松井珠理奈不在のAKB48「センチメンタルトレイン」MVに見る、CG使いの巧さ
昨今のMV制作において、CG(コンピュータグラフィックス)の技術はとても重要である。楽曲のテンポやタイミングに合わせたエフェクトなどはもちろん、リアルに近い映像など、その技術は年々進歩している。この1年で発表された日本のアーティストに限定したとしても、CGを取り入れたMVはかなりの作品数を挙げることができるだろう。
例えば、フルCG合成で制作された中島美嘉の「KISS OF DEATH(Produced by HYDE)」、CGで作成したオリジナルキャラクターが全編に渡って木村カエラ本人とコラボする「HOLIDAYS」、CGをあえてキッチュな感じに見せるヤバイTシャツ屋さんの「鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック」などなど。数多くの優れたMVが発表されてきた。
一方で、CG利用のハードルが下がり、単にCGを使うだけではインパクトを与えにくくなっている。「いかにCGを使うか」という部分で、作家のクリエイティビティが問われている時代になったと言えるのかもしれない。その意味で、決して最先端のCG技術を使うわけでもなく、話題となった作品がある。そのMVは、AKB48の「センチメンタルトレイン」だ。
「センチメンタルトレイン」は、9月19日にリリースされるAKB48の53作目のシングル表題曲である。MVの監督は数多く48グループの作品を手がけてきた高橋栄樹。MVの最初で、センターをつとめる予定であったSKE48松井珠理奈が体調不良のため本作品に不参加であり、松井珠理奈が出演する部分は絵コンテやCGを使用したとの文面が挿入されている。
ストーリー仕立てのMVは約10分ほどの長さだ。附属女子高が併設された女子大を舞台にしている。ドラマパートのモチーフは、MV中にも登場する宮沢賢治の短編小説『風の又三郎』。夏の1ページを切り取ったような淡いファンタジーに仕上がっている。ドラマパートの絵コンテは、『どうにかなる日々』『放浪息子』『青い花』などの代表作がある漫画家の志村貴子が担当。不思議な転校生を絵コンテの松井珠理奈が演じている。歌唱やダンスシーンでは松井珠理奈が登場する部分をCGで演出している。