映画『AI崩壊』は非現実的な物語ではないーー“医療AI”の可能性と問題点を考える

医療AIを映画『AI崩壊』から考える

 入江悠監督による、貴重なオリジナル企画によるサスペンス大作映画『AI崩壊』がヒットしている。

 2030年、医療AIが普及した近未来の日本を舞台に、AIが暴走し命の選別を始めることで起こるパニックを描いた作品で、大沢たかお演じる、医療AI「のぞみ」の開発者が嫌疑をかけられながらも、警察の追跡を交わしながら真相に迫ってゆく。入江監督自ら人工知能学会に入会しリサーチを重ね、AI監修に日本ディープラーニング協会理事長の松尾豊氏を迎え、リアリティある作品を作り上げている。

 『ターミネーター』シリーズなど、「AIの脅威」を描いた作品はいくつも存在するが、本作がユニークなのは、殺人ロボットのような目に見える脅威として描かず、医療AIが国民のインフラとして定着した時代に、目に見えない恐怖としてAIの脅威を描いた点だ。AIを恐れる心境はさながら、ウイルスや放射能への恐れともどこか通底しているように感じられる。AIの脅威をパンデミック的に描いているのだ。

 そして、日本の近未来を舞台にしたSFで、医療AIに着目した点が出色だ。労働人口減少、超高齢化社会がさらに進んでいく2020年代の日本にとって、医療AIの促進は、安定した社会を築くために必須ともいえるものだからだ。

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