私たちはTikTokを削除するべきなのか? 中国企業に対する各国の厳しい対応から考える
TikTokは本当に危険なのか
では、本当にTikTokは危険なのでしょうか。それは何ともいえません。
個々のデータ収集に関していえば、TikTokが異常な動きをしているかは分からないのだそうです。確かにアプリはクリップボードやロケーション等の大量のデータを収集していますが、その目的は明確にされていません。しかし、これに関していえば、他のアプリも同様のことをしています。『The Verge』も伝えていますが、セキュリティの研究者たちもTikTokが標準外の動きをしていることを示すのに苦労しています。
また、7月始めにハッカー集団のアノニマスが「中国のスパイウェアを削除しろ」と、TikTokが中国政府によって運営されているマルウェアが仕込まれているとしてアプリの削除を訴えるツイートをしましたが、いつものごとくソースがあやふやで、情報源とされるオーストラリアのニュースサイトが既に削除されているので、危険性を断言するには弱いと言えます。
肝心のTikTokは、次のようにコメントしています。
「TikTokはアメリカ人のCEOが率いており、アメリカを拠点とした会社でセキュリティとプロダクト、パブリックポリシーを重んじる主要リーダーと従業員によって運営されています。ユーザーのデータを中国政府に提供したことはありませんし、求められたとしても提供しません」
ただ、TikTok側が中国政府にデータを提供しないと主張しても、政治的な結びつきがあるためリスクの高さは否定できないのかもしれません。実際、中国本土に行くとインターネットの監視の厳しさに驚かされます。
私が中国に滞在した時は北京で大きな会議があったらしく、より一層監視が強化され、インターネットに接続できる時間が1日に1時間あるかないかということがありました。日本のサイトにアクセスすることはできず、人の名前で検索すればポルノサイトがひっかかる始末。その時初めて、自分の意思で情報にアクセスできることのありがたさを実感し、同時に中国政府の力を思い知らされました。では、TikTokを使い続けてもいい? 使い続けられる?
FBIが、中国のスパイが米国の企業秘密を盗もうとしていると警告していることから考えて、シリコンバレーの人たちや米政府は警戒するべきと考えるのが妥当でしょう。しかし、一般ユーザーレベルなら……あくまで個人の判断になるだろうとしか言いようがありません。
ただ、他のSNSを利用するのと同様、もしくはそれ以上に情報モラルの徹底が重要だということは断言できるでしょう。2020年4月から16歳以下に直接ダイレクトメッセージを送れない仕様になっている上に、「Family Pairing」というペアレンタルコントロールが実装されていますが、それまでは大人が子供ユーザーにコンタクトを取りやすい環境になっていました。
同アプリは、13歳以上という利用規約に反して小学生のユーザーが多く、部屋の片隅に立ってひとりでも撮影して投稿できるお手軽さから利用ハードルが低いと言われています。また顔を出すのが一般的になっていることで、ストーカー被害や誘拐といった犯罪に巻き込まれる可能性が他のSNSと比較して高いとも懸念されています。この記事を書くにあたり、筆者もTikTokを使ってみましたが、昨今は家の中での撮影するユーザーが多いからか、見る人が見れば家の特定に繋がる情報が多いとは感じたのは事実です。利用し続けるなら、今以上にTikTokの特性とリスクを理解する必要があるでしょう。
ただ、先日、自民党が日本国内でのTikTokを含む中国企業提供のアプリ制限を日本政府に提言する方針を明らかにしました。この提言は9月に政府に提出される方針だそう。つまり、女子高生の40%が利用していると言われ、今や自治体ですら若者向けアピールのために利用しているというTikTokが、日本で使えなくなる可能性が出てきたのです。
この提言がどんな結果を導くのかは今はわかりません。全面的に規制されるのか、条件つきで利用を認められるのか、インドのようにアプリをダウンロードすることすらできなくなるのかは不明です。
TikTokを取り巻く環境はこれからも大きく変わっていきそうです。
〈Source〉
https://jp.techcrunch.com/2020/07/01/2020-06-30-tiktok-goes-down-in-india-its-biggest-overseas-market/
https://www.theverge.com/2020/7/11/21320935/wells-fargo-bans-tiktok-devices-amazon-pompeo
https://edition.cnn.com/2020/07/10/politics/dnc-warning-tiktok/
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61419300R10C20A7I00000/
https://twitter.com/jeremyburge/status/1275896482433040386?lang=en
https://www.businessinsider.com/tiktok-bytedance-us-investors-consider-buying-majority-stake-report-2020-7
https://www.hitc.com/en-gb/2020/07/02/anonymous-claims-on-tiktoks-security-go-viral-as-they-tell-users-to-delete-the-chinese-spyware/
https://www.theverge.com/21322612/tiktok-security-china-bytedance-spying-app-privacy
■中川真知子
ライター。1981年生まれ。サンタモニカカレッジ映画学部卒業。好きなジャンルはホラー映画。尊敬する人はアーノルド・シュワルツェネッガー。GIZMODO JAPANで主に映画インタビューを担当。Twitter
〈Source〉
https://ew.com/tv/netflix-hulu-amazon-starz-george-floyd-protests-support/
https://io9.gizmodo.com/hey-media-companies-whats-next-1843821701