Uberドライバーは「個人事業主ではなく従業員」 5年にわたる裁判結果は“テックと労働の関係”をどう変える?

Uberドライバーは「個人事業主ではなく従業員」

 テクノロジーの発展と共に「ギグ・エコノミー」という業界が主流になり、より多くの人たちがこれらのサービスを利用して仕事を見つける機会が増えた近年。2017年のデータによると、アメリカ国内のみで36%が何らかのギグ・ワークに携わっており企業側も3割がこれらのワーカーを利用しているという。また、これらのギグ・ワークを行なっている労働者のうち44%が、主な収入源としての仕事と定義しておりギグ・エコノミーの市場の重要性を示している。

 先日、イギリス最高裁判所で5年にわたる裁判の結果、「Uberのドライバーたちは個人事業主ではなく従業員である」という判決が下された。これは今後のギグ・エコノミーの未来や、これからの課題を考察する上でも重要な判決となってくる。個で動く・働く機会が増えるこれからの時代において、労働環境を考えた際にどのような規制を設けていくべきかなどは、特に労働法を定め、雇用者たちの権利を守っていく上でも重要になってくる。

そもそもギグ・エコノミーとは?

 英語のGigとは主に単発であるイベントやコンサートでのパフォーマンスという意味からきており、労働者たちが主にオンラインで単発の仕事を見つけて働くギグ・エコノミーという言葉に応用された。フレキシブルで自由な働き方はテクノロジーの発展ともにさらに規模を拡大し、新しい働き方を求める人々を魅了している。オンラインでいつでも仕事を受注できたり、車一台でどこでも仕事ができるような環境によって、人々は一箇所に縛られず好きな時に好きな場所で働けるようになった。企業側にとっても正社員を雇うコストや、グローバル化に伴い世界中からスキルと技術を集めることができることから、多くの企業がこの雇用形態を利用している。

 しかし、同時にこの新しい働き方に政府や規制が追いついていないというのが現状だ。今回の問題も「労働者」の定義が実際の労働者たちと企業側と行政側との間で一致していない、というのが一因である。福利厚生や有給がなかったり、それぞれの国での労働法が適用されない場合がほとんどだ。これらのギグワーカーたちの労働権利は決して守られていると言えないのが現状であり、特にギグワークの仲介業者となっているテック企業から搾取され易いポジションにある。

Uberの判決とギグワークの未来

 今回の判決においてポイントとなった点が、Uber側によると「サービスと価格のコントロール」だ。Uber側によって価格設定や評価によるサービス内容の履行確認などが行われていることから(評価査定により契約放棄が可能)Uberが雇用主として行動していると裁判所は発表した。また、アプリにログインし、運転開始まで発生する待ち時間も勤務時間として認識されると発表した。つまりこの時間間、Uberはドライバーに最低賃金を払う必要があるということだ。時間の計算についてはまだ具体的な方法は出ていないものの、これはUberにとって大きなコストとなることは確実だ。

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