ユーザーと会話し、最適な曲を勧めてくれるAI「音楽ともだち」の実力は? カンファレンスに潜入してきた

会話する音楽AIの実力は?

 中盤では、同じくソケッツの市野和代氏、石川鉄男氏が登壇し、「アーティスト・楽曲分析ソフトウェア」についてプレゼンテーション。同社のデータベース(MSDB)を活用したアーティスト・楽曲分析の機能が紹介された。「トレンド分析」「効果測定」「ベンチマークアーティスト分析」「印象調査」「ファン分析」など、細かな分析ポイントがいくつも作られており、楽曲の分析についてもサブスクリプションサービスやオリコンチャート、カラオケなどのランキングがまとめて知れたり、オフィシャルで出していたプレスリリースをインポートすると、MVを公開したタイミング、ライブについての動きなど、より細かいタイミングで数字が変動していることがわかった。

 ほかにも、ヒット曲(JAPANHOT100)と分析対象曲の共通項や独自性、差分を知ることができる機能など、音楽面からの分析も徹底していたところに面白さを感じた。石川氏は「人の気持ち、作品の気持ちを理解して未来を予測、新たな創作スタイルを提案し、クリエイターの発掘につなげる。未来のA&R像をささえるものでもある」と、このモデルのさらなる発展を予告してみせた。

 イベント後半には、浦部氏と石川氏に加え、TBSラジオ「AI時代のラジオ」パーソナリティであるFROGMAN氏、ライターの榎本幹朗氏を迎えた4人でトークセッションが行われた。榎本が石川のプレゼンについて「どうやったらヒットするか、人工知能からヒントをもらえるという形は、2~3年後に適用可能になるのではないか。ビジュアルでわかるようになっていくと、もっと楽しいと思う」と振り返れば、FROGMANは「海外ではAIロボットが株の売買を行なっているというものもありますから。これがアニメとかにも応用されていくと、エンタメ界でより存在感が大きくなっていく可能性がある」と発言。石川はこれに対し、「ムーブメントに乗るのはいくらでもできるけど、終わる瞬間、次の流れを作った人が一つの時代を作れている。そういうタイミングをクリエイターにうまく伝えられれば」と、分析を活用する利点は流れに乗ることではなく、次の周期を把握するためにあることを述べた。

 続けて、浦部氏が発表した「音楽ともだち」について、榎本が「スマートスピーカーはまだ『音楽をかけて』という程度の段階だったときに『飽きちゃうんじゃないか』と心配になったことがある。ちゃんとコミュニケーションが発生しないとスケールは難しいと思いますが、どれくらい夢に近づいたと感じますか?」と質問。浦部はこれに対し「目標の2割くらいです。目指しているのは生活の中に音楽がある、音楽とファッション・イベント・旅行などが繋がっていることなので」と、目標にはまだ遠いが、着実に進んでいることを明かした。

 これを受けて、浦部はFROGMANに「エンタメとAIはどういう位置付けにあると考えますか?」と質問すると、FROGMANは「作り手と受け手に分けて考えないといけないが。受け手はAIのことをそこまで意識せずに過ごしていくが、ふとした時に便利であると気づくと思う。作り手としてはあと4~5年が勝負どころ。すでにAdobeは写真レタッチ作業について、専門知識が必要なものからAIでたちどころに消せるようになるところまで進化したし、AfterEfectでは人やものを動画の上から消せるようになった。音楽マーケティングの世界でも、サポート的なAIはあと5年で出てくるかもしれない」と答え、これに対して浦部は「僕らはあと2年でそれをやろうとしている」と意欲的な姿勢をみせ、質疑応答などを経て、同イベントは終了した。

(文=編集部)

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