海外と日本でアニメの“制作方法”はどう違う? Netflixオリジナル作品『アニメ世界への扉』から分析
海外と日本のアニメの作り方
筆者はアメリカで映画学を学んだのち、日本のアニメスタジオと海外のVFXスタジオでプロダクションコーディネーターを経験しました。ふたつは似て全く非なるもので、日本の感覚で海外のそれを語ることはできません。
大きく分けると、日本は「好きが高じてプロになった集団」で、海外は「金も好きなプロ集団」と言えるかもしれません。両者は予算とスケジュールに関する意識が全く異なり、結果的にクオリティと細部に差が出ていると感じています。
日本の場合「コマ送りで絵をチェックするほど熱狂的なファンがいる」ことを前提に、1ピクセル単位での修正が発生することが珍しくありません。また、80年代、90年代の日本のセル画アニメは、その線一本一本、一筆一筆にアニメーターの命が吹き込まれているかのような熱量を感じることができます。
反対に、予算にシビアでスタッフの権利が組合でしっかりと保証されている海外の場合は、残業した分は支払わなければいけないので、こだわりを優先して不必要な作業を発生させることを良しとしません。そのため、ミリ単位の修正が発生することはごく稀です(少なくとも私は見たことがありません)。大きな会社になればなるほど、仕事量も徹底管理されています。世の中に出すものである限り、クオリティは世界水準で高いものが多い反面、日本のような「予想を遥かに上回る熱量に圧倒される」作品に出会うことはあまり無いかもしれません。ただ、それは決して悪いことではなく、物づくりをビジネスとして成り立たせる上ではベストだと思っています。
『アニメ世界への扉』はきっかけとして
このドキュメンタリーは、知りたい答えを導き出してくれる作品ではありません。しかし、見た人に「アニメとは?」という疑問を考えさせるきっかけにはなるはずです。紹介されている作品は全てNetflixで配信されているので、制作側の気持ちを知った上で視聴すれば、見方も変わってくると思います。そして、身近な存在でありつつも、非常に奥深い日本のアニメの魅力に圧倒されることでしょう。さて、あなたも一緒にアニメへの扉を開いてみませんか。
■中川真知子
ライター。1981年生まれ。サンタモニカカレッジ映画学部卒業。好きなジャンルはホラー映画。尊敬する人はアーノルド・シュワルツェネッガー。GIZMODO JAPANで主に映画インタビューを担当。Twitter
Netflixオリジナル作品「アニメ世界への扉」独占配信中