VRがもたらした新時代の恐怖! 『ダムド・タワー』がいざなう異空間を体験してきた

VRがもたらした新時代の恐怖を体験

ホスピタルサイト「高天原病院」の受付。ここから全ての恐怖が始まった

 「ダムド・タワー」の世界に入ると、案内人である看護師が登場する。VR内では、主にこの看護師の女性の声と、姿はないが低く太い男性の声が、案内してくれることになる。映像の中の人物と世界は決して“リアル”ではなく、CGを全面に押し出した作り物の世界だ。しかし、だからこそ、自分自身がまったく別世界の中に入ってしまったような違和感が冒頭から訪れる。案内人である看護師が行先を説明するのだが、当然、その順路の途中には、別の人物が映ってくる。頭を抱えながら辛そうにしている人や、包帯でぐるぐる巻きにされ横になっている人、それらの人物たちが大勢いる病室をくぐり抜け進んでいかなければならない。割と序盤の段階で、私は立ち止まってしまった。

「無理だー」と怖さを紛らせようと笑いながら立ち往生

 同VRには、手渡されたライトを5秒間挙げることで、「ギブアップ」ができるルールがある。ミイラ状態の患者がうにゃうにゃと動き、どこからか悲鳴のようなものが聞こえてくる病室の入り口で、心底進むのを躊躇した。突拍子もなく脅かされるという仕掛けよりも、襲いかかってくるのが分かっていて、突き進まなければいけない。ゲームでコントローラーを通してキャラクターを操作するのとは違い、自らが歩みを進めなければ物語も動かないというジレンマ。手に持っていたライトで病室内をくぐり抜ける最短経路を照らしながら、勇気を振り絞り、なんとか通りきった。

こんな道歩けますか……? 置いていかないで

 案内人である女性の声と、低く太い男性の声があると述べたが、男性の声の案内は、VR内を進んでいく上で励ましにも聞こえてくる。VR内では、同じ位置に30秒以上立ち続けても強制終了。こちらが怯えていると「早く行け」などと声を掛けてくれた。恐怖を煽ってくる発言もあるが、案内人である女性はどんどん体験者を置いて先に行ってしまうので、姿は見えない男性がずっと後ろについてくれているような感覚にもなり、頼りに思ってみるのもいいかもしれない。

 その後も突き進んでいくことに躊躇される場面はいくつも遭遇したが、なかでも「隠れる」という行動が新鮮だった。狭い道で前方からゾンビがやってくるという場面で、「右手にあるロッカーに隠れろ」という指示が下される。その時に隠れずにいたらどんな怖い目にあったのか気になりつつも(絶対にそんなことはしないが)、現実の四角の部屋の中にはあるはずのないロッカーの中に咄嗟に隠れるという行動をとる。ロッカーの扉の隙間からゾンビが歩いてくる様子が見え、できるだけ扉から離れ、息をひそめる。直接VR内には反映されないであろう行動を自然にとってしまっている自分の行動に、体験後は驚きを隠せなかった。

(ロッカーの中)えっ、なんでここの前で止まるんですか?
ロッカーの中で動き回ったりと作り手が予期しない行動をとる人も多いよう
!? どうなる…………?

 最後にはある選択することで、結末が別れる仕組みになっており、仙頭×高橋タッグが手がけた要素の一つである映画的な側面も感じた。完全に作り込まれたリアルな情景ではなく、登場する人物たちのビジュアルを含め、現実ではないような未完成の世界に入るからこそ、圧倒的異物感を覚え、自分が現実から切り離されたような感覚に陥る。また、体験者としては、四角い部屋にいたはずが、VR内では、左に曲がったり、エレベーターに乗ったりと、本当に病院内を歩いているような、立体的な体感ができることに新しさを感じた。

上がったり、落ちたり? 空間の移動も体感できる

 今回、10分間のアトラクションとしてはとてつもなく長く感じるVR体験だったが、これ以上に長くなってしまったら、ギブアップができなくなってしまったら……トラウマとなるほどの人もいるのではないか、と思うほどの恐怖体験であった。12月24日までの期間中、ぜひ足を運んで、新しい映像表現を体感しつつ、新時代のホラーアトラクションとして存分に楽しんでもらいたい。

(取材・文=大和田茉椰)

■イベント情報
VRDIVE「ダムド・タワー ‐ホスピタル サイト-」
2018年10月20日(土)~12月24日(月・休)会期中無休
開催時間:平日13:00~22:00、土日祝10:00~22:00(入場は閉館の30分前)
会場:名古屋テレビ塔2F・3F(〒460-0003 名古屋市中区錦3丁目6-15先 「栄」駅3番もしくは4番出口を上がって徒歩3分、「久屋大通」駅4B出口を上がってすぐ)
料金:1,500円(当日券のみ)
   展望セット券2,000円
※12歳以下利用不可
※展望セット券の利用は17時まで
公式サイト:www.damnedtower.com

企画・プロデュース・総合演出:仙頭武則
監修:高橋洋

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