ユーザーと会話し、最適な曲を勧めてくれるAI「音楽ともだち」の実力は? カンファレンスに潜入してきた

会話する音楽AIの実力は?

 株式会社ソケッツが12月12日、『Japan MUSIC AI conference 2018 音楽×AI』を行なった。

 同社は2000年6月に設立された「人の気持ちをつなぐ」という事業目的を持ったデータベースサービス会社。現在は独自のデータベースならびにAIテクノロジーを活用し音楽、映像、書籍をはじめとしたエンターテイメントに関する、各種メタデータの開発、検索、レコメンド、パーソナライズ、音楽分析、映像分析、サービス開発、調達支援、マーケティング、制作支援など、人間の感性に寄り添うエンターテイメントサービスにおける新たな価値創造に向けた取り組みを行なっている。今回のカンファレンスでは、ソケッツが独自の感性データベース、感情分析、ディープラーニングなどを用いた音楽に特化したAIの実践的なプロダクトサービスの発表もあわせて実施された。

 登壇したのは、同社代表の浦部浩司氏。彼は「現状サービスがどれだけ便利になれど『人間が選択する』という行為は変わっていない。だから、音楽において人間を選択から解放することをしたい」と前置きしたうえで、「会社が18年間こだわってきた中の一つに、ミュージシャンでもあるスタッフが、歌詞や曲の印象、使っている楽器やテイストなどを1曲2000項目以上打ち込むということをしてきて、それが大きな音楽イディオムになっている」と明かし、これらのデータを活かしたオリジナルMUSIC AIーーつまりオリジナルメタデータ、感情分析、推薦エンジン&会話エンジン、ディープラーニング、自然言語解析ができるものを開発したと語った。

 その後登場したのは、音楽のことしかわからない「音楽ともだち」というAIのモックアップ。浦部氏いわく、「愚痴を聞いてくれたり励ましてくれたり隣にいてくれるのが友達だが、それを音楽面でやってくれるAI」であり、天気や曜日、時間といった属性を読み込み、センシングしてキーワードを拡張、音楽的なイディオムを処理して、最終的には選曲エンジンと会話エンジンにつなげていくというもの。ソケッツはそのなかで、ユーザーが話す言葉の意図を音楽的な解釈に変えて、選曲を働きかけるという処理を担当しているといい、専門APIという形であらゆるデバイスに導入されることを目指していると明かされた。

 実際のモック操作では、浦部氏が「音声認識はフリーソフトなのでまだ精度が甘い」と断りを入れながら「40代男性 邦楽好き」という仮想ユーザーを使ったテストを開始。「プレゼンがうまくいくように励まして」と語りかけ、「洋楽にして」といえばQUEENの「We are the champion」が流れたり、「いい感じの曲をかけて」と言えば、この日の雨模様を考慮して「雨音がしっとりと聴こえるなか、ゆったりした曲を聴きましょう」と天気を考慮した曲に変わったり、「疲れてるんだ」と言うとスロウテンポな曲が掛かったりと、ニュアンスで話しかけても、それに応じた曲を返してくれる。シチュエーションについても、「週末温泉旅行にいくんだ」と言えば「伸びやかな音楽で心をストレッチ」と、緩いテンポの曲になり、「彼女と行くんだ」と言えばラブソングに変わるし、「今日の夜はお寿司」と伝えると、和のテイストが入った曲になる。細かい楽器を指定することも可能で「スラップベースが聴きたい」「高速ギターリフが良い」と言えば、まさにそこへぴったりの曲が流れてくる。

 モックは音声ソフトをフリーのものにしていることで、少しリアリティがないように感じたが、実装されている機能はとことんユーザーに寄り添った便利なもの。他のサービスと組み合わせることで、もっと劇的な進化を遂げるような気がするので、この先に期待したいところだ。

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