歌広場淳 連載第三回:祝『ストV』アーケード版! いまだから語りたい、懐かしきゲームセンターの思い出

歌広場連載第三回:懐かしきゲーセンの思い出

 各地のゲーセン通いを再燃させた『バーチャ』

 さて、千葉に来てからは、一度ゲームから離れることに。というのは、KOFのボタン配置が、関東と関西では違っていて、慣れるまでに時間もお金もかかりそうだと。しかし、そんななかで出会ったのが、『ストリートファイターIII  サードストライク』(3rd)でした。スーパーファミコンで『ストII』はプレイしていたから技も出せるし、ボタン配置もわかりやすかった。これがめちゃくちゃ面白くてーー。僕は当時地味な見た目だったから、ヤンキーだらけのゲーセンでは浮きまくり。でも、上手くなりたくて頑なにプレイし続けました。千葉はギルティ(ギルティギア)王国だけれど、構うものかと(笑)。ただ、あまり遠征には出ず、村勇者という感じでしたね。

 僕がいろんなゲーセンに行こうと思うようになったのは、それからしばらくしてリリースされた『バーチャファイター』がきっかけ。初めて「VFネット」というネットワークに対応したゲームで、それを見ると、強いプレイヤーがどこにいるのかわかる。同じ千葉にも、何万勝/何万敗、みたいな廃人級のプレイヤーがいたんです。いまでは当たり前のことですが、そうやって猛者が可視化されると対戦してみたいと思うのが、格ゲーマーというもの。各地のゲーセンを回りながら、段位でいうと五段までいきました。これ、まあまあすごいんですよ。

 バーチャは死体蹴り(勝敗が決した後、倒れた相手に攻撃を加えること。アンチマナーとされることも多い)もえぐいから、ヤンキーたちのリアルファイトもけっこう見ましたね(笑)。僕も段位を落とされては心を折られそうになり、しかし「本当に怖いのは画面上のキャラクターがバックダッシュすることじゃなくて、俺自身が下がってしまうことだ!」と、バイト代をつぎ込み続けました。そんななかで、これまではまったく交流のなかった有名プレイヤーとの出会いもあり、地元のゲーセンで組手イベントをしていた“バーチャ神”=ちび太さんに付いて回ったり。青春時代の思い出です。そうだ、ちび太さんには当時1000円を借りたままで、いつか返さないと(笑)。

 『ストV』がゲーセンに入ることの意味は、とても大きい

 そんな思い出のゲーセンに、『ストリートファイター』の最新作が帰ってくる……最高だ。何が最高かって、人の目を意識してプレイしたり、トッププレイヤーを間近で見るのって、本当に楽しい。みんなで同じ場所に集まって、1試合ごとにワーワー騒いで。もちろん、マナーやモラルは守りつつですけど、またゲーセンならではの楽しみ方ができるのは、本当にうれしい。僕は常々、「格闘ゲームはコミュニケーションツールだ」と言っていますが、ゲーセンはまさに、ダイレクトなコミュニケーションの場になり得る。ネット対戦の時の顔と、ゲーセンでの顔の違いを見るのも楽しみだし、「こんなクソみたいなプレイをするやつ、どんな顔だ!」って、その場でわかるわけですから(笑)。恥ずかしいプレイはできない、という心地いいプレッシャーがあるのもいいですね。

 僕もさっそくロケテ(ロケーションテスト。稼働前のゲームを限定的に公開し、テストを行う)に参加。会場になったゲーセンに行くと、もうすごい行列で、それだけで胸が熱くなりました。みんな家でもプレイできるのに、やっぱりゲーセンで対戦したいんだ、って。有名プレイヤーも多く来ていて、連勝制限でストVがプレイできない時間、ガチくんが前作の『ウルⅣ』(ウルトラストリートファイターⅣ )をやっていたり。プロやそれに近い選手も、競技として打ち込むだけじゃなく、他のゲームで遊んだり、閉店後に食事に行ったり、話をしたり、やっぱりゲーセンは楽しい場所なんです。

 こうなると、僕も俄然、またゲーセンに通いたくなってくる。eスポーツの番組にもよく出させてもらって、こうやってアーケードカルチャーについても話しているのに、「歌広場、ゲーセンに来ないじゃん」なんて言われてしまっては、説得力も何もない。実際、いまも3rdをプレイしに行っています。

 ゲームセンターの風景も、昔とは様変わりしました。一番思うのは、いまはみんな、ケータイを見ているなって。それは決して悪い意味ではなくて、現地でのコミュニケーションよりも、ネットやSNSを通じたコミュニケーションが楽しい、ということ。いまは手元でいろんなものが楽しめるから、そのなかで勝ち抜かなければいけないのは、ゲーセンもそうだし、本屋だって、カラオケだって、大変だと思う。

 僕もスマホ依存症ですけど、ケータイを見るときって、下を向くじゃないですか。でも、かつてのゲーセンや、いまや伝説の格ゲー大会『闘劇』などでは、みんな顔を上げて、ゲームの画面に集中していた。僕はその光景が好きなんです。だから、2つの意味で、みんなが「上を向いている」ゲーセンになってほしい。

 いずれにしても、日本のeスポーツシーンにおけるメインタイトルと言える、『ストリートファイターV』がゲーセンに入ることの意味は、とても大きいと思います。そのことでシーンが活性化して、新たなスタープレイヤーが続々と出てくるといいですね。僕も負けないように、時間の許す限り通うぞ!

(取材・構成=橋川良寛)

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