Uberドライバーは「個人事業主ではなく従業員」 5年にわたる裁判結果は“テックと労働の関係”をどう変える?

Uberドライバーは「個人事業主ではなく従業員」

ギグワークと法との兼ね合い

 これらの問題は、単発として行っていた仕事をフルタイムのキャパシティでこなすワーカーが増えたという点から考察することもできる。元々はギグ・ワークとして副業や単発で存在していた職種が約半数となった社会において、正社員ではない労働者たちの権利を守っていく動きは盛んになっていくだろう。実際、カルフォルニア州ではAssembly Bill No.5(AB-5法)というものが2019年に施行されており「ギグ・ワークを行う労働者たちは企業側からの監督から自由であり、企業のコアとなる業務でない限り皆、従業員として認められる」というものだ。つまり労働法に基づいた最低賃金の支払いやその他の手当を受ける権利がある。

 しかし同時にこれに反発する動きが出てくるのも必然だ。このAB-5法に対抗する法案「California Proposition 22(Prop 22)」が、昨年カルフォルニア州で通過した。これは企業側が独自で設定した最低賃金を保障し、その他の手当を補償する代わりに、配車やデリバリーサービスの業界はドライバーたちを個人事業主として雇うことができるという法律だ。これはUberやLyftなどに独自の規制を書かせる機会となり、よりテック企業に自由を与える。Uberはヨーロッパなどでもロビー活動を盛んに行なっており、今後行政の動きやテック企業とワーカーたちとの間にどのような関係性が構築されていくのか、注目していく必要がある。

■mugiho
ニュージーランドの大学でマオリ文化の発展・都市計画・教育について学びながら映画、テック、文化芸術について執筆するフリーライターと翻訳家。人間観察をしながらたまにそれらについて書いたり撮ったりしている。

〈Source〉
https://www.theverge.com/2021/2/19/21330906/uber-uk-supreme-court-employee-rights
https://techcrunch.com/2021/02/19/uber-loses-gig-workers-rights-challenge-in-uk-supreme-court/
https://techcrunch.com/2020/11/03/prop-22-results/
https://techcrunch.com/2019/09/18/california-governor-gavin-newsom-signs-gig-worker-bill-ab5-into-law/
https://gigworkerscollective.medium.com/proposition-22-c5927b11e599
https://www.uber.com/global/en/about/reports/a-better-deal/
https://techcrunch.com/2021/02/15/uber-lobbies-for-prop-22-style-gig-work-standards-in-the-eu/
https://www.supremecourt.uk/cases/docs/uksc-2019-0029-press-summary.pdf
https://www.supremecourt.uk/cases/docs/uksc-2019-0029-judgment.pdf
https://www.investopedia.com/terms/g/gig-economy.asp
https://zety.com/blog/gig-economy-statistics

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