MIDI、ついに初アップデートへ 38年ぶり新規格「MIDI 2.0」の機能性を解説

 MIDI Manufacturers Associationが、一般社団法人音楽電子事業協会(AMEI)と共同で、次世代のMIDI規格「MIDI 2.0」を発表した(参照)。

 MIDIとは、主に電子楽器の演奏データを転送するために使用されていた規格だ。ヤマハ、ローランド、コルグなど様々な電子機器と接続可能であるという互換性の高さもあり、楽曲制作などでも重宝されていた。38年ぶりのアップデートとなるMIDI 2.0は、既存のMIDIの互換性はそのままにデータの再現性などを向上させているとのこと。今回は、MIDIの画期性とアップデートの注目点について、音楽制作機器に詳しいライター・ヤマダユウス型氏に話を聞いた。

「“MIDI”という言葉は、ある人にとっては音楽制作において当たり前の用語だったり、ある人にとっては懐かしき着メロの思い出だったり、またある人にとっては拡張子の印象だったり、実に様々な思い出がある言葉だと思います。電子楽器の普及により誕生したMIDIですが、その利用は音楽関係以外にも、舞台照明の制御や『Web MIDI API』によるブラウザ間とのMIDI通信など多岐に及びます。今では多くの電子楽器がMIDIという共通の窓口を持っていますが、もしMIDI規格がなければ、各社独自の規格や接続のための変換器が必要になっていたでしょう。

 ただ、MIDIは40年以上前の規格です。デジタルデバイスがこれだけ増えてきて、これからも増えてくることが想定されるなかで、そろそろ新規格を出したほうがいいと考えたのではないでしょうか」

 同氏はMIDI 2.0の機能性についてこのように解説した。

「MIDI2.0より追加される新機能の一つ『MPE(MIDI Polyphonic Expression)』は、ポリフォニックな和音のうちの1つにピッチベンドをかけるといったコントロールを可能にします。例えばギターのユニゾンチョーキングのような表現が、DAWでも簡単にできるようになるのではないでしょうか。他にも、テクニックで補っていたDAWでの音楽表現のいくつかが、MIDI 2.0にアップデートすることで、よりスマートに表現できるようになるかもしれません。また、アップデートで双方向通信になるらしいので、端子の省スペース化にも期待したいですね」

 DAWの可能性を広げる役割も持つというMIDI 2.0。なかなかアップデートされなかったこともあり、最新機器との比較により「懐かしい規格」と捉えられることもあったMIDIだが、今回のアップデートによって再び注目を集めることは間違いないだろう。

(文=北村奈都樹)

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