いま中国で話題の“選択式”ミステリー番組「頭号嫌疑人」の魅力とは?

右画面には「なぜ事件現場に現れたのか?」

 もちろん個性的な登場人物の演技も見逃せない。登場人物それぞれが、取調室という画面空間を通じて、視聴者に状況証拠となるような供述をする。視聴者にはそれぞれの登場人物から豊富な情報が提供されるのだが、一人一人がなかなか手ごわく、どこに手がかりがあり、どう関係していくのか、情報が多ければ多いほど、情報の信憑性を判断することが必要になる。

 視聴者は神経を集中させて一つ一つを検証していきながら、ストーリーを見ていかなくてはならず、そういう意味では娯楽感よりも緊張感のほうが増していると言える。この絶妙な緊張感もまた、視聴者をくぎ付けにする理由の一つとなっている。

 特に、スマートフォンはどこでも簡単に見ることができるので、その機能上、”ながら見“する人も多くなりがちだが、この視聴者参加型の番組は、ただ見ているだけなのとちがい、自分自身が主人公となる擬似体験ができる。この擬似体験こそが、双方向のコミュニケーションとなり、視聴者は、あたかも自分が真相を解明しないといけないという不思議な義務感に駆られ、その世界にどっぷりつかっていく。そして、この「頭号嫌疑人」の世界にはまった、”にわか“探偵が多く誕生し、ネットやSNSを大いに盛り上げている。

インタラクティブ•サイトのトップページ

 簡単にいえば、パソコンやスマートフォンを使い、SNSを駆使したシェア方法や綿密なストーリーと解明困難な真相が視聴者の好奇心をくすぐり、この番組の人気を支えているのだ。

視聴者による犯人予想ランキング

 さらに言えば、体験方法にも工夫がある。ドラマは「劇情版」と「真相版」とがあり、視聴者はまず「劇情版」エピソードを一通り見て、手がかりや登場人物についての情報を模索する。

 そしてあらゆる状況を分析していき、最終的には、指定のインタラクティブ•サイトで「案件報告」、つまり自分自身が推理し、行きついた事件の調書を提出する。そして視聴者どうし、あれこれと自分が特定した「犯人」について推理の”応戦“ができるのも魅力の一つになっている。

 ストーリーの途中で選択していく従来のインタラクティブ的な手法と異なり、ストーリーを最初から最後まで見ることができるので、ストーリーが途切れることなく、視聴者の印象に残る。途中で切替えることで集中力がきれるというようなストレスもない。

インタラクティブ•サイトでの視聴者の探偵力ランキング

 「頭号嫌疑人」は、単なるインタラクティブ体験だけではなく、+αとして、参加者が自分の好奇心を満たし推理できること、観察力や判断力といったスキルを試せること、そして同じく犯人を特定した仲間と真相をシェアできること、真相を解明したあとの共感の連鎖……といった様々な付加価値がついている。

 こうしたインタラクティブ的手法は、今後、映画、テレビ、ネットそして動画メディアにおける作品づくりの新たな要素としてますます存在感を増していくものと思われる。

参考:
http://www.sosoxian.com/news/2019/0225/12855.html
https://www.mgtv.com/act/2018/thxyr/

■フライメディア
株式会社フライメディアは映像制作を中心に、海外、主に中国、台湾、香港のリサーチ、撮影コーディネーションサービスを提供中。現地情報を詳細に解説している。https://flymedia.co.jp/

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