機械翻訳市場は「専門性の強化」に注目? 『DeepL』登場以降の変化を読む
さらに、北欧に拠点を置く機械翻訳企業Tildeもまた業界に多大な影響をもたらしている。同社は8月上旬、人間による修正をリアルタイムに拾い上げることで翻訳品質の向上を目指す革命的な機械翻訳向けダイナミック学習NMTモデルを発表。簡単に言えば、履歴に基づき翻訳テクストを提案する翻訳メモリと、ニューラル機械学習モデルを組み合わせたモデルであり、翻訳者によるフィードバックを解析し、正しい語彙や文体、用語を即座に学習する仕組みとなっている。
モデルが稼働している限り、学習内容が次々と蓄積されていくため、文節単位で原文と訳文を照合する従来の翻訳メモリとは異なり、文脈単位でのよりスマートかつ正確な翻訳を実現可能である。Tildeの機械学習モデルは、主に翻訳者向けに提供される翻訳支援ソフトウェア『SDL Trados Studio』で体験することができる。
ロゼッタ、みらい翻訳、そして北欧のTildeに共通することと言えば、機械翻訳の専門性の強化に力を入れている点である。汎用性の高い翻訳に重きを置くGAFAに対して、一線を画したビジネス戦略は、GAFAとの差別化という面でも有意な意味を持つであろう。
(画像=Pixabayより)
■大澤法子
翻訳者、ライター。AI、eスポーツ、シビックテックを中心に動向を追っている。