連載:Viral Hit Creator(第一回)
話題の“文明が滅んだ世界”描く2分間動画はどのようにして作られた? リモートフィルムコンテストGP『viewers:1』制作陣に聞く
年々短くなるウェブ動画
――制作過程も全てリモートですよね。例えば脚本の読み合わせもリモートだったのですか。
針谷:そうです。橋口くんとリモートで読み合わせして、ロケハンで撮った映像と合わせて一度尺を計算しています。基本的に対面で何かすることはありませんでした。撮影で砂丘に上ってもらったりした時には、何かあった場合のために別の場所で待機していましたが、対面で演技指示するなどは一度もないです。
――リモート制作の面倒な点はありましたか。
小林:撮影した素材をリアルタイムでチェックできないことですね。今回は役者の自撮りなので、一度撮影してもらって、送ってもらうわけです。そのあとビデオ通話にしてもうちょっとアングルを変えてなど指示を出すんです。かなり面倒くさいので、今回は芝居の精度で勝負しないで済む作りを目指していて、主観の映像に声だけかぶせるとかも多用しました。ここだけは絶対に必要というシーンは顔を入れて撮るようにしました。
針谷:1人芝居にしたのが良かったですよね。これが2人になるだけでものすごくややこしくなると思います。
――この作品がネットでこれだけ話題になった要因を、お2人はどう分析していますか。
小林:僕らもこんなにバズるとは思わなかったですし、いただいたコメントを読むと「なるほど」と思わせられることが多いです。これはリモートコミュニケーションの話ですが、リモートのやり取りって、何とも言えない掴みどころのなさがあって不安になりますよね。やはり、直接目で見て話すというのは決定的に違うことなんだというのが伝わったのかなと思います。
あと、これは僕らは意識していなかったんですが、「ネットでコンテンツを発信してる人の、誰に届いているのかわからない不安を描いている」とコメントしている人がいました。偶然も含めて、いろんなものが今にハマったんだろうと思います。
――最近、我々は緊急事態宣言中の誰もいない街を実際に見てしまったので、本作の世界にリアリティを感じられる条件が揃っていたのかもしれませんね。
小林:そうですね。そういうものと僕と針谷さんの趣味が程よいところでクロスしたんだと思います。そういえば今回、日本にもポストアポカリプスものが好きな人は多いんだということが分かって嬉しかったです。あとは、世界観を説明しきらず想像の余地を残したのも良かったのかもしれません。
――140秒という長さについてはどう考えていますか。短い尺で人の心に刺さるコンテンツには何が必要でしょうか。
針谷:そこは難しいですが、最近の動画はどんどんテンポが速くなってますよね。今回の作品も僕らの感覚では短いくらいなんです。
小林:僕らは90年代にたくさん映画を観ていた世代ですけど、当時のハリウッド映画も今と比べると全然テンポが違いますね。僕はウェブの仕事も多いですが、企業のウェブ動画も少し前は4分くらいで物語もしっかりあるものが多かったんですが、最近どんどん短くする方向になっています。
――お2人の作品は良い感じにスケール感のあるものが多いですし、今回の作品を見て長編映画を観てみたいと思った人はいると思います。海外では、例えば『メイズ・ランナー』のウェス・ボールや『ドント・ブリーズ』のフェデ・アルバレスなど、短編がバズったことがきっかけに長編映画に抜擢されるケースもあります。
小林:ありがたいお言葉ですが、今回は短いからボロを出さずにすんだという面もあるとは思います。でも、何か企画があれば存分にやらせていただきたいです。
■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。
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