米ポートランドで“顔認識システム”の導入が禁止にーースマートシティの今後はどうなる?

スマートシティの今後はどうなる?

監視時代のユートピア

 今回のポートランドの新しい規制は、市民たちの声を直接的に反映するコミュニティ活動から始まった。テクノロジーが進化するのと同時にそれらのアルゴリズムに正当に代弁されていないと感じている人たちは大勢いると見られ、プライバシーなどに関して懸念を持っていた人たちも含めて、多くの声が集まった。市に所属する人権とエクイティ部門、ポートランド市の団体Smart City PDX、そして市民グループ共同での彼らの声を顕在化させるプロジェクトが始まった。

 同時期、米国自由人権協会(ACLU)はこれらの技術は違法でありプライバシーと人権を無視する行為だとして、イリノイ州裁判所にClearview AIを起訴した。この他にも様々なテクノロジー会社、例えばIIBM, Cisco, AmazonなどがAIを駆使した様々な分析方法やアルゴリズムの開発を行なっているなかで、判決に注目が集まっていた。これらの訴訟に比べ今回のポートランドの新しい規制が印象的である点として挙げられるのはひとつの判例や団体に限られた活動よりも市を含めた大きな運動が、大きな力を持つことが可能であるというところにある。これは市民たちの自治と意識の高さを象徴している。

 個人のプライバシーへの意識や、テクノロジーの仕組みや欠陥に対する理解を深めていくことで、人々が自分たちのデータや安全をコントロールしていけることが、これから重要な課題となっていくだろう。同時にデータやテクノロジーを扱うテック企業たちのデータへのバイアスやプライバシー問題への倫理観を高めていくことで技術と市民たちのより良い相互関係を築き上げていくことが今後の企業の主要テーマとなっていくのかもしれない。

(画像=Pixabayより)

■mugiho
ニュージーランドの大学でマオリ文化の発展・都市計画・教育について学びながら映画、テック、文化芸術について執筆するフリーライターと翻訳家。人間観察をしながらたまにそれらについて書いたり撮ったりしている。

〈Source〉
https://www.wired.com/story/portlands-face-recognition-ban-twist-smart-cities/
https://www.transportation.gov/smartcity
https://www.smartcitypdx.com/
https://www.nytimes.com/2020/10/21/technology/facial-recognition-police.html?searchResultPosition=1
https://www.nytimes.com/2020/06/25/technology/facial-recognition-software-dangers.html?searchResultPosition=12
https://www.nytimes.com/2020/01/18/technology/clearview-privacy-facial-recognition.html?searchResultPosition=47
https://www.ajl.org/

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