にじさんじの両国イベントに感じた、強烈な個性の集合体が繰り広げる“思い出の物語”

にじさんじ両国イベントレポ

 ちなみに、この日は出演しなかった多くのライバーも、会場の様子をネット試聴しながら配信やSNSを通してリスナーと盛り上がっていた。そうして会場の外側でも、様々なメンバーがライブを盛り上げる様子は、今や約90名が所属する大所帯のにじさんじならではだ。

 以降は、この日ステージで初の3Dモデルのお披露目を行なうメンバーが続々登場。まずは夢月ロアが3Dお披露目もかねてソロで「恋愛裁判」を歌い、同じく3D初お披露目の鈴原るると2人で「secret base~君がくれたもの~」を披露。夜空と星をちりばめたステージで、それぞれに異なるキュートさを持った2人の歌声が重なるしっとりとしたパフォーマンスで会場の雰囲気が変わる。その後、鈴原るるが初の歌配信で歌ったアニメ映画『時をかける少女』の主題歌「ガーネット」をソロ歌唱。こうした序盤を観ても、ロック、ボカロ曲、アニソン、バラードなど音楽性は多岐にわたっていて、選曲も各ライバーの個性を伝えてくれる。

 中でも圧倒的な歌の力で観客の度肝を抜いたのが、同じくこの日が初3Dだった戌亥とこの「小さきもの」。過去の「歌ってみた」動画や歌配信で抜群の歌唱力を見せていた彼女だが、この日もアカペラで歌いはじめた瞬間に、会場全体が息を呑むようにその歌に引き込まれていく。伸びやかで力強い歌声そのものの魅力に加え、大会場でのパフォーマンスは空気の震えまで伝わるようで、観客が言葉をなくして聴き入る様子は序盤のハイライトだった。

 その後は、以前から彼女と「オフコラボがしたい」と言ってはやんわりと断られていた御伽原江良が、同じく初の3Dモデルで登場して「とこちゃーん!」と近づくも、戌亥とこがそれをスルーして観客から笑いが起きる。続いて2人で披露したTVアニメ『多田くんは恋をしない』のOPテーマ「オトモダチフィルム」では、そんな2人が向き合って原曲のMVの振り付けを楽しそうにダンス。続いて御伽原江良がソロで「おねがいダーリン」を披露するも、途中で機材トラブルが発生。ここでは暗転したステージに観客から自然発生的に「ギーバーラ! ギーバーラ!!」と愛称のコールが生まれてトラブル対処中の時間が繋がれる。リスナーとともにハプニングも力に変えてきた、にじさんじらしさを感じる瞬間だった。

 中盤には、静凛が「千本桜」を、鈴鹿詩子がTVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の劇中歌「God knows…」を、そして歌唱力に定評があるにじさんじの歌姫のひとり、森中花咲が昨年「歌ってみた」動画を投稿していた「バレリーコ」をそれぞれソロでパフォーマンス。その後森中花咲、鈴鹿詩子、えるの3人で「気まぐれメルシィ」を披露し、続いてえるがKLab Sound Teamの林裕が手掛けたオリジナル曲「MESMERIZER」で、ワブルベースなども加えたEDMで会場を盛り上げる。

 満を持して登場したジョー・力一は、初期のネタ動画でアカペラで歌って話題となった布施明の「君は薔薇より美しい」を楽曲に乗せて披露。サビのキメ部分〈変わったああああ!!!!〉を伸びやかな低音で歌うと、スクリーンに花びらが舞い会場が一面ジョー・力一ワールドに。初期の動画を観ていた人なら、感動と笑いが同時に押し寄せてきたはずだ。

 続いて「だいじょうぶです」という囁きが聞こえ、にじさんじ躍進の立役者、委員長こと月ノ美兎がTVアニメ『バーチャルさんはみている』のOPテーマで、自身も参加したユニット=バーチャルリアルの「あいがたりない (feat. 中田ヤスタカ)」をソロで披露。その後ジョー・力一、月ノ美兎、樋口楓、える、鈴原るるがコラボして『懺・さよなら絶望先生』のOPテーマ「林檎もぎれビーム!」をカバーし、大槻ケンヂ役のジョー・力一と絶望少女達のパートを担当する他の4人が、全身を使った激しいダンスや絶唱でぐんぐん盛り上げていく。

 その後、月ノ美兎、樋口楓、ジョー・力一が残って行なわれたMCでは、月ノ美兎、樋口楓、そして森中花咲と御伽原江良のユニット=petit fleurs(プチ フルール) がそれぞれソニー・ミュージックレーベルズ、Lantis(バンダイナムコアーツ)、NBCユニバーサル・エンターテイメントからのメジャーデビューを発表。そのまま樋口楓がLantisから来年リリースされる新曲「MARBLE」を初披露し、リアルライブ/VRライブともににじさんじの音楽活動を引っ張ってきた彼女らしい、ロック曲に合う凛とした歌声と観客を巧みに煽るステージングで観客を魅了した。

 本編のラストは、1期生として最初期からにじさんじを引っ張ってきた月ノ美兎、樋口楓、静凛の“JK組”のオリジナル曲「dream triangle」。温かなエレクトロポップに乗せて、これまでの歩みや3人の絆を歌うこの曲は、ファンメイドの楽曲を公式で取り入れてきたにじさんじの楽曲の中でも屈指の名曲だ。

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