スパイダーマンの“乳首とお尻を作った人”が明かす制作秘話

人型キャラクターの秘部にこだわる理由

 一見どうでもいいように感じることにこだわる理由は、フィードバックをうけることがあるからだそうです。例えば、2008年にリリースされたゲーム『The Incredible Hulk』は、エドワード・ノートン主演の映画をベースにしたハルクを登場させていたそうですが、その時に映画制作者側から、ブルース・バナーの乳首に関してエドワード・ノートンが「気にしているらしい」という連絡が入ったそうなのです。

 デザインの元となる人がいる場合、その人のイメージに関わってくるため、可能な限り対応するそう。この件についてPolygonに話した匿名のアニメーターによると、ノートンの「心配」に対して、開発者たちはカメラのアングルを変えたりしたようです。

必要ないのに見せてバッシングされる場合も

 コンテンツにおける乳首がとても気を付けてデザインされているのはわかりましたが、過去には不必要にも関わらず、あえて乳首をつけて非難されたこともありました。それが、ジョエル・シュマッカー監督の『バットマン フォーエヴァー』(1995年)と『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』(1997年)。2作にわたってバットスーツに乳首をつけたことでファンを幻滅させただけでなく、ジョージ・クルーニーにまで居心地の悪い思いをさせてしまったのです。のちのViceのインタビューで、シュマッカー監督は「ファンをガッカリさせてしまってゴメン」と謝罪までしています。では何故、スーツに乳首をつけたのでしょう。Esquireに取り上げられていた当時のインタビューを抜粋して紹介します。

「『バットマン』と『バットマン リターンズ』の頃と比較して、『バットマン フォーエバー』のときは技術が進んでいたんです。マイケル・キートンが初めて着用したスーツを見ると、とても大きいことに気づくと思います。あの頃はそれが精一杯でした。しかし時の経過とともに技術が発展して、ゴムをつかって複雑なことができるようになりました。そこで私は、解剖学的に正しく、ギリシャ彫刻や医療の教科書に載っているようなスーツを作ろうと言いました。これを受けて、造形師のホセ・フェルナンデスが乳首をつけてくれたのです。あれをみたとき、自分はイケてる、と思いました」

 技術の進歩でやれることが増えると、どうしても色々チャレンジしたくなるのが人の性。でも、ある程度技術が成熟すると、「できること」をひけらかすより、「配慮すること」が求められてくるのでしょうね。

■中川真知子
ライター。1981年生まれ。サンタモニカカレッジ映画学部卒業。好きなジャンルはホラー映画。尊敬する人はアーノルド・シュワルツェネッガー。GIZMODO JAPANで主に映画インタビューを担当。Twitter

〈Source〉
https://www.polygon.com/2020/2/24/21151297/marvel-spider-man-ps4-insomniac-peter-parker-undies-suit-nipples-design-edward-norton-hulk
https://www.esquire.com/entertainment/movies/news/a55640/why-did-batman-suit-have-nipples/

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