松井珠理奈不在のAKB48「センチメンタルトレイン」MVに見る、CG使いの巧さ

 また、MVの最初にある文面には、本作品は未完成であり、松井珠理奈が復帰後に改めて撮影をおこない、完成版を作成する企画があることを予告。センター不在という状況を逆手にとった、実に上手いプロモーションである。あえて、フルCGではなく、絵コンテを使用した演出も素晴らしいアイデアだ。CGは虚構であるが、最新のCGではリアルに近すぎると判断したのだろう。しかも、人気漫画家に絵コンテを依頼するという贅沢さ。得てして、フィクションは観ている側の想像や空想が入り込みやすいものだ。松井珠理奈が一日も早く復活して欲しいと願うファンの気持ちを盛り上げている。

 AKB48「センチメンタルトレイン」のMVは、CGが一般化して珍しくなくなった今だからこそ輝きを見せてくれる作品だ。MVの原点は作家のアイデアである。あくまでも、CGはアイデアを形にするためのひとつの手法。作家には「いかにCGを使うか」のセンスが問われている。AKB48「センチメンタルトレイン」は、最新の技術を用いなくても、アイデア次第でCGの可能性はいくらでも広がるということを示した好例と言えそうだ。

■吉川敦
フリーライター。音楽と言葉が大好物。憧れの人物はアインシュタインとエルキュール・ポアロとアンディ・ウォーホル。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる