急増した芸能人YouTuber、成功の法則は? 2020年~2021年のYouTubeを展望するライター座談会(前編)

 コロナ禍の影響もあり、2020年に存在感を高めたYouTube。有名芸能人のチャンネル開設が相次ぎ、視聴者層が大きく拡大するなど、「YouTuber」というシーンはいま大きな転換点を迎えている。リアルサウンドでは、YouTubeに詳しいライターの藤谷千明氏、佐藤結衣氏、こじへい氏を招き、2020年を振り返る座談会を収録。前編では、芸能人YouTuberの成功の法則から、今後注目すべき動き、今年以降のデビューに期待したい大物まで、じっくり話し合った。(編集部)

2020年に急増の芸能人YouTuber、成功の法則は?

――2020年のYouTuberシーンを象徴する出来事といえば、やはり芸能人チャンネルの急増でしょうか。

藤谷千明(以下、藤谷):そうですね。2019年の時点で、カジサック(キングコング・梶原雄太)さんとオリエンタルラジオ・中田敦彦さんがチャンネル登録100万人を達成している、という芸人が進出しやすい空気があり、コロナ禍で芸能活動が制限されたこともあって、有名俳優の参戦も加速しました。

 例えば、川口春奈さん、佐藤健さん、最近だと本郷奏多さん。その他、ビッグネームも多すぎて網羅できませんが、大人もYouTubeを見るようになっていくなかで、ひとつ潮目が変わったと感じたのは、やはり、とんねるず・石橋貴明さんのYouTuberデビューですね。1ヶ月あまりで100万人登録を達成しましたが、これだけテレビバラエティに近い手触りのチャンネルは成功した例はなかったと思います。「テレビとYouTubeは別モノ」という固定観念が崩れたというか。

石橋貴明、58歳。YouTube、はじめるでしょ。

こじへい:盟友の演出家・マッコイ斎藤さんが手掛けていることもあり、タカさんの趣味性を上手く活かしながら、テレビの視聴者にとっても違和感なく、「これこれ!」と思える動画になっていますね。

佐藤結衣(以下、佐藤):個人的には、江頭2:50さんの「エガちゃんねる」が象徴的だったと思います。石橋貴明さん、宮迫博之さん、手越祐也さんもそうかもしれませんが、いまのテレビでは個性や刺激、ノイズが大きくなってしまったりした芸能人がウェブで大暴れする、というのはYouTubeの使い方として理にかなっていて、「芸能界」という上からの大きな流れではなく、視聴者からの押し上げで活躍できるのが、YouTubeなんだなと。

 テレビなどのマスメディアは年々、多数決なエンタメになっていると思うんです。多くの人が「見たくない」「嫌い」というものはどんどん排除されていき、万人受けの企画が多くなっていく。SNSの発展で、よりその流れは加速しました。でも、多様性が叫ばれる今、そのクセの強さがむしろいいという人もいて。そういう好みの集まりがYouTubeに漂着し、新境地を開拓しているように思えます。

――視聴者の「嫌い」を慮る必要があるテレビと比較して、ファンの「好き」がより強い原動力になるYouTubeは、広く好感度が高いタレントより、尖った存在感のあるタレントに向いているというか。

藤谷:その意味では、アンジャッシュ・児嶋一哉さんのチャンネルも、テレビとの兼ね合いでYouTubeをうまく活用している好例だと思います。相方の不祥事という逆風もあるなかで、メイク動画などに児島さんの人の良さがよく出ており、シリアスになりがちな状況をうまく中和していて。あまりテレビでは見られない一面が見られる、というのはファンにとっても楽しいことですよね。

最強デカ目になれる地雷系メイクしたらガチ盛れたんだけど…🥺♡

こじへい:芸能人のチャンネルで伸びているものを見ると、何らかの事情でテレビでの活躍が後退しているなかで、ウェブからの成り上がりを目指す……というストーリーが明確なケースとともに、とにかくタイミングがとても素晴らしかった、というケースが多いと思います。宮迫さんや手越さんは明らかに前者で、後者については、否応なく世間の関心が集まった児島さんもそうですし、沢尻エリカさんに代わって大河ドラマ『麒麟がくる』の帰蝶(濃姫) 役に抜擢された川口春奈さんのチャンネル開設も、抜群のタイミングだったと思います。佐藤健さんも、もともと多くのファンを抱えているスターですが、大ヒットドラマ『恋はつづくよどこまでも』の終了に合わせて、上白石萌音さんをゲストに招いた動画でスタートする、という最高のタイミングで、勢いに乗りました。知名度の高いタレントも、スタートダッシュが決まらなくて伸び悩むケースが多いなかで、やっぱり最初の“惹き”は重要なんだなと。

