にじさんじの両国イベントに感じた、強烈な個性の集合体が繰り広げる“思い出の物語”

にじさんじ両国イベントレポ

 前回の『にじさんじ Music Festival 〜Powered by DMM music〜』は、アンコールなしで終了したものの、ここで客電がつかないことに気づいた観客から、自然発生的にアンコールが生まれ、メンバーがふたたびステージに登場。そして最後に披露されたのは、出演者全員によるにじさんじ1周年記念曲「Virtual to LIVE」。kz(livetune)が提供した楽曲で、ライバーとして今を生きるメンバーとリスナーとのこれまで/これからへの気持ちを歌うような歌詞が印象的だ。

 それを2018年デビューの1期生から2019年デビュー組まで、にじさんじの歴史をつくってきた様々なメンバーが歌う風景は、まさにこの日のハイライトに相応しいものだった。中でも印象的だったのは、〈いつまででも/いつからでも/くだらない話で笑おう/君の近く/もっと近くに行くから〉という歌詞が印象的な、終盤の展開。その直後にお馴染みの時計の秒針が進む音が聞こえ、月ノ美兎が原曲にはない「いきましょう」という言葉を加えて最後のサビに向かい、ラストはkzが月ノ美兎のイメージソング「moon!!」のメロディから引用して加えたコーラスを、会場一体となって合唱してライブを終えた。

 にじさんじの物語とは、ライブ配信という何が起こるか分からない環境の中で、ライバーとリスナーとがともに手を取り合いながら、時に失敗したり、時に笑ったりして生みだす様々な思い出の物語でもある。メンバーがひとつの会場に集い、歌とパフォーマンスで観客と時間を共有したこの日のライブは、普段は様々な配信をしているライバーが華やかなステージに立った晴れ舞台であると同時に、最もリスナーと近い距離で繰り広げられる、普段の配信の延長線上でもあるような雰囲気だった。

 終演後には、オリジナルフルアルバム『SMASH The PAINT!!』のリリース決定や、新ユニット・Rain DropsのVirgin Music(ユニバーサルミュージック)からのメジャーデビュー、全国5都市で開催されるZeppツアーの予定も発表。2020年は強烈な個性の集合体のようなにじさんじの魅力が、ますます日本各地に広がっていくことになりそうだ。

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

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