に書いたとおり、@小豆が折れ線グラフで示してみせたことから、この構成は当初から考えてあったものだと思われる。ファンをいい意味で驚かせ、喜ばせる演出は、二人を爪を隠した能ある鷹のように思わせる。ただ、そこにまったく嫌味がないのは、どの動画にも投稿にも二人が自然体で臨んでおり、心から楽しんでいることが伝わってくるからだろう。

 最後は「また明日」と手を振って終わる三本目。これからも二人の歴史が続いていくことを思わせる歌詞と演出が嬉しい。「夏ですよ~!」の掛け声を楽しみにしながら残りの春を過ごしたい。

■桂木きえ
東大卒YouTubeコラムニスト。92年東京生まれ。会社員ながらもYouTuberが好きすぎて副業ライターとして執筆。YouTube、TikTokなどの動画メディアとインフルエンサーについて考察する。

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