【初YouTube】佐藤健『たけてれ』

――所ジョージさんのように本当に趣味に近いチャンネルもあり、すべての芸能人チャンネルが数字を求めているわけではありませんが、確かに静かにスタートして、本当に好きな人だけが見ている、逆にいうとそれ以上の広がりは出ていない、というチャンネルも少なくありませんね。「ストーリー」という部分については、本来実力がありながら、何らかの事情でメディアへの出演が減少している才能を包摂する場にもなっているというか。

こじへい:そうですね。一般的な好感度は低くても、YouTubeではやり方次第で多くの味方をつけることができる、ということは証明されてきていると思います。

藤谷:フワちゃんのように、一度芸能事務所を対処したあとYouTuberとしてブレイクして、いまやテレビに引っ張りだこ、というケースもありますし、わかりやすく表現してしまうと、「テレビの敗者復活戦」が展開されている部分もあって。タカさんも「戦力外通告」からの復活劇ですし。もちろん、テレビで成功した人が勝者で、そこに適応できなかった人が敗者というわけではなく、あくまで構図としてそうなっている、ということですが。

こじへい:テレビの仕事が減っている、つまり時間に余裕があるというのは、かえって大事かもしれません。YouTubeでブレイクするためにはそれなりの更新頻度を確保することが必要で、自分が主導して企画をしっかり立てていくか、あるいは最初の段階できちんとチームを作り、コンテンツを安定供給できる体制を整えるという“本気さ”が必要になるというか。

2021年は中小の“芸能事務所チャンネル”に注目

――タレントYouTuberだけでなく、専業YouTuberにおいても「チームの重要性」が語られることが多くなってきた印象です。

藤谷:2020年は、霜降り明星の「しもふりチューブ」をはじめ、「みんなのかが屋」「ジュニア小籔フットのYouTube」などを手掛けている白武ときおさんなど、YouTubeチャンネルを支える構成作家も注目を集めた年でもありました。かつてのヒカキンさんのように、企画も撮影も出演も編集もすべて自分、ということではなく、2019年以降一気に増えたマンガ動画も含めて、集団で作るコンテンツにシフトしているような感じもしますね。

こじへい:その意味では、芸能プロダクション・フォスターの公式YouTubeチャンネルのリニューアル第一弾動画「リニューアル企画第一弾となる動画『【赤裸々告白】広瀬すずが好きなYouTuberについて語りました。登録者数10万人突破で【〇〇】も公約!」は非常にうまいと思いました。若手俳優たちが、リニューアルにあたってチャンネルを盛り上げるための会議をするところから始まって、広瀬姉妹に突撃する。これもひとつのチームプレイであって、人気タレントを起用して、バズを起こした例だと思います。細かな目標設定でストーリー性も持たせていて、今後が楽しみですね。これが成功したら、似た事例が出てくるのではと。

【広瀬すず】ミッションをクリアしたら、広瀬すずの〇〇企画が待ってます!

――なるほど。芸能事務所のチャンネルといえばトップコートも、コロナ禍に際して中村倫也さんが連日自宅から動画を投稿したり、松坂桃李さんのメッセージ動画を投稿したり、所属タレントがそれぞれに活躍して、登録者数を伸ばしました。

こじへい:事務所のチャンネルであれば、自分でチャンネルを作るのはちょっと……という人気タレントも気軽に出演し、YouTube上で存在感を示すことができます。例えば、サンドウィッチマンのネタ動画を中心に展開し、80万人を超えるチャンネル登録を抱えるグレープカンパニーなど、小中規模の事務所チャンネルに注目しておくと面白いかもしれません。事務所チャンネルで観測気球的に動画を出して見て、スピンオフ的に個人チャンネルを開設するケースが出てくると思います。

 また、石橋貴明×マッコイ斎藤の話も出ましたが、「山本圭壱けいちょんチャンネル」は、『めちゃ×2イケてるッ!』にも参画していた松本泰治ディレクターが手掛けていますし、「さまぁ~ずチャンネル」は『神さまぁ~ず』のスタッフが制作していて、今後はテレビ番組の制作チームとタレントという組み合わせで、強いチャンネルが生まれていく流れもありそうです。例えばもし、ナインティナインとフジテレビの片岡飛鳥プロデューサーがチャンネルを立ち上げたら、業界を揺るがすコンテンツになりそうですね。

佐藤:座つきの作家さんと組む、というケースが増えていて、その意味では深夜ラジオに近いものなのかな、と思っています。作家さんもひとりのキャラクターとして、セットで人気になっていくというか。見てみたいエンタメと、作れるエンタメのギャップがなく、まずは「作ってみよう」と動き出せるのがYouTubeの醍醐味だと思いました。

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