「レゴ スーパーマリオ」の練りに練られた魅力 “立体版マリオメーカー”とも言うべき高精度の遊びに迫る
今年7月より始まったレゴの新シリーズ、「レゴ スーパーマリオ」。すでに色々な商品がリリースされているこのシリーズだが、何は無くとも「レゴ®︎マリオとぼうけんのはじまり~スターターセット」がなくては成立しないという構成だ。このシリーズ、「レゴであり、なおかつスーパーマリオである」とはどういうことなのか、考え抜いたアイテムである。
スターターセットと銘打たれている通り、このセットにはレゴ スーパーマリオシリーズで遊ぶための基本的なアイテムが全て入っている。と言われても、箱を開けただけでは何が何やらわからない。中に入っているのはレゴっぽいプロポーションになったマリオのフィグ、そしておなじみのレゴの部品が入った6つの袋である。
※袋にはそれぞれ大きく番号が。この番号が後から重要になってくるので、最初に全部開けないようにしよう。
このセットで特筆すべき点は、マニュアルのページ数が異常に少ないことだ。組み立て方に関する記述はほぼ無し。最初に書いてあるのは「マリオに電池を入れておけ」くらいの内容で、その先は専用アプリをダウンロードして起動しろという指示があるのみ。ということなので、まずはマリオに電池を入れて起動してみる。
アプリを落として起動すると、まず最初に出てくるのはマリオを組み立てるための説明画面。この画面が大変よくできている。アプリの画面上で組み立て指示をぐるぐる回したり前の段階に戻ったりすることができ、ひとつずつ段階を踏みながらパーツを完成させることができる。マリオと同じ任天堂の製品である、「Nintendo Labo」の組み立て説明画面と同じようなテイストだ。
で、これは一体何を作っているのかというと、ゲームのスーパーマリオに登場する各種のオブジェクトである。マリオが出入りする土管やブロック、敵であるクリボーやクッパJr.、ゴール地点の旗や雲……。そういったものが順を追って完成する。
問題は一方のマリオである。こちらのマリオは動かすと歩いている時の音がするし、ジャンプさせるとあの独特のジャンプ音が出る。そして横にすると「I'm tired……」とか言ってその場でグーグー眠りだす。それだけではなく、胴体の底面にレンズがついており、タイル状のパーツに印刷されたバーコードを読み取ってそれに応じたリアクションを取る。
ということでどうなるかというと、例えばクリボーの頭につけたタイルを踏んづけさせればクリボーを踏み潰した音が出るし、ブロックの上に乗せればコインを獲得したりするのである。マリオのお腹についた小さなディスプレイにはその度にコインが表示されたり、あのお馴染みのBGMが流れたりして、けっこう賑やかだ。
そしてこの点が大事なのだが、各種のオブジェクトは全部バラバラに完成する。で、全部できあがったところで、板状のパーツを使って好きな順番で繋いでいくのである。こうすることで、スタートからゴールに到るまでのあのマリオのステージを完成させることができるのだ。思えば、最初のスーパーマリオのステージはベタッとした2Dであり、奥行きはなく左から右に一直線に進むものだった。あの右に向けてまっすぐ移動し、ひとつずつ障害物を超えていく感覚を、そのままレゴに落とし込んだということになる。
つまりこのレゴ スーパーマリオシリーズが再現したのはスーパーマリオのステージ自体であり、立体版「スーパーマリオメーカー」と言えるような商品だったのだ。自分でゲーム内のオブジェクトを作り、並んで繋げ、その中を自分の手でマリオを持って駆け回るという体験そのものが、レゴ スーパーマリオの売りだったのである。
レゴの特徴は、ご存知のように「自分の想像力に従って自由に組み立て、分解することができる」という点である。この点はたいへんよくできた自社製品プロモーション映画である『レゴ®︎ムービー』でも繰り返し強調されてきた。自由に組み立てることができるという点こそが最大のレゴらしさであり、そのレゴらしい観点からスーパーマリオというゲームを解析、分解したのがレゴ スーパーマリオであるという読み解きもできると思う。つまりマリオの世界を解体し、自分の想像力に従って好きなように組み立て直すことができるということこそが、レゴとスーパーマリオがドッキングした製品の持ち味となるのだ。
スーパーマリオらしさ、という点については、これはもう触ってみれば自明である。ジャンプした時やコインを獲得した時、土管から出てきた時にあの音がする。それだけのことで、一気に「マリオ感」としか言いようがないものが滲み出る。キャラクターやオブジェクトの見た目も、実際のゲーム画面や任天堂の公式ビジュアルを精密に読み解き、そこにレゴっぽさを足した高精度なものだ